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「Victoria 3」開発日記#15――奴隷制

Vic3 開発日記

「Victoria 3」開発日記#15が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は奴隷制について。本体発売前の開発日記です。

前回:開発日記#14――政治運動


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開発日記

開発日記#15は、奴隷制について。

この奴隷たちは飢えないように最低限の商品を与えられ、その結果として時間経過で人口はわずかに増加するが、Popを構成する人々は全体的に悲惨な生活をしている。

  • 今回の話題である奴隷制(slavery)はかなり重いもので、ヴィクトリア朝時代における特に重要な政治的問題であると同時に、人間レベルでの計り知れない苦しみの物語でもある。そのため、奴隷制に関する仕組みの説明の前に、Victoria 3における奴隷制の表現の背後にある私たちの考え方を簡潔に説明したい。
  • 奴隷制は明らかに人類に対する恐ろしい犯罪であり、まさにそのために奴隷制に関連した設定や機能を持つゲームの多くはこれをゲームから排除するか、あまり「鼻につく」ことがない形に抽象化する(例えば、単純に安定度の低下と引き換えになんらかの経済的ボーナスを適用するなど)。Victoria 3では大きく2つの理由により、こうした選択がうまくいくとは考えていない。
  • 第一の理由は上で述べたように奴隷制が当時の重要な政治問題であり、いくつかの重要な紛争の主なきっかけとなったためだ。特にアメリカ南北戦争は奴隷制がゲームで重要な役割を果たしていなければ変に脈絡のないものとなる。
  • もうひとつの、そして最重要の理由は、私たちがPopシステムを通じて1836年以降の地球上のすべての人々を表現しようとしているためだ。私たちが奴隷化された人々を単純に歴史から消してしまったり、抽象的な補正に矮小化してしまうなら、私たちはなんと説明するのか?
  • そうではなく、私たちの目的は奴隷制の制度・システム・原因のみならず、奴隷制の下で生活し、奴隷制と戦った人々をできるだけ歴史に近い形で表現することだ。私たちはこれがこの話題を扱う上でもっとも敬意ある方法であり、Victoria 3が志向するゲームにもっとも忠実な方法だと確信している。
  • 雇用と資格に関する開発日記でも触れたように、奴隷はVictoria 2では「Popの種別(Pop Type)」、Victoria 3では「職業(Profession)」と呼ばれるが、他のPopとは機能が大きく異なる。まず、奴隷は賃金をもらって雇用されるわけではなく、働く場所を選ぶ自由もない。また、賃金や移動の自由がある職業に転職して奴隷であることを辞めることができるわけでもない。

キューバのタバコプランテーションでは通常の作業員(Laborer)を完全に奴隷に置き換えており、貴族の富を増大させている。

  • 奴隷を「雇用」している建造物は他の職業の雇用方法とは異なる方法で奴隷を雇用している。この仕組みの要点は、奴隷がいるステートにおいて、作業員や小農民(peasants)を雇用する特定の建造物(例えばプランテーション)がそうした職業の雇用枠を作業員/小農民か奴隷のいずれかで埋めることができるということだ。
  • 例えば、奴隷のいるステートに立地する綿花プランテーションに4000人の作業員を雇用する枠がある場合、このプランテーションはこの枠を2240人の奴隷と1760人の作業員でも、4000人の作業員と0人の奴隷でも、そのほか4000人を上限とするこの二者のあらゆる組み合わせで埋めることができる。建造物は一般的に経済的利益を得られるなら常に無料の作業員を雇用するより奴隷を得るほうを好む。
  • ではその経済的利益とはなにか? まず、ここで言う経済的利益とはほぼ建造物の所有者にとってのものであることを理解する必要がある。つまり上で述べた綿花プランテーションの例では一握りの裕福な貴族たちにとってのものだ。建造物は賃金を支払う代わりに法律や収益性などの要素に基づいて生活水準を決定し、その目標とする生活水準に「必要な」商品を購入する。この目標とする生活水準は必ずしも完全な飢餓状態ではないかもしれないが、必要最低限の生活以外のなにものでもない。
  • ここで言う商品購入のコストは単に建造物の支出に追加され、これは有償の労働力を雇用するよりも常に実質的に安い。建造物の所有者にとっては低コスト・高利益率・高配当ということになる。また、奴隷はいかなる形の税金も支払わないため、政府が彼らの生む利益を税収にしようとするとさまざまな形式の富に着目した税をかける必要があるが、こうした税は強力なエリート層には常にとても不人気だ。
  • しかし、奴隷制には貴族を豊かにする以外にも少しばかり経済的な強みがある。奴隷Popは他のPopよりも扶養家族に対する労働力の比率が高く、つまり10万人の奴隷は10万人の作業員よりも多くの建造物の労働力需要を満たすことができる。ここで重要なこととして、すべての建造物が奴隷を利用できるわけではないために工業化された製造業経済には利点がないが、農業/プランテーションに注力する経済を保とうとしていて、なおかつ労働力不足に悩む国家では、人的損失に耐えて抵抗を押し潰せるなら奴隷制の残酷な経済性が有利に働くかもしれない。
  • では、その抵抗とはなにか? 奴隷制が人間の不幸の上に成り立っていることを考えると、奴隷は当然自分の人生に満足せず、利用できるあらゆる手段で抵抗しようとする。システム的には奴隷が続々と急進化し、騒乱(turmoil)や奴隷の反乱による脅威が絶え間なく続く。奴隷社会に対するこうした脅威は通常なら十分な抑圧的措置によって回避できるが、恐怖と暴力は完全に安定した国家の基盤とはなり得ない。
  • 当然ながら、奴隷制への抵抗は奴隷自身からだけではなく奴隷廃止論者(Abolitionists)からもある。国内では奴隷廃止論者のイデオロギーを持つキャラクターや利益集団の形で、国外では自国に対抗できるほど強力でない奴隷制国家を妨害したり圧力をかけたりする奴隷廃止論者が主導する国家の形で抵抗が出る。もっとも有名な史実の例として、19世紀にイギリスが海軍を使って大西洋横断の奴隷貿易を阻止したことが挙げられる。

