「Victoria 3」新DLC「Sphere of Influence」発売は5月6日!

「Victoria 3」開発日記#9――国内市場

Vic3 開発日記

「Victoria 3」開発日記#9が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は国内市場について。本体発売前の開発日記です。

前回:開発日記#8――政府の制度


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開発日記

開発日記#9は、国内市場について。

フランスの市場には安価な高級家具・磁器・果物・肉があふれている。高級服とワインはバランスが取れている。しかし、贅沢品の中でも砂糖はかなり不足しており、砂糖の安定した供給源を確保することで国内の蒸留酒の供給も改善される可能性がある。

  • 市場(Markets)は世界中のあらゆるステートのあらゆる商品に対して需要と供給に基づいた合理的な価格を決定することで、ゲームの動的な経済を動かすものだ。国内市場を拡大してより多くの土地を取り込むことは、自国の溶鉱炉のためにより多くの原料を獲得し、自国の製造業のためにさらなる顧客を得ることを意味する。産業基盤が拡大すれば商品を市場に運ぶためのインフラに対する需要も高まる。
  • デフォルトではすべての国家が通常は(常にではない)首都を中心とした独自の市場を支配している。この市場中心地に(陸路、あるいは港を通じた海路で)接続するすべてのステートも市場の一部だ。こうしたステートにはさまざまな度合いの「市場アクセス(Market Access)」があり、これはそのステートが同じ市場内の他のすべてのステートとどれほどよく接続されているかを示す。市場アクセスはインフラに基づいているが、詳細は来週の開発日記で詳しく説明する。

家具は都市の下位中産階級に人気のある商品で、フランス市場での価格が急落する可能性は低い。適切な原材料が十分に供給されていれば、この市場の家具産業を拡大するのは安全な賭けだ。

  • ステートにおける消費と生産のすべては市場の買い注文(Buy Orders)と売り注文(Sell Orders)に反映される。これは商品市場における注文と考えてほしい。すなわち、穀物の消費が多ければ流通業者はさらに多くの穀物の買い注文を出し、絹の生産が多ければ絹の売り注文が増える。

Orshaではガラスが過剰生産されている。Orshaの市場アクセスが悪いことも相まって、ここのガラス工場は商品を通常より高い市場価格で売ることができない。これはガラスを消費する現地のPopや中心市街地にとっては市場価格よりも安い価格で購入できるのでいいことだ。しかしOrshaのガラス工場を拡大し続けてもすべての現地産業の市場アクセスを悪化させるだけで、Orshaのガラス売り注文が市場に届く量はますます減っていくため、他の場所でよいガラス価格がつくことにもならない。この価格動向を私たちは市場価格チャートで見ることができる。以前は供給量が少ないために市場価格が高く、Orshaのガラス工場を拡大し始めたことで市場価格は下がったが、Orshaの拡大する産業がボトルネックとなって価格が再び上昇し始めた。過去数回の拡大で現地価格は着実に下がっているにもかかわらず、市場価格はまったく下がっていない。

  • 商品に関する開発日記で述べたように、すべての商品には基礎価格(base price)がある。これは理想的な市場環境、すなわちすべての需要が利用できる供給で完全に満たされ、需要を超過する商品生産がゼロである場合につく価格だ。建造物が需要以上に生産すれば、1単位生産するごとに価格は下落していく。これは消費者には利益だが、生産者には不利益となる。逆に、需要が供給を上回っていれば、その商品を生産している建造物の経済状況は改善する一方で、その商品に依存して暮らしているPopや経営されている建造物は高い支払いをすることになる。
  • 市場の多くのステートで商品の価格を決定するときは、まず市場価格を決定する。これは基礎価格をベースラインとして、市場の買い注文と売り注文のバランスに基づいて決まる。買い注文が売り注文よりも多ければ価格は上がり、逆もまた然りだ。
  • 市場に出された買い注文と売り注文はステートが持つ市場アクセスの量によって変動する。つまり、インフラが整備されていないステートは市場との取引が少なく、現地で入手できる商品に頼ることになる。完全な市場アクセスを持つステートはすべての商品に市場価格を使用する。そうではないステートでは市場価格の一部のみが使用され、残りの現地価格はその商品の現地での消費と生産から決まる。実際の取引はすべて現地価格で行われ、市場価格は市場アクセスに比例して現地の不均衡を緩和する働きをする。

