「Victoria 3」開発日記#21が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は外交上の駆け引きについて。本体発売前の開発日記です。
開発日記
開発日記#21は、外交上の駆け引きについて。
- 外交上の駆け引き(Diplomatic Plays)とはなにか? この質問に答えるため、開発日記#0のゲームデザインの4つの柱のひとつである「外交の卓越」にまでさかのぼろう。すなわち、「戦争は外交の延長線上にあるものであり、戦争で達成できることはすべて外交でも達成できるようになっているべきだ(時にはその外交が銃口を突き付けるものになるとしても)」というものだ。
- 銃口を突き付ける外交とはまさに外交上の駆け引きであり、戦争によって通常は達成できるあらゆる目標を、外交工作によって相手国に戦わずに強制することができる。これについて十分説明するため、外交上の駆け引きの仕組みについて、どのように始まり、どのように展開し、どのように解決されるかを順に述べていく。
外交上の駆け引きとして現在用意されている14種類の最初の一手は、それぞれ戦争目標と対応している。いつものように、緑の数値はその駆け引きが行える標的の数を示す。
- 外交上の駆け引きを開始する方法は、他のパラド社グランドストラテジーゲームで戦争を始める方法と同じだ。他国に要求するもの、例えば特定のステートの割譲要求などから始める。実際には他のグランドストラテジーゲームとは異なり、Victoria 3には要求するものを得るための「宣戦布告」ボタンはない。代わりに外交上の駆け引きを始め、戦争も常にその前に外交上の駆け引きを行う。
ケープ植民地が独立とイギリス市場の開放を要求したのは過大な要求であることがわかった。イギリスの要求はこの植民地国家の完全併合以外のなにものでもなく、ケープ植民地の現在の唯一の希望は自身の横柄さのために部分的な併合を受け入れるか、フランスと緊密に付き合って最善の結果に賭けるかだ。
- 外交上の駆け引きが始まると直ちにいくつかのことが起こる。まず対象となる国家には当然通知され、その駆け引きの潜在的参加国(Potential Participants)とみなされる国家にも通知される。潜在的参加国とみなされる国家は駆け引きの性質によって決まるが、通常は駆け引きが行われている戦略地域(Strategic Region)に関心(Interest)を持つ国家や、関与する強い外交的理由がある国家(同盟国や防衛側の宗主国など)が含まれる。
- この時点で重要なのは、首唱国(Initiator。駆け引きを始めた国家)と対象国(Target。標的となる国家)のみが能動的な参加国であり、その他の国家は参加する可能性があるだけだということだ。
- 次に、それぞれの側の主要な能動的参加国(最初は首唱国と対象国だが、どちらか一方の宗主国が駆け引きに参加した場合は変更され得る)が一定量の工作値(Maneuvers)を得る。これは主に国家ランクに依存する通貨で、高いランクの国家はより多くの工作値を持ち、駆け引きの間に行える「懐柔(Swaying)」や「要求(Demands)」のような、敵より優位に立つための行動を主要参加国がとれる回数を決定する。
- 外交上の駆け引きには3つのフェーズがあり、これは駆け引きが始まってから毎日値が増加していくエスカレーション(Escalation)のレベルに基づいている。最初のフェーズは序盤の手(Opening Moves)で、参加国が状況を把握し、最初の立場を決定し(詳細は後述)、対象国は主な要求(Main Demand)を設定する(首唱国の主な要求は開始された駆け引きの種類に応じて既に設定されている)。序盤の手のフェーズの間は主要参加国の宗主国以外の他国がどちらか一方に味方することはできない。また、どちらか一方が譲歩することもできない。
大清国の数分の一の軍事力しか持たないKokandの将来の独立には大きな疑問があるように見える。しかし、Kokandが清に対する自分たちの主張を支持するようSikhとロシア帝国を説得できれば、この駆け引きは相当複雑なものになる可能性がある。さらなる従属国を得ることは、50万人以上の人命が失われるかもしれない長い戦争のリスクに見合わないかもしれない。
- エスカレーションが一定の水準に達すると、序盤の手フェーズが終了して外交工作(Diplomatic Maneuvering)フェーズが始まる。この時点で対象国が主な要求を設定していない場合は自動的に決まる(通常は戦争賠償金(War Reparations))。これが外交上の駆け引きの「主要な」フェーズであり、エスカレーションスケールの大部分を占め、「行動」のほとんどはここで行われる。
- このフェーズでは潜在的参加国がそれぞれの陣営に対してどんな立場でも取ることができる。見返りを求めない全面的な支持(少なくとも攻撃的な戦争では、AIは自分たちの軍隊を慈善事業のために死なせることは好まず、ほとんどやりたがらない)から、特定の陣営に好意的だったり(これは彼らがそちらの陣営に懐柔される可能性が高いことを示す)、どちらの陣営にも特別な好意を示さずに単に中立の立場でいることまで、さまざまだ。
- また、どちらにも味方しない国家は中立の宣言(Declare Neutrality)を行って駆け引きから退出できるが、状況によっては外交上の影響を受けるかもしれない。
プロイセンにオーストリアが領有する西ガリシア・モラヴィア・ボヘミアのステートを提示するのは、こうしたステートが人口の多い国境のステートであるため、非常に喜ばれる。プロイセンの領土と接していないステートは管理が非常に難しいため、プロイセンにとってあまり魅力的でない。
- 外交工作フェーズは主要参加国が手持ちの工作値を使って要求を追加し、潜在的参加国を味方につけることが期待される時期でもある。序盤の手フェーズで要求を追加するために工作値を使うこともできるが、工作値を早い段階で使い切ってしまうと後になって大きく不利になる。