アメリカは遺された奴隷制がある状態でゲームを開始する。すぐに廃止しようとしても失敗することはないのでは?

  • 奴隷法(slavery laws)についてご紹介しよう。これは自国で誰を奴隷にしたり解放したりするか、どこで奴隷制を認めるかを規定するものだ。
  • 奴隷制廃止(Slavery Abolished):スタート時点で先進的な経済のほとんどの国家が採用している。この法律の下では奴隷制は完全に違法であり、この法律が成立するとその国家におけるすべての奴隷Popは直ちに解放され、作業員に転換する。この法律を持つ国家が奴隷のいる土地を獲得した場合、その奴隷も上記のように直ちに解放される。
  • 債務奴隷制(Debt Slavery):この法律は経済的に進んでいない国家や非集権的な国家の多くにみられる伝統的な借金による奴隷制一般を表現するものだ。債務奴隷制では富のレベルの低いPopが徐々に新たな奴隷を生み出していく(より貧しいPopではより高い比率で奴隷になる)。というのは、借金返済などの経済的理由で自分や他人を奴隷にすることによる。しかし、このシステムでは奴隷から生まれた子供は自由民なので、奴隷人口が奴隷自身によって増やされることはない。
  • 奴隷貿易(Slave Trade):この法律はブラジルやキューバなどで広く行われていた動産奴隷制を表現している。奴隷貿易では奴隷の子供は奴隷として生まれ、海外から新たな奴隷を輸入することもできる。要点は輸入国がその地域に関心(Interest)を持っているなら、奴隷制を行っている非集権的な国家から奴隷を輸入できるということだ(関心については今後述べる)。
  • 遺された奴隷制(Legacy Slavery):この法律は奴隷貿易を違法化したものの完全には廃止していない国家、特にアメリカ合衆国を表現するものだ。遺された奴隷制の下では国家は自由州(Free States)と奴隷州(Slave States)に分かれる。自由州では奴隷制は違法であり、すべての機能は奴隷制廃止の国家と同じだ。一方、奴隷州では海外から新たな奴隷を輸入できないという点を除いて奴隷貿易法が適用されている国家と同様に機能する。この法律の下では奴隷の生活水準が若干上がる傾向があるが、これは飢餓状態にある奴隷の人口は人口動態的に持続可能でないという単純な理由による。また、この法律はゲーム内のアメリカ南北戦争の仕組みにも重要な役割を果たしているが、これについては今後の開発日記で述べる。

