「Victoria 3」新DLC「Sphere of Influence」発売は5月6日!

「Victoria 3」開発日記#34――運河とモニュメント

Vic3 開発日記

「Victoria 3」開発日記#34が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は運河とモニュメントについて。本体発売前の開発日記です。

前回:開発日記#33――分権的な国家


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開発日記

開発日記#34は、運河とモニュメントについて。

バチカン市はカトリック教会の所在地であり、Victoria 3では教皇庁の偉大な資産となっている。ヨーロッパが発展し工業化するにつれ、国政における宗教的権威の力は急減したが、関連しなくなったわけではなかった。歴史の流れを変え、教皇の世俗の権力を取り戻すことができるだろうか?

  • モニュメント(Monuments)は特定のステートでのみ利用可能な固有の建造物で、マップ上に独自の3Dモデルがある。モニュメントは生産方式(production methods)システムについて興味深い使い方をする。建造物が商品を生み出すのと同様に、モニュメントは国家や地域の補正・キャパシティ(Capacities)・そこで働くPopに対する効果を生み出すことがある。
  • 例えばバチカン市(Vatican City)はキャパシティの影響力(Influence)を生み出すと同時に、利益集団「敬虔な信者(the Devout)」の政治力(political strength)を大幅に引き上げる。また、ホワイトハウス(the White House)は国家の官僚機構(Bureaucracy)を乗算し、投票によって得られるPopの政治力を引き上げる。
  • すべてのモニュメントがゲームスタート時に存在するわけではない。一部はエッフェル塔(the Eiffel Tower)のように建設しなければならず、またモニュメントは通常の建造物よりも建設に大きなコストと時間がかかる。
  • モニュメントは政府の資金によって助成されるため、モニュメントの運営費を負担し切れない場合やその効果に興味がない場合(例えば共産主義イタリアで教会に大きな権力を振るわせたくない場合)、プレイヤーはモニュメントに対する資金援助を止めることができる。
  • 発売時には全部で11のモニュメントを用意する予定だ。

パナマ運河は大西洋と太平洋を結ぶ。数十年にわたる計画と建設を経て1914年にようやく完成し、東西を行き来するために南米を回る長く危険な航路を取る必要がなくなった。運河の中に木や家が見えるが、もちろん修正する予定だ。

  • モニュメントと同様に、運河も特殊な消費物と産出物の組み合わせを持つ固有の建造物だ。しかし、運河建設の真の魅力は海のノードの間に新たな接続を作り出し、パナマやスエズの地峡を船が行き来できるようになることだ。これによって長大な航路を航海して貿易や陸軍への補給を行う船団(Convoy)のコストを大幅に低減でき、補給線を寸断しようとする恥知らずの宿敵に対する脆弱性も大きく低下する。

私たちはジャーナル記事(Journal Entry)のシステムを使って運河調査の進捗を確認するようにした。この舞台裏では目標に到達するまで毎月変数が増加し、これが完成イベントのトリガーとなる。このジャーナル記事はこのプロジェクトに多くの官僚機構を費やしていること、そして調査が完了すればまた利用できるようになることを思い出させる役割も果たす。

  • 運河の建設は些末なこととは程遠い。工事を始める前にその地域の広範な調査を行う必要があり、調査には3年程度の期間にわたって多くの官僚機構を使用する。調査を行えるのはそのステートの支配国と、その地域に関心(Interest)を持つ列強(Great Power)のいずれかだ。多くの国家が独自に調査を行い、自分たちの運河の建設を競うことも起こり得る。

私たちは可能な限りあらゆる場所でスクリプトされたコンテンツによる戦争や外交上の駆け引き(Diplomatic Plays)を避けることを重視することとし、かわりにプレイヤーが自分で外交上の駆け引きを開始するようなインセンティブを与え、AIがジャーナル記事の目標を追求するよう促すことにした。上の画像の場合ではプレイヤーにシナイ(Sinai)に対する請求権を得るか、支配国との関係を改善する選択肢が与えられ、プレイヤーが自分の選択した道を行くことを助けはするが、プレイヤーを特定の行動に縛り付けることはない。