十分な量の染料が入手できず、この気の毒な織物工場は衣料品を今週は126単位ではなく42単位しか製造できず、これは採算をとるにはまったく不十分だ。なにかが変わらなければ賃金が下げられて埋め合わされ、最終的には手許現金が枯渇して労働者が仕事を放棄し、建造物は機能しなくなる。

染料を輸入したり、プランテーションで栽培したり、ハイテク化学工場で製造したりすることで不足を解消できない場合、織物工場を工業化以前の手工業に戻せば染料は必要なくなり、織物工場の限界収益性は向上する。

  • 供給過剰になれば販売価格は非常に低くなり、生産者は政府の補助金を受けない限り賃金を維持し、生産量を増やすことはできなくなる。しかし、供給過剰は品不足ほどまずいことでもない。商品が不足すると、例えばその商品を投入している建造物の生産効率が大幅に低下するなど、市場内のその商品に依存している者にとっては恐ろしい影響が生じる。不足している場合は国内での生産を急ぐか、他の市場から輸入するか、市場を拡大してその商品の有力な生産者を含めるかの早急な対応が必要だ。
  • これまでのVictoriaをご存知の方はこのシステムに商品の備蓄がないことにお気づきだろう。前作では1つの商品が生産され、販売され、取引され、精錬され、備蓄され、最終的に消費され、世界の総供給量に対してどれだけの量が持ち込まれ、取り除かれたかによって世界の価格動向が決まっていた。Victoria 3では1つの商品単位が生産されると、どれだけ多くの消費者がその商品を買いたいと思っているかによって決定される価格で直ちに販売される。このとき、価格は実際の需要と供給に応じてすぐに変動し、市場間の取引は売買注文を用いてモデル化される。
  • このさらに開かれた経済モデルは急激な経済変動への対応力が高く、世界中のセメントがミズーリの倉庫に積み上がってしまうような不可解なシステム障害は発生しにくい。このシステムにおける備蓄は現金(cash。例えば建造物の手許現金や国庫)やPopの富として表現される。富は生活水準の基礎となり、消費レベルを決定する。
  • 経済オタクの方ならお分かりだろうが、商品の備蓄がないということは、Victoria 3ではVictoria 2で導入された固定的な世界の通貨供給から離れたことを意味する。その主な理由は、単純にこのようなシステムではゲーム内の経済に関してできることについて多くの制約があるためだ。Victoria 2の非常に制約が厳しく技術的にも困難な閉鎖市場と世界市場の買い付け順序では、商品の代用・貿易路・動的な国内市場・商品の輸送コストなどはデザイン上適合しないか、単純に実行不可能であるために扱うことができない。
  • 私たちはこのアプローチによって追加される複雑さ・反応のいいシミュレーション・興味深いゲームプレイが、失ったものを補って余りあるものだと考えている。

ドイツ関税同盟(Zollverein)はプロイセンが管理するドイツのステートの統一市場だ。このような関税同盟がなければドイツの多くの小国は経済効率が悪すぎるし、地理的な問題や海上貿易へのアクセスができないために貿易の機会が大きく妨げられることに気づくだろう。

  • 一番上のスクリーンショットを見てわかるように、ひとつの市場には複数の国家が参加できる。強力な国家が主導する関税同盟協定の結果であることもあるが、傀儡国や半独立の植民地との従属関係によることのほうが多い。条約港(Treaty Port)のように、国家が他国の市場内に小さな土地を持つこともできる。自国の経済力を高める道は国内での生産や消費を増やすだけでなく、外交的・軍事的手段を講じることにもある。
  • (質疑応答より)貨幣と通貨供給量について、これまでのVictoriaと同様に、ポンドのシンボルはすべての取引がイギリスポンドで行われることを主張するものではなく、世界の貨幣のシンボルだ。複数の通貨と通貨市場を備えたゲームを作りたいとは思っているが、これは大変なことだ。
  • 「通貨供給量(money supply)」もほとんど同じ原則に従う。ポンドは任意の価値単位であり、文字どおりの銀行券ではない。資金が国庫にあるとき、それは「金準備」だ。赤字のときは「債務元本」。Popにお金が残っているときは富(貯蓄、投資など)に変換される。Popにお金がないときは富が減少する。通貨供給量、あるいは蓄蔵した価値は、国庫、建造物の手許現金、Popの富の総計であると考えることができる。

質疑応答

Q:最初のスクリーンショットでイギリスがフランス市場に入っているのはなんで?

