「Europa Universalis IV」開発日記2020年2月25日分が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は傭兵について。1.30ヨーロッパアップデートリリース前の開発日記です。
開発日記
開発日記2020年2月25日分は、傭兵について。
- 画像は開発中のものだ。
- コンセプトと前提から始めよう。現在の実装では、充分に裕福なら傭兵によってゲームの中核的な機能を完全に迂回したり無視したりできる。すなわち人的資源だ。そして人的資源が安くなったことで、他の多くの機能、例えば補給制限なども意義を大きく失った。
- 人的資源は財政のように計画を練らなければならないものであり、宿敵との激しい戦争で消耗しなくてはならない。傭兵はこれを補うもので、ゲーム序盤には広く使われるが、国家がより多くの人的資源を利用できるようになるにつれて徐々に使われなくなっていくはずのものだ。
- 傭兵がこのようにならない本質的な理由は、傭兵がプレイヤーに無限に供給されるからだ。この問題に対処する方法として、陸軍プロフェッショナリズムや特殊ユニットでより価値の高い連隊に人的資源を使うことだが、どんなに優れていても戦力値がゼロの連隊はなんの意味もない。
- Jakeと私(注:EU4ゲームデザイナー)は設計に取り組んでいたとき、ビジョンがなんであり、なにを達成しなければならないかについていくつかのポイントをまとめた。
- 傭兵はなんらかの形で有限でなければならない
- 傭兵はゲーム終盤にscalable(注:質量ともにゲーム終盤には力不足になるというような意味合いと思われます。1)であってはならない
- プレイヤーが先にクリックしたからと言って他のプレイヤーに対して有利になれるようであってはならない
- 以前の開発日記に書いたように、傭兵団システムはCKとImperatorからインスピレーションを得たが、これに少しひねりを加えた。
- 1.30アップデートの一環として、傭兵は全面的に見直される。プレイヤーは1つの傭兵団全部を雇用する形となり、この傭兵団は傭兵連隊で構成される完全に独立したひとつの軍として機能する。
- 傭兵団(Mercenary Company)を購入すると、プレイヤーはその傭兵団に付随する人的資源も購入したことになり、これはプレイヤーが傭兵団をどれだけうまく管理できるかによって制限される有限の期間だけプレイヤーのために戦う傭兵団に与えられるものだ。こうした傭兵団には「国内の傭兵団(local)」「外国の傭兵団(foreign)」のどちらかであり、「外国の傭兵団」だと固有の補正や傭兵団に関連したコンテンツを持つ。
- 前回の開発日記では、傭兵団が解散すると10年間利用できなかったが、これが20年に延びた。また、傭兵団の中の部隊数上限は40→60とした。傭兵団は雇用した国の開発度によって増減するが、これも調整した。
- 「国内の傭兵団」は本拠地となるプロヴィンスを持たない傭兵団であり、各国家に一定数存在し、いつでも利用できる。
- 「外国の傭兵団」は本拠地となるプロヴィンスを持ち、交易距離内(貿易風などは算入しない)の帝国が雇用できる。「外国の傭兵団」には将軍がおり、彼らは自国の指揮官上限に算入されない。
- 前回の開発日記以来、多くの変更を行ってきた。ここでご紹介しているのは元の設計にはなかったが最近テストを行っているものだ。
- 大きな変更点は傭兵団の地域性を強調したことだ。これは植民地を持っているような大きな帝国に相当な戦略的要素をもたらす。「外国の傭兵団」は雇用されて本拠地となるプロヴィンスから遠く離れるほど、そこで陣容を整えるのに時間がかかるようになる。傭兵団のほとんどの基本値は本拠地となるプロヴィンスの技術レベルなどに基づくようになった。
- 私たちがやりたいのは、インドで戦うためにGerman Jaegersを雇わないようにすることだ。これは史実のイギリスがインドで戦うのに現地の人々を雇用したことに触発されたものだ。
- 傭兵団のコストは大きく調整された。小国向けに安い傭兵団も追加したが、彼らには安い理由となる欠点がある。例えば上の画像は小国や自由都市で利用できる国内傭兵団だ。こうした傭兵団は非常に安上がりだが、補充や士気回復が遅い。