  • 調査が完了するとその土地を領有しているかどうかで道が分かれる。プレイヤーが既に条約港(Treaty Port)やステート地域(state region)全体を領有している場合はそのまま運河建設を開始できるが、そうでない場合は金銭的・強制的手段によって土地を獲得する方法を考える必要がある。
  • プレイヤーが現地の支配国を説得して港を得ることができるとするなら、毎週多額の支払いをする代わりにそのステート地域において条約港を購入するディシジョン(Decision)が利用可能になる。しかし、プレイヤーは資金を温存して、条約港かステート地域(前者のほうが悪名(Infamy)はだいぶ少ないだろう)に対する外交上の駆け引きを開始するかもしれない。これはプレイヤーの要求に対して平和的に譲歩することにつながるかもしれないし、あるいは戦争になるかもしれない。
  • (質疑応答より)バチカン市とこれが国教にかかわらず聖職者に権力を与えることについて、これは主に宗教に関する生産方式をトリガーできないということの結果だ。これは法律でも技術でも別の生産方式でもない。時間が許せばその機能を追加するかもしれず、これによりバチカン市の支配国の国教に応じてバチカン市の機能を簡単に変更できる。
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質疑応答

Q:モニュメントがEU4みたいな魔法のような効果を持つというのはとてもがっかりだ。Modで修正できることを願う。

A:モニュメントは効果を生み出すためにPopを使用するということも含めて、他の建造物とまったく同じように機能する。ただモニュメントが固有であるというだけだ。しかし他の建造物と同じくモニュメントを好きなように改造できる。

Q:問題は国家規模の効果で、見た限りではその建造物でPopが働くこととなにか関係があるようには思えない。その建造物を保有し維持することが、その建造物が持つ効果が発生する理由となっているように見えない。

オスマン帝国がローマを征服したからと言って、どうして政府が利益集団「敬虔な信者」の意見に耳を傾けるようになるの? ホワイトハウスが焼け落ちたからと言って、どうして連邦政府の官僚機構全体が恒久的に大きく非効率になったり、国内の政治力の分配が変わったりするの?

私が「魔法のような効果」と書いたのはそういうことだ。Victoria 3は社会のシミュレーションに関するゲームであるはずで、このような正当な理由のない変化はそうした目標と整合しないと思う。

A:いいご指摘だ! モニュメント系建造物の現在の効果は確かにゲームのテーマにそぐわないものもあるかもしれない。いつもどおり正確な数値はまだ開発中だが、このフィードバックに感謝する。例えばホワイトハウスの国家の官僚機構の乗数については地域の建造物である政府機関(Government Administrations)に大きなボーナスをもたらすように見直すつもりだ。

一方で、一部のモニュメントは国家の偉業やアイデンティティとして、国家全体に効果を持つべきだ。エッフェル塔やアヤソフィア(Hagia Sophia)はそうしたもののいい例だ。また、オスマン帝国がローマを征服してバチカンの支配を得たことで利益集団「敬虔な信者」がさらなる政治力を得ることを望まないなら、彼ら(バチカンを支配した国家)はバチカンを焼き払えばよい。これは単なる建造物であり、建造物の通常のルールに従う。モニュメントには没入感のない「魔法」のような方法で国家に影響を与える力はなく、もしモニュメントがそうするとしたらそれは私たちがミスをしたということであり、ミスは簡単に修正され得る。

Q:私にはモニュメントをすべて史実のもので特定の国家・場所にあらかじめ決められたEU4と同じシステムにVictoria 3開発チームが向かっているように見える。つまり、誰でも建設できる汎用のモニュメントはModでなければ論外であるということ? 5つくらいにしてどの国家でもモニュメントを持てるようにはできないものなの?

