「Victoria 3」開発日記#12が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は国庫について。本体発売前の開発日記です。
開発日記
開発日記#12は、国庫について。
1836年に所得税がないアメリカは政府の支出能力を大きく制約している。
- 開発日記#2でも触れたが、資金(Money)はVictoria 3において管理すべき主要な資源のひとつだ。このこと自体にはもちろん新たなものはない(これまでの当社のほとんどのグランドストラテジーゲームで資金はなんらかの形で役割を果たしている)が、資金の機能する仕組みはみなさんが慣れ親しんでいるものとは少し異なる。
- ほとんどのゲームでは、資金は特定の目的のために、その目的を達成するのに十分な量になるまで貯めていく資源になる傾向がある。例えば、プレイヤーが資金100を必要とする建造物を建設しようとしていて、プレイヤーの毎月の収入が10であるとする。そうすると、その建造物を建設するには10か月待ってその一括払いのコストである資金100を貯めなければならない。
- この開発日記を読んでいる方なら誰でも知っているような単純明快な仕組みを、なぜ私が説明しているのかとみなさんは思われるかもしれない。その理由は、Victoria 3には一括払いのコストというものが存在せず、代わりに週ごとの収支が重要になるからだ。ゲーム内の週の終わりに自国の収入と支出が集計され、その結果が金準備(Gold Reserve)や国家債務(National Debt)に充当される。
- つまり、建設のようなあらゆる支出も週をベースに行われるということだ。プレイヤーは同時にたくさんの建造物の建設を始めるにあたって「手許」に現金を持っている必要はないが、それを支える収入がなければすぐに借金を負うことになる。
スペインの金準備はそれ以上の備蓄がまったく非効率になるところまで増加しており、彼らは資金の使い道を見つけるべきだ。
- 金準備とは国家が保有する現金の備蓄だ。債務がない場合、支出を差し引いた後の週の予算に残った資金は金準備を増やすことに使われる。逆に、支出が収入を上回っている場合はこの資金を金準備から取り崩して帳尻を合わせる。
- 大きな金準備を持つこと自体はまったく悪いことではないが、常に予算を大幅に黒字にしておくのが必ずしも最良の考え方というわけでもない。国家ごとに金準備上限(Gold Reserve Limit)があり、これは余剰が1ポンド増えるごとに金準備の効果が低減していく「ソフトキャップ」だ。
- 莫大な金の備蓄がある場合、1万ポンドの余剰があっても備蓄は2000ポンドしか増えず、残りは単純に無駄になる。したがって、金準備が一杯になった国家はそのような無駄を避けるために資金を再投資する手段を見つけようとするだろう。
イギリスは数百万ポンドの債務を負っているが、これはそれほど大きな問題ではない。イギリスの先進的な経済によって債務上限が高く、利払いはイギリスの支出のごく一部に過ぎないからだ。
- では、赤字を出していて金準備を使い切ってしまったら? その場合は借金することになる。この時点から、収入を超える支出をするたびに、自動的に借入を行う。これはなんとしても避けなければならないことのように聞こえるかもしれないが、必ずしもそうではない。
- 借入には金利を支払わなければならないが、Victoria 3の金利は比較的低く、債務上限(Debt Ceiling)に達するのを避ける限り、赤字支出による経済成長は非常に有効な戦略となり得る。通貨発行や課税による収入増が支払利息を上回る可能性があるためであり、新産業を興すことで国民に恩恵があるのは言うまでもない。
- 債務上限は金準備とは異なり、ソフトキャップではない。これに到達すると国家は債務不履行となり、恐ろしい状態に陥る。回復するには支出を減らして毎週の収支を黒字にするしかない(あるいは他国が介入して債務を引き受けた場合、プレイヤーにとって望ましくない結果になり得るが、詳細は今後述べる)。単純に破産を宣言することもできるが、借り入れている資金は実際には国内の建造物の資金準備(実際にこれが債務上限の大きさを決定する)であるため、国内産業にとって非常にまずい結果となる。
税の水準を最高レベルまで引き上げるのは、資金調達と急進派創出の双方を実現する確実な手段だ。
- この開発日記の締めくくりとして、収入と支出の主な項目について簡単に触れておきたい。これは網羅的なリストではない。
- 一部の項目(特に税と給与)には「水準」の設定がある。例えば、正統性の低下や急進化と引き換えに国民からより多くの税を徴収できる。
- 収入の主な項目(網羅的なリストではない)