アメリカの利益集団「敬虔な信者(the Devout)」の指導者ライマン・ビーチャー(Lyman Beecher)は熱心な奴隷制反対論者だ。

  • 奴隷法は他の法律と同じように機能するため、さまざまな手段で変更できる。奴隷貿易の国家はアメリカの例に倣って奴隷制を完全に廃止するための妥協案として遺された奴隷制に変更できるし、奴隷制を完全に廃止した国家はこれを復活させることもできる。しかし、史実で一旦廃止した後に動産奴隷制を再合法化した国家はないことを考えると、それは非常に困難なことだ(一度廃止した場合、一般的にはその国家にはそのような提案を好意的に受け止めない強固な反奴隷制の拠り所がある)。もちろん、奴隷制を廃止しようとすることに抵抗がないわけではない。奴隷制度から利益を得ている裕福な貴族たちは既得権益を守ろうとする。
  • この話題は今後、外交について述べるとき(そう遠い先のことではない!)にも少し触れることになるだろう。
  • (質疑応答より)農奴制(Serfdom)については2つの理由により労働法でモデル化されている。第一に、奴隷制と農奴制はどちらも持てるようになっているべきで、一方が他方の「進歩したもの」としてモデル化されるべきではない。アメリカが奴隷制をやめて農奴制を支持するのは理にかなっていない。また、「債務奴隷+農奴制」「奴隷貿易+農奴制」のような奴隷法があるようにはしたくなかった。その一方で、農奴制は労働法における進歩のひとつとなっている。一部の人々が土地に縛り付けられているのと同時に、鉱山や工場での搾取から労働者を守るための安全規則がある国家は想像しにくい。
  • 第二に、農奴制と奴隷制は私たちの定義ではまったく異なるものだ。農奴は土地に縛られた小農民で、その土地は貴族の所有だ。農奴は移動や収入の機会が限られており、主君のために懸命に働くことを強制される。これはシステム的には生活水準の低い小農民で、工業化社会で新たな地位を得るために容易に昇進できない者となる。一方、奴隷は直接的に法的財産と見なされる人々だ。彼らに移動の自由はまったくなく、経済的な自治もできず、所有者の気まぐれで必要なものが供給されている。また、奴隷は差別された人々でなければならないが、小農民はそうである必要はないという点でも異なる。システム上はどちらも表現され、似ているが根本的に異なる役割を果たす。
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質疑応答

Q:遺された奴隷制の国家では国内で奴隷の取引はされるの?

A:少なくとも最初の発売時には国内の奴隷取引システムは存在しないが、奴隷制の経済的利益と政治的支持を完全に解体しようとする際に考慮すべき重要な力学なので、ぜひとも追加したいと思っているものだ。ただ、法律や経済的な需要に応じて人々を世界中に移動させることで奴隷貿易が行われているのを表現することと、経済に着目したゲームにおいてこの話題を矮小化しない方法で実際に値札のついた人々を表現することはまったく別の難問だ。そのため、これを表現するうまい方法が見つかればそのようにするだろうが、今のところ私たちはモデル化できないことを受け入れている。

Q:奴隷制廃止国にとって他国の奴隷制を認めている法律が開戦事由になる? たとえばイギリスがある国家に侵攻して奴隷法を奴隷貿易から奴隷制廃止に変えるとか。

A:そのとおり。


来週はステートのシステムとそれに関連する機能であるステートの地域(State Regions)、分割されたステート(Split States)、騒乱(Turmoil)について。

次回:開発日記#16――ステート

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コメント

  1. 初代VICだとアメリカにいる黒人奴隷と、朝鮮やタイなんかにいる非文明国の奴隷が区別されてなかったけど、それがちゃんと区別されるようになるのか

  2. VIC3はtkb券発行しないのか・・・

  3. stellarisみたいに敢えて奴隷制を採用するメリットは薄そう。

    • 「農業/プランテーションに注力する経済を保とうとしていて、なおかつ労働力不足に悩む国家」なら有効とは書いてあるが
      プレイヤーは工業化したいだろうしね

      • 「農業/プランテーションに注力する経済を保とうとしていて、なおかつ労働力不足に悩む国家」
        要するに史実のアメリカ南部か

  4. やるとしたらロールプレイぐらいか

  5. 原作同様、工業化に奴隷制は合ってない感じだな。
    何より生活水準が低く固定されるせいで、popが増えず、国内需要も増えないのが痛い。
    ステラリスみたいに非奴隷制国家が奴隷を買って自由民にすることも出来ないだろうし。

    • 奴隷貿易で奴隷を買えるだけ買いまくった後奴隷制廃止するならできそう

  6. しかしやたら持って回った言い回しにしている辺り欧米でのこういう話題についての扱いが見えてくるな

  7. VIC2だとアフリカで奴隷を産出するプロビがあったけど、VIC3でもそうなるのかな?

  8. 自由と訴える時代を再現するゲームは、もし奴隷という物を表現できなければ草でしかない

  9. 奴隷制を維持した状態でWCを達成するのが縛りプレイになりそうだ

    • そもそもVicで世界征服を目指す事自体が縛りプレイな気も
      「色塗りのゲームでは無い」とアナウンスしているし

  10. 逆に奴隷制を強いる戦争はできるのかな?

    • 俺が作る

  11. 更新お疲れ様でした。

    扱いが難しい感がありますが、工業化するにも色々と要求される以上はそれ一色にするのが正解でもなさそうなので、需要は残りそうではあります。食料問題とかが消える訳ではないのだから農業をどこかでやらないといけませんしね。
    仮に農業を自国で賄おうとするのなら、それを奴隷でやらせようとするのはそれはそれでありかな、と。

    • 南部連合の例で言うなら、奴隷プランテーションでつくられていたのは商品作物だから、きみのいうのはヒストリカルではないと思う。

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