A:これについては多くの理由がある。

    • モニュメントは景観や都市に合うように手作業でマップ上に配置される。私たちが苦労してすべての沿岸ステートを調査し、そこに配置する実験をしない限り、自由の女神像をシームレスにすべての海岸線に合うようにするのは実質的に不可能だ。これはつまり、ゲーム内のすべてのモニュメント(現在11個)を固有の位置に配置するために、すべてのステート(現在700以上)に対してこうした作業を行うことになる。
    • こうしたモニュメントの多くはゲーム開始時に既に配置されているが、エッフェル塔をどこにでも建設できるシステムにしたなら、私たちはバチカンもそれを壊せばどこにでも建設できるようにするべきだろう。これはつまり、一貫性のために私たちは別の場所に建設することがありそうにもないにもかかわらず、すべてのステートにバチカンを手動で配置すべきだということになる。
    • 国家はモニュメントを重複して建設できるようにするべきか? ホワイトハウスがこれほど大きなボーナスをもたらすなら、フランスや中国もホワイトハウスを建設できるようにすべきではないか? そうなると、こうした建造物は形はどうあれ特別なものではなくなる。ホワイトハウスは単なる「官僚機構乗数宮殿(Bureaucracy Multiplier Palace)」、エッフェル塔は「威信の塔(Prestige Tower)」などになる。
    • 一部のモニュメントはアンコールワット(Angkor Wat)のように古代のものであり、まさにこうした理由で特別なものだ。ゲーム内で破壊できても、再建するのは理にかなっていない。他国が別の場所に再建するというならなおさらだ。

以上のことから明らかなように、モニュメントを汎用的で誰でも建設できるようにするのは、こうしたことをゲームに追加することと比べて法外な時間と努力を開発チームにかけさせるだけでなく、モニュメントの固有の魅力が大きく損なわれ、おかしな例外ケースを多く導入してしまい、それに対処する必要も出てくる。

これはつまり、私たちに2つの選択肢を残した。すなわち「史実のモニュメントをあらかじめ決められた場所に配置する」「モニュメントを配置しない」だ。私たちはこの時代に国家の威信を賭けて行われることも多かった膨大な工学的業績を認識しないのは機を逸すると考え、前者を選んだ。

Q:モニュメントは建造物の「偉人(great people)」のように感じるし、私たち(注:Victoria 3の開発チームとコミュニティを指していると思われる)は偉人の歴史シミュレーションから距離を置いているものと思っていた。(注:カーライルによる19世紀の思想「偉人論(Great Man Theory)」を踏まえたコメントのようです)

A:モニュメントとキャラクターのうまい使い方はそうしたものを中心的なものとし、システム的に重要なものにすることなく、ゲームプレイにフレーバーや史実の没入感をちりばめることにあるのだろう。というのは、私たちは現代の世界を形作ったさまざまな社会的経済的な力の物語を伝えたいのであって、特定の天才的な政治家や運命づけられた国家がどのように世界を我が物にしたかに関する物語を伝えたいわけではないからだ。しかしゲームからこうしたものを完全に排除してしまうのは誤った判断だと思う。

Q:運河の保有国は他国に対して利用を制限できる?

A:追加したい機能ではあるがまだ追加しておらず、発売時にお約束できるものではない。狭い海路の制御に関する仕組みを調査したいと思っているため、私たちがより整然としていて普遍的に適用できるものを作れるなら、これにほとんど影響がない運河だけの特別な仕組みを優先させたくない。

2022年3月2日追記

開発日記でのフィードバックを受けて、ゲームルールでモニュメントの効果を威信を生むだけのものにも変更できるようにしたようです。


来週は探検(Expeditions)とディシジョンについて。

次回:開発日記#35――探検とディシジョン

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コメント

  1. ゲームなんだし、モニュメントが多少魔法めいていても良い気がするけどな
    もちろん限度はあるけど

    • 自分はフレーバー要素やちょっとしたご褒美としてモニュメントはあって欲しいけど、eu4の一部のモニュメントは強すぎてモニュメント争奪ゲーになっちゃって没入感が損なわれてる感があるから、コミュニティに否定的な意見が目立つのも仕方ないかなと思いました。