- 通貨発行(Minting):すべての国家はGDPに応じて新たな通貨を印刷・鋳造することである程度のキャッシュフローを得られる。通貨発行はすべての国家にある程度の収入をもたらす(特に国内に金鉱(Gold Fields)を持つ国家では)が、それだけではもっとも小さな政府でなければ資金は不十分だ。
- 所得税(Income Taxes):所得に応じて徴収される税金であり、建造物の労働者に支払われる賃金の一定割合が政府に支払われる。
- 人頭税(Poll Taxes):人一人に課される税金であり、労働者一人ごとに一定額が徴収される。収入に関係なく同じ額を徴収するため、非常に逆進性が高い。
- 土地税(Land Taxes):人頭税の特殊なもので、小農民(Peasants)のような特定のPopにのみ課税される。
- 消費税(Consumption Taxes):Popが消費する特定の商品に直接課される税金。消費税を課すには権限(Authority)が必要となる。
- 配当税(Dividend Taxes):建造物の所有権を持つPopに支払われる配当金に課される税金。建造物を所有しているのは裕福なPopだけなので、非常に累進的な課税形態となる。
- 関税(Tariffs):自国市場から輸出される商品から利益を得る手段として導入する予定だが、具体的にどのように機能するかについてはお話する準備ができていない。
- 支出の主な項目(網羅的なリストではない)
- 政府の賃金(Government Wages):政府機関(Government Administrations)や港湾(Ports)のような政府の建造物で雇用するPopの給与コスト。
- 政府の物品(Government Goods):政府機関で必要とする紙など、政府の建造物で使用する物品コスト。
- 軍の賃金(Military Wages):陸海軍に勤めるPopの給与コスト。
- 軍の物品(Military Goods):兵舎(Barracks)で使う小火器(Small Arms)のような陸海軍で必要とする物品。
- 助成金(Subsidies):特定の建造物が競争力を維持できるように助成するコスト。
- 利息(Interest):借入があるときに支払う利払いコスト。
- 建設(Construction):新たな建造物の建設コストで、建設方式に必要な商品と建設業で働くPopに支払う賃金の両方を含む。
質疑応答
Q:税率設定の不便さ、粗さにはがっかりした。なんでスライダーをなくしたの?
A:理由はいくつかある。
-
- スライダーより個別の選択肢とすることでそれぞれのレベルを選択したときに得られるものが明確になる。
- プレイヤーが毎週スライダーを調整して完璧な収支にしようとするのは、いいゲームの流れとは思わない。
- 政府が国民を刺激することなく毎週税率を調整するというのはまったく非現実的な考えであり、個別の水準とすることで税の水準をいつでも変更できるものではないようにし、そうした変更が政治的な結果をもたらすようにする。
Q:インフレとデフレはどういう扱いなの?
A:今のところ、インフレの機能はない。遅かれ早かれ必要になると考えているが、リリース時点ではない。
Q:国家債務はナポレオン戦争とかそれ以前の債務も負っているの?
A:現時点ではほとんどの国家にそうした債務はない。史実のディテールとしてはいいが、ゲーム開始時に各国が悲惨な財政状態にあるのはゲームプレイ上いいことではないだろう。
Q:国家は建造物に利息を支払うの?
A:現在のゲームでは利払いは単純なマイナスであって、ブラックホールに消えてしまう。私たちは株主に比例的に利払いするものを試作しようと思っており、うまくいけばリリース時にはそうなっている。私が唯一躊躇しているのは、プレイヤーを(一時的に)犠牲にしてPopに有利にしたりその逆をやるような仕組みはプレイヤーにとって明確に「良い」「悪い」ものではなく、構想・説明・ゲーム力学の点で課題があるという点だ。
例えば、借金まみれの国家は産業界の指導者たちに多額の利払いをするが、彼らはその利払いによってさらに贅沢する余裕ができ、それを喜ぶ(実際には債務不履行になることを心配して緊縮財政と返済を求めるだろう)。しかし国家が債務を返済したら、政府は工場経営者たちに怒られることになる。
しかしこうしたことは完全にVickyなので、うまくいくように最善を尽くそうと思っている。
建造物にとっては貸した資金は使えないが、これをうまくやる手段として、建造物が現金準備(Cash Reserves)を使わなければならなくなった場合に、それによって国家全体の現金準備の総額が債務元本を下回ると、その国家は債務不履行(Default)に陥るようになっている。そのため、建造物は基本的に返済を要求することで貸した資金を使えるが、国家が債務不履行になっている場合、国家は破産を宣言してすべての貸し手を見捨てることができる。
Q:政府が資金を借り入れる能力は建造物の数に連動しちゃうんじゃない?