A:イギリスは「インド洋地域(Indian Ocean Territory)」という地域に小さな島を持っていて、そこがフランス市場に属している。したがって、ゲーム開始時にはフランス市場にGDPの0.1%を貢献していることになる。

Q:国内市場から他国を追い出す手段はある?

A:一般的に、他国が自国市場にいるのはプレイヤーが招待したか、その国家を支配しているためだ。この場合、プレイヤーは彼らを追い出したり、解放したりできる。実際に自分の市場に小さな土地(例えば条約港)を持っている国家の場合はそう簡単ではなく、その領土を割譲させるか武力で奪い返さなければならない。

Q:工場の収益性はどうやって判断するの?

A:建造物ごとに従業員一人が年間に平均で生み出す金額(賃金や配当などは含まない)に相当する生産性(Productivity)を決め、その生産性を世界中の同種の建造物、あらゆる種類の建造物両方と比較して「健全性(health)」に変換する。その結果、ある建造物は従業員一人当たり1.9ポンドを稼ぎ、別の建造物は7.1ポンドを稼ぎ、前者はその建造物の種類(自給自足農場など)では優れているのに対し、後者はその建造物の種類ではあまり優れていない(世界の他の製鉄所に比べて技術的に遅れをとっている製鉄所など)。

Q:軍需品の備蓄はできる? 市場メカニズムのせいで戦争に負けるのはうっとうしい。

A:戦争を含むすべてのものが市場メカニズムと密接に結びついていることが私たちのデザインの大きな柱だ。つまり軍需品の備蓄はできない。自軍を最高効率で運用するために必要な軍需品に法外な支払いをすることになったり、軍需品が不足したりしないためには、十分な資金の蓄えと有力な兵器産業が国内にあるか、あるいは信頼できる貿易相手がいることが望ましい。

Q:軍需品の備蓄ができないのは考え直してほしい。特にマルチプレイでは「リアリティ」を損なう。

A:不可能なことではないが、軍事システムに多少の惰性が生じて戦争の経済的側面の重要性が相対的に低下する。金準備が実質的な備蓄として機能しているので、軍需品の備蓄があると国家が問題にぶち当たるまでに2つのバッファを使い切らなければならないことになる。他の経済・軍事システムがどのように機能しているかを考えると、デザインの観点からは軍需品の備蓄にはあまり意味がない。今後、情報を公開していく中でその理由が明らかになっていくと思う。


来週はインフラについて。

次回:開発日記#10――インフラストラクチャー

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コメント

  1. 禁輸とかの外交的手段が存在する場合いくら金があっても軍需物資を買えないわけだからマズイのでは?

  2. Vicシリーズ未経験者だけど、この記事を読む限り管理する項目が多くて大変そうなゲームだね
    戦争もしなきゃいけないだろうし…

    • HOI4の石油備蓄みたいに軍需物資も備蓄する方が、リアリティには必要だよね

      それとも禁輸されたら金持ってても輸入できない仕組みが有るのだろうか?

    • 全部覚える必要はないよ。

      リアル世界の政治家と同じ、全て分野に優れる必要はない、経済に詳しい人なら経済で世界制覇、軍事詳しい人なら軍事で世界制覇。victoriaシリーズは常にあくまでその世界を提供してあげるだけ、オープンワールドゲームと同じですね。

      つまりプレイヤーはリアルにeu4の君主となる、点数じゃなくて、あなた自身の能力がリアルにゲーム中に反応するから、軍事か、政治か、経済か、どちらの分野が優れるか、ゲームの成敗に直結する。

  3. リアリティとか言うなら弾薬管理の概念を導入しないと
    第一次世界大戦が工業戦争となったのは兵器の進歩で弾薬の消費量が馬鹿みたいに増えたからだし

  4. 備蓄しときゃいいで済む話なら総力戦なんて必要ないんだよ
    でも現実の大戦での物資消費は尋常でない量であってそれを備蓄で済ませるなんて到底非現実的な話だった