- 要求は本質的には戦争目標であり(駆け引きが戦争に至った場合は戦争目標となるが、詳細は今後述べる)、領土の割譲、請求権の放棄、従属国化など、さまざまな脅迫的要求が含まれる。主要参加国のみが要求を追加できるが、自国のために要求するのみならず、自国を支持する他国が同意するならその国家のためにも要求を行える。
- そうすると自国のためにできるだけ多くの要求を積み上げることに工作値を使うのがいいように感じるが、そうではない理由がいくつかある。第一に、特定の侵略的な要求(領土要求のような)を加えると必ず外交上の事件(Diplomatic Incident)が発生し、直ちに悪名(Infamy)を獲得し、駆け引きにおいて支持を得る必要がある国家との関係が損なわれる。
- 第二に、要求が強欲で理不尽だと思われるとそれだけで他国の支持を得るのが困難になる。実際、プレイヤーの狂った征服の夢を阻止するために、態度を決めかねていた参加国がプレイヤーと敵対するかもしれない。しかし、どんな理由でも実行されずに終わった要求や戦争目標による悪名は一部または全部が元に戻るが、関係に対する悪影響はそのまま残ることに注意してほしい。
- 一方で、懐柔は主要参加国が態度を決めかねていた参加国を味方につけるための主な手段であり、主要参加国が態度を決めかねていた参加国に約束をする。この約束は相手に責務(Obligation。詳細は今後の開発日記で述べる)を負ったり、駆け引きが戦争に至った場合の戦争目標を約束するという形式をとるかもしれない。
- このような約束はもう数種類検討している(例えば相手の保護国(Protectorate)になることを約束したり、自国の領土や従属国を引き渡すなど)が、まだ実装されていない。相手国が同意した場合、その相手国はその外交上の駆け引きにおいて懐柔した側についたとされ、戦争が起こった場合にはそちら側に味方して戦うことになる。
- しかし、例えばフランスが首唱国に肩入れして彼らに対抗できるほど強力な国家がいなくなったからと言って、駆け引きが終わったと考えるのは間違いだ。どちらか一方を支持すると約束した国家がその約束を破って未決定の状態に戻ったり、あるいは相手側がより魅力的な提案をしてきたために完全に寝返ったりすることはあり得る。
- このようなことをすると当然約束されていたものを失い、さらに裏切られた側との関係にも悪影響があるが、一方で1回の外交上の駆け引きにおいて1つの国家が寝返る回数に制限はない(しかし、AIはどうしても相手国の支持が必要でなければ、かつて見捨てられた国家になにかを提供することに消極的だ)。
- これはつまり、駆け引きの序盤に必要と考える国家すべてを懐柔しようと、すぐに工作値を使って「賢く立ち回ろう」とすると裏目に出ることがあるということだ。というのは、プレイヤーがなにもできないでいる間に相手側がプレイヤーの支持国を自由に「買収」しようとするからだ。さらに、自国の領土要求を率直に出さないこともリスクがある。先に懐柔してから後で「ところでロンドンも欲しい」というようなことをやると、自国の以前からの支持国は急いで距離を置こうとし、突然自国の支持国がいなくなるかもしれない。
- 外交工作フェーズの間の懐柔や要求の追加は実行されるとエスカレーションがしばらく止まり、このフェーズの終了間際にこの行動がとられたとしても、相手側は対応できる。
すべてのカードがテーブルの上に置かれたら、本当に勝てる勝負なのか、その機会のためにどれほどのコストを支払えるのかを慎重に判断しなければならない。もしかしたら損切りして停戦期間を獲得し、相手側に悪名を生じさせ、失った領土の請求権を手に入れ(領土についての駆け引きの場合)、失ったものを取り戻す(そしてそれ以上のものを得る)ための計画を立て始めたほうがいいかもしれない。
- 外交上の駆け引きの最後のフェーズは「戦争への秒読み(Countdown to War)」で、まさにその名のとおりだ。戦争への秒読みの間はどちらの側も国家が固定され、どちらか一方の支持の宣言や破棄を行えなくなり、新たな要求の追加や懐柔もできなくなる。このフェーズで唯一可能なのは譲歩(Backing Down)のみであり、戦争への秒読みは通常どちらかの側が負けを認めるフェーズだ(しかし譲歩は外交工作フェーズでも行える)。
- 譲歩とは非常に単純で、一方の側が勝算がないと判断し、相手側の主な要求を受け入れて損切りすることだ。重要なのはこの手段で受け入れられるのは主な要求のみであり、勝利側の支持国に追加されたり約束されたりしていたいかなる追加の要求も単に失われ(これによって発生していた悪名はすべて元に戻る)、敗北側のすべての要求も当然同様に失われる。
- これはつまり、場合によっては駆け引きを戦争にエスカレートさせる理由が実際にある(したがって相手側を勝ち目がまったくない立場に立たせないようにする)ということだ。というのは、戦争の重いコストを負担する意思がある(あるいは少なくともそう考えている)ことを前提とすれば、これは複数の要求/戦争目標を同時に強要できる唯一の方法であるためだ。エスカレーションメーターが100になるまではいつでも譲歩が可能であり、100に達した時点で外交上の駆け引きは終わり、戦争が始まる。
- Victoria 2をご存知の方はお気づきと思うが、外交上の駆け引きは「Victoria 2: Heart of Darkness」の危機(Crisis)の機能からインスピレーションを得ている。危機は私(注:Vic3ゲームディレクターのWiz(Wizzington)氏)が個人的に手掛けたもので、パラド社のグランドストラテジーゲームで特に面白い機能だと思っている。
質疑応答
Q:戦争が始まってから要求を追加することはできる?