- 傭兵団を安くする一方で、傭兵による陸軍維持費1のインフレを早くした。通常の正規軍は軍事技術が上がるごとに2%増えるが、傭兵は8%増える。
- 傭兵団には多くのコンテンツがあり、特にハンガリーと黒軍についてのものがある。ハンガリーにはマーチャーシュ・コルヴィヌスが創設した国軍に絡んで固有のディシジョンやイベントがあったが、これは新たな傭兵システムに統合され、黒軍はハンガリーが早い段階で利用できる固有の傭兵団となっている。
- こうした傭兵団は固有のフレーバーを持つイベントと関連づいているが、さらに規律(discipline)が5%高く、他の傭兵団よりも安くなっている。
- 黒軍が歴史的に時代遅れになる日付(改革の時代と関連している)になると、プレイヤーは貴族のプレイヤーに対する信頼を犠牲にして彼らを雇用し続けるか選択する。
- およそ100の傭兵団を各地に追加し、そのうちのいくつかはゲーム中のコンテンツに関連している。例えば教皇庁スイス衛兵団(Pontifical Swiss Guard)は教皇領で使用できるが非常に小規模で、黒軍と同じく規律が5%高い。
- 他に興味深い傭兵団として、前衛としてよく機能する決死隊(Forlorn Hope)、Dahomeyを支配していれば誰でも利用できるダホメのアマゾネス(Dahomey Amazons)、ゲーム終盤に利用可能になるヘッセンの猟兵団2(Hessian Jaegerkorps)がある。
- 以前述べたように、傭兵はプレイヤーの人的資源の源泉を考えている理由でもある。私たちはアイディアから多くの人的資源を得る以上にもう少しプレイヤーが管理できるようにしたいと思っており、訓練、プロフェッショナリズム、建造物の変更はその例だ。補給上限や損耗を見直し、少し軽いものにしたのもそうだ。
- もうひとつは圧倒(overrun)のメカニクスの変更だ。これは戦闘開始時に敵の10倍以上の軍がある場合、最初のティックで戦闘が終了し、敵が一掃される。依然としてこれは機能するが、戦闘幅を埋めるのに充分な軍がいる場合は無視される。
- 3万対30万の戦いではおそらく負けるだろうし、戦闘がロックされるパートでスタックが一掃されるだろうが、圧倒はされず、小規模なスタックが残る。
- これは主にマルチプレイについてのもので、というのは50万ものスタックで移動するのはAIが疑問に思うからだ。
- 最後は傭兵の補正について。Available Mercenariesという補正はなくなり、Mercenary Manpowerという補正に置き換わった。この補正は傭兵団を雇用したときの傭兵団の人的資源を増やす。コンドッティエーリを借りているときも同様だ。
- これまでAvailable Mercenariesがあった部分はMercenary Manpowerにすべて置き換わる。そして傭兵はこれをプレイヤーがどれだけ持っているかの計算について兵力上限に依存しないため、量、攻撃、外交のようなアイディアの間接的な弱体化となる。変更の例を以下で見ていこう。
- スイスのアイディアと政府では傭兵を増やす
- 政府によりMercenary Manpower+50%
- アイディアによりMercenary Manpower+50%、Mercenary Maintenance-15%、Mercenary Discipline+5%
- ブルゴーニュのアイディアによりMercenary Manpower+50%
- Administrative IdeasによりMercenary Manpower+50%
- スイスのアイディアと政府では傭兵を増やす
来週は宗教について。
コメント
東南アジアで日本人傭兵いるかな?
もしいるならアプデ後は東南アジアでやりたいね
・傭兵がこのようにならない本質的な理由は、傭兵がプレイヤーに無限に供給されるからだ。この問題に対処する方法として、陸軍プロフェッショナリズムや特殊ユニットでより価値の高い連隊に人的資源を使うことだが、どんなに優れていても戦力値がゼロの連隊はなんの意味もない。
この文章の最後の文、strengthはストレートに「兵数」って意味じゃないでしょうか?ゲーム上兵数0の部隊というのは存在できます(毎月一定数部隊に補充される)
> この文章の最後の文、strengthはストレートに「兵数」って意味じゃないでしょうか?