  5. 軍需物資が備蓄出来ないとなると軍需産業を自国に持たない小国が禁輸されるだけで詰むのでは?まあその為にドイツ諸侯みたいな小国は軍需産業を自前で持つプロイセンやオーストリアのような大国の市場の傘下で武器を入手しろってことか

  6. マーケットは一国社会主義が再現出来そうで面白そうではあるのだが、加工輸出を主とする経済みたいな事は難しいのかね。当時の世相を考えたら素直に殴って影響圏に入れろって話なのかもしれないけど。

    一方備蓄が無いのはどう働くだろうな、大戦になれば間違いなく平時の武器供給量の数十倍が求められるだろうし、そうなったら国内市場どころか世界市場の生産量以上が消費されるのでは…? 経済を動員して一時的に兵器生産に当てれるシステムとかが無いと、破綻しそうな気がするが。それとも戦時に工場建設を高速化するシステムがあるのだろうか、それはそれで戦後酷い解雇祭りが起こって大不況が起きそう。

    • 生産方式の開発日記の原文の質疑応答で「自動車工場で戦車やジープを作らせられるか」という質問を肯定しているので他の軍需物資や兵器も民需工場でも作れそうではある

    • いきなり殴ることはその時代においてもうダメですね。戦争が始まると経済が狂ってなる、戦争が終わったら解雇祭りで不況になる恐れってかなりリアルですね。

  7. 誤解してる人がいるみたいだけど、「リアリティ(原文ではrealism)」を言い出したのはフォーラムの質問者であって記事の投稿者(パラドの中の人)ではないよ
    開発者のスタンスとしてVic3でリアリティの追及を最優先に置いてるわけじゃないのは「ポンドは文字どおりの銀行券ではない」あたりの言及を見ても明らか

    軍需物資の備蓄の概念をオミットすることによってゲームプレイがどうなるかは実際にやってみないことにはわからないな
    そもそもVic3の戦争がどういう形になるのかもほとんど情報公開されてないしね

  8. リアリティは、ほんの少しは求めてるけど、ガチガチの「リアリティ」は求めてない。
    面倒なマイクロマネジメントなんて誰も求めてないだろうと思う

    リアリティと快適なゲーム性のバランスって難しいよね

    • 心配するな、vic2を遊んでみたらわかる、経済研究が好きな人なら、これくらいは全然負担だと思わないし、経済詳しくない人なら、経済を放棄して、ひたすら戦争と政策改革をすれば良い。
      victoria2があくまでその世界を提供してあげる。

      リアル世界の政治家と同じ、全て分野に優れる必要はない、経済に詳しい人なら経済で世界制覇、軍事詳しい人なら軍事で世界制覇。
      つまりプレイヤーはリアルにeu4の君主となる、点数じゃなくて、あなた自身の能力がリアルにゲーム中に反応するから、軍事か、政治か、経済か、どちらの分野が優れるか、ゲームの成敗に直結する。
      だから、良くも悪くもプレイヤー自身の能力に帰結するため、挑戦甲斐がある、eスポーツみたいに、誰にでも通用する攻略はまずはない、成敗とどれだけ成果を出せるのはあなた次第です。

  9. ヨーロッパ市場はうまく機能しそうだけどアジアや南アメリカとか雑になってないか心配

  10. HoI4の石油の件を鑑みれば撤回も十分ありうるな

  11. AIがちゃんと運用できるかも大事なので、まあその意味で資源備蓄がない方が安心ではありそう

  12. hoi4の燃料追加は小国救済とは真逆だろ
    要するに枢軸国を燃料不足で悩ませるための変更だからな

  13. 大戦の後とか勝っても負けても国債がすごいことになりそう
    賠償金で回収しないとね

  14. ゲームシステムが複雑になればなるほど、AIがそれを管理しきれず、常に難易度最高で行わなければゲームにならなくなるのは、stellarisで経験済みだと思うけど。
    いやしかしマイクロマネジメント楽しいので、綿密な経済システムを組んでほしい。工場一つ一つを管理したい…!(社会主義者)

  15. 誰も気づいていないですか、サムネの左側は日本だよ、早く遊びたいです、ちゃんと幕末の勢力図を再現してくれて欲しい

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