    • 今まで徹底して経済学がうんぬん社会学がかんぬんの、ゲームらしくないリアル・現実路線のシミュレーションっぽさを出しておいて、いきなりゲームの極みみたいな魔法をお出しされたら反発の一つや二つされて当然だろう。

  2. 琵琶湖運河とか作るMOD出そう

  3. 教皇庁の影響力ボーナスは個人的に納得だし、あまりに強力……というよりそのモニュメント以外で代替できないボーナスみたいなのが無ければいいかな。まあそこら辺のバランス取りが一番難しいんだろうけど。

  4. オスマンが正教徒に妥協し、シーア派やゾロアスター教を弾圧したように政治力や経済力がある存在ならモニュメントとしてかは知らんが影響力を及ぼせるのはわかる(それでも国内の利益集団にしてはだめなのかしらん)
    だけどホワイトハウスの効果は、第一次世界大戦に勝利し占領地が増えすぎてあっぷあっぷのドイツがワシントンを割譲させた瞬間に行政能力に余裕が生まれるような魔法の展開になりそうで怖い

    • 質疑応答にあるように、影響範囲が北米全域なのか東海岸だけなのかわからないけど、
      地域限定されるなら問題なんじゃない

      フレーバー的にも「独立の象徴?」を失った政府は政治力を低下させるだろうし

  5. ホワイトハウスは単なる大統領官邸であって独立の象徴でも何でもないが
    必要に応じて改装されたり建て直される実用の行政のハコでしかない

  6. EU4での批判としては「とにかく因果関係が逆」というものだった。

    一つは「国が豊かになったから記念碑が建てられたのであって記念碑を建てたから国が豊かになる訳じゃない」というもの。首都や大学や港ならまだしも宮殿や寺院から強力なバフが入るのは不自然だし、ましてやわかりやすい報酬を得るために建てたり奪ったたりするのはゲーム的過ぎる。

    もう一つは「始めから特別とは限らない」というもの。例として姫路城は当時は沢山建てられた城の一つに過ぎず、後世に状態が良かったから世界遺産になっただけで、EU4のタイムラインで特別扱いされるのはおかしいという指摘。エッフェル塔もシンボル化するのは時代が下ってからだし、始めから世界遺産を狙うのは没入感を損ないかねない。

    • Koeiゲーで漠然と違和感あったけど、文字にされてめっちゃ腑に落ちた
      確かに今「世界遺産」であることと当時の感覚は全く無関係だもんなぁ

  7. そもそもホワイトハウスにしろエッフェル塔にしろそんな大それたものじゃない気がするのだがな
    特にホワイトハウスなんて単に大統領官邸ってだけなんだから
    当時のホワイトハウス如きが国家全体に特異な補正付けられるような代物なら、大英帝国全盛期のダウニング街10番地には更なる補正付けなきゃならんだろうに

  8. 効果が弱ければちょっとしたフレーバーとしてありだと思うが、EU4みたいに強すぎる効果があるようならちょっと興ざめだな

  9. CK3の金山みたいにその場所にしかありないもの、かつそこから手に入る利益が極めて直截なものであるなら納得感はある(金山があって金が手に入るし、金が手に入ったら色々役立つことを否定はできない)が、それ以外の記念碑的なモノだとどんなものまで含めるのか、そこから何を得られるのかを決めるのは難しそうだな。

  10. リヴァイアサンは実験だったのか・・・

    • EU4のMonumentsより前にCK2でGreat Worksが登場していたよ

      非史実を含めるなら更にその前にStellarisのMegastructuresがある

  11. やっぱりEU4のあの路線が嫌いな人も多かったのか
    パラドは冗談めかして「官僚機構乗数宮殿」とか「威信の塔」って言ってるけど、こういう名前にしてどの国でも建てられるようにしたほうがシミュレーション路線の人にはウケがいいんじゃないか?

    • エッフェル塔がフランスだけってなんの根拠もないし汎用的にしてもいい気がするな
      運河は幾つか候補地があって選べるとかあれば嬉しい
      そこまでいくと高望み感はあるけど

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