文脈から、人的資源がなければどんなに優れたユニットでも意味がないということを言いたい文と解釈したのでそのようにしました。
傭兵はゲーム終盤に拡大可能であってはならない
この「拡大」はscalableだとおもいますが、直訳ならどちらかというと「拡張」だと思うのですが。
要するに、開発は傭兵を
「ゲーム序盤には広く使われるが、国家がより多くの人的資源を利用できるようになるにつれて徐々に使われなくなっていくはずのものだ。」
としたいので、「ゲーム終盤のインフレについていけない」という意味で拡張性がないと言っているのでは?
> この「拡大」はscalableだとおもいますが、直訳ならどちらかというと「拡張」だと思うのですが。
「ゲーム序盤には広く使われるが、国家がより多くの人的資源を利用できるようになるにつれて徐々に使われなくなっていくはずのもの」にするという部分にあるように、量的な側面を指していると思いますので、そのようにしています。
「ゲーム終盤のインフレについていけない」というのは傭兵の能力を指しているのだと思いますが、そのように理解するとしたら、ゲーム終盤に新たに登場する傭兵団の存在や、傭兵団の能力がプロヴィンスの技術レベル等に依存するという記載と噛み合わないと思うのですが、どうでしょうか。
Hessian Jaegerkorpsは軍団と呼ぶには規模が小さすぎる傭兵団ですし、KorpはCorpと同じように部隊階層の中の軍団だけでなく、大小さまざまな「兵団」を意味する場合もある(例えばWW1中に編成されたAlpenkorpsはおおむね師団規模に集成された山岳歩兵部隊でしたし、アメリカ海兵隊も海兵軍団とは言いませんよね)ので、猟兵団くらいの方が適切かもしれません。
修正しました。ありがとうございます。
「傭兵団を安くする一方で、傭兵による領土維持費のインフレを早くした」のところですが、EU4のゲーム用語として陸軍維持費のことをland maintenanceと呼んでいるので、これはそのまま傭兵の維持費としたほうがいいと思います。
あー……凡ミスですね。ありがとうございます。修正しました。
scalableについてです。
では、質問を少し変えて
プレイヤーからの質問
Question: can I still put these mercenaries together with the rest of my army? Because if not, and the mercenaries have higher maneuver, they just arrive a day early and screw over your battle.
に対して、回答の中でわざわざもう一度
However I want to iterate, mercenaries are not supposed to be scalable for late game wars, and that includes them being fully “integrated” with the rest of your forces.
と、言及したのはどのように解釈されましたか?
やはり量的な意味でゲーム終盤の戦争に合わせて拡大しないという意味のように感じますが、いかがでしょうか。EU4終盤の戦争にはあまり詳しくないので教えていただけますと助かります。
それ以前に、私は上のscalableについての質問と同じ方だと思ってお答えしていますが、「「ゲーム終盤のインフレについていけない」というのは傭兵の能力を指している」という上のコメントに対する私の解釈は合っていますか?
それとも「能力も量も合わせて」という意味でしょうか?
scalableの質問をした人です。
まず、「量」が重要な要素なのは間違いないです。終盤はシングルでも100k単位ですし、マルチでは1M単位の戦闘も起こります。これに10k、20k足した所で焼け石に水です。
ただ、質問者は常備軍と傭兵を一つの部隊にマージできるの?って質問に「できない」と回答した後にこれだったので、質もそうなんですが(localのデバフが結構きつい印象)、その他システム的にもメインで使わせる気がないように読めました。
なので量の問題に限らず「そもそも傭兵を終盤の戦争に対応できるようにしてないよ」くらいに捉えてました。
ということは「質量ともに終盤には力不足になる(だからscalableではない)」という意味合いと考えるとよさそうですね。
記事の表現も修正しました。ありがとうございます。
scalableはそのままスケールするとかスケール力と訳した方が個人的には伝わりやすいと思いました。
正規兵は後半になるに連れて強くなりレイトゲームにおいて支配力を増す。
要するに正規はスケールするけど傭兵はあまりスケールしないと。