A:建造物の現金準備は建造物のレベルに連動し、その種類によってもさまざまだ。小麦農場(Wheat Farm)は製鉄所(Steel Mill)より1レベルあたりの現金準備の上限が低い。実際には「最先端の非常に儲かる」産業は拡大する一方でローテクの産業は重要でなくなるため、国家の債務上限のほとんどはこうした「最先端の非常に儲かる」産業によって賄われる。
Q:スレッドでは債務上限を市場の信頼度の尺度として使うことが提案されている。
A:初期のプロトタイプの最初の債務モデルではまさにそうした理由で債務上限に近づくほど金利が上昇する仕組みになっていた。実際には、複利と金利上昇によって債務が指数関数的になるため、投資が完璧に成功しなかったときには破産するのをじっと待つしかないという恐ろしくて楽しくないデススパイラルに陥った。これではプレイヤーに赤字を出させないようにしてしまい、私たちが借入システムに求めていたものとは正反対のものになってしまった。いいアイディアだが、うまくはいかなかった。
来週は経済と政治の両方に触れるテーマ、生活水準(Standard of Living)について。
関税というと現代人としては輸入関税が真っ先に思い浮かぶので、「自国市場から輸出される商品から利益を得る手段」というのは奇妙に感じます(スレッドでも同様の指摘をしている投稿が複数あります)が、ゲームでは現時点では輸入関税はなく、輸出関税だけが想定されているようです。ただ、国際貿易についてはまだ触れられていませんし、関税もまだ実装されていないとのことなので、今後変わっていくのかもしれませんね。
コメント
俺、このゲームが発売されたら、所得税と配当税を適切にして、消費税ゼロの素敵な国家を作るんだ……
国家体制側から見りゃ消費税ほど楽に幅広く金とれる税金もないけどな…
昔は関税だったり専売制だったりもあったけど自由経済万歳で潰されたせいで消費税の割合が高くなることに
正直どちらも商品自体に税金が乗ってるのには変わりないけど見えないなら気にならないってだけだよね
確かに楽に取れるけど、消費税は貧困層にとって税の負担が重いから、せめてゲームの中では助けてあげたいと思ったんだよねw
あと所得税の方が富裕層にも適切に課税されるから平等かな~って
思って。
かといって富裕層や資産家に重税を課したら逃げちゃって経済発展が遅れるとかありそう。
脳内ロールプレイがはかどるわ~
所得税って経費控除の考え方で業種ごと(たとえばサラリーマンと自営業で)で不公平があるし、地下経済とか無所得高資産の退職者とかから適切に徴税できないという欠点もあるので、消費税のほうがフェアな徴税という考え方もある。
所得は偽装できても消費を偽装するのは難しいから。
理屈はどこにでもつくんだなあと思った。現代日本の場合で言うなら消費税増税の代わりに法人税減税がなされているから、比べるなら消費税と所得税ではなく消費税と法人税のほうがいいとおもう。VIC3で法人税が実装されるかは知らん。
配当税とやらが法人税なのかな?と思ったんだが違うんかね
うん、それってただの社会主義じゃね?経済成長が阻害されて技術開発が遅れて結果元資本家も労働者も総貧困になる未来が見える見える…
ちなみに現代日本で言えば法人税優遇で消費税増税ばっかりした結果、株価はあがるが実質賃金も名目賃金も停滞か下降しているな。バイデンのアメリカは国際的に法人税逃れを封じたうえで法人税をあげようとしていてこれがトレンド。
現代MODめちゃ期待しますね
インフレが無い・・・だと・・・?
DLCで追加すると言っているね、w
何とも奇妙な世界が構築されそうな予感
輸出関税は現在のわれわれにとっては奇妙に感じるけれど、当時はさほど珍しいものではなく、むしろ政府収入の中で大きな割合を占める財源だったらしいです
現代MODも遊びたいので、輸入関税のシステムも一応設けて欲しいですね
他国が介入して債務を引き受けた場合、プレイヤーにとって望ましくない結果になり得る←じゃけんエジプトくんに経済援助しまくって債務も引き受けてあげましょうね^~
…十年後、借金の取り立てだ! 返せねえならスエズ置いてけオラァン!!
おかしいな?
現在進行形でそんな事やってる国があるような?(笑)
しかしAIが使いこなせるのかな、これ
インフレがないなら中央銀行が国債を買い上げて無限に支出できるな。そういう機能は無いんだろうけど。
輸出関税はたしかに奇妙だな・・武器・弾があんまり国外流出しないようにということなのかもしれんが。
DLCで追加する予定と言っているねw、輸出関税は当時の時代において珍しくないが、現代MODを楽しめるために、輸入関税システムも設けて欲しいね
金準備って日本語訳なんとなく微妙な感じするなぁって思ったらちゃんと経済用語でした大変申し訳ございませんでした
中学校の教科書に普通教えてる言葉だよ
なんか、関税以外の税金全てなくなったんだが、んで一生破産してる。何が起きた?