A:できない。外交上の駆け引きがその結果として起こる戦争の可能性の範囲の強固な境界を設定するということが、このシステムの重要な機能だ。すべての参加国が事前にすべての可能な主張をしていることが前提となっており、これによってすべてのプレイヤーがその戦争の重要性を計算して判断できる。しかし、スクリプトによる効果を通じて戦争目標の追加は可能だと思うので、特別なイベントなどで適切なところにそうしたものを導入することはできるだろう。
Q:(注:最初の画像にある)「身の程を思い知らせる(Cut down to Size)」って具体的にどういうこと?
A:非常に悪名高い国家に対して使える戦争目標で、戦争目標が要求される20年前には領有していなかったすべてのステート(従属国含む)を放棄させる。基本的にはその国家が最近征服したものすべてを完全にはぎ取る。
Q:プレイヤーが首唱国でも対象国でもない場合、プレイヤーにとって外交上の駆け引きはどうなるの?
A:プレイヤーはAIとまったく同じルールで外交上の駆け引きに参加する。同盟のようなシステム上の理由で妨げられていない限りはどちらにも味方できる。
Q:他国を懐柔するために自国からなにか約束することはできる? 例えばKokandが清からの保護を得るためにロシア市場への参加を約束するとか。
A:ゲームの現在のビルドにはないが、ぜひ追加したいと思っている。独立と引き換えに保護を得るというのはまさに私たちが期待している動きだ。
Q:首唱国と対象国が同時に譲歩して現状を維持することはできる?
A:現時点ではできないが、外交上の駆け引きに現状維持に関する行動の追加を考えている。例えばおっしゃるような行動や、自国は戦争目標を強制しないと明言して国家を懐柔するなどだ。
Q:プレイヤーが第三国として外交上の駆け引きに参加していて戦争になる場合、どの土地が欲しいかを再交渉できる?
A:逆懐柔(「Xのために貴国に味方する」ということ)は現在は存在しないが、リリースまでに追加したいと思っている。
Q:外交上の駆け引きが「解決」すると停戦状態になるの?
A:譲歩すると停戦状態になる。今のところ停戦はシステム的なブロックになっているが、(大きな悪名/外交上のペナルティで)停戦破りができるようにすることを検討している。
Q:弱いAIはどれくらい簡単に譲歩するの?
A:要求が国家の終わりではなく、戦争に勝てないと考えられる場合、AIは一般的に譲歩するはずであるということを目指している。
Q:では従属国の併合は必ず戦争になるということ?
A:従属国がAIならそうはならない。このような状況ではAI国家は実際に合理的に行動でき、犠牲者が多すぎることが明らかな場合には併合を認める。
Q:Victoria 2では「国家の解放(liberate country)」という開戦事由があったけど、これと同じことを可能にする外交上の駆け引きはある?
A:現在は戦争目標として存在しないが、リリースまでに外交上の駆け引きとして実装する予定だ(UX面で設定が若干難しいため、まだ実現していない)。
Q:従属国が外交上の駆け引きを行えるというのは、つまりAIカナダが「イギリスは強いし味方してくれるだろうからアメリカに駆け引きを仕掛けよう!」となるの?
A:従属国の種類による。自治領や保護国のようなより独立性のある従属国は自身で駆け引きを始めることができるが、当然宗主国はこうした駆け引きに協力する義務はない。
Q:じゃあ傀儡国や属領(territories)は独立の駆け引きはできないの?
A:独立の駆け引きはすべての種類の従属国が行える。
Q:同時に複数の駆け引きを行うことはできる?
A:できる。稀だが、時には異なる駆け引きで自国とある他国が共同交戦国となると同時に互いの敵国となる矛盾が生じることがある。これは明白な理由により認められないため、この場合は第一の駆け引きが戦争に発展した段階で第二の駆け引きの立場が無効になる。
Q:政体を変える要求はないの?
A:政体は法律の機能で、「奴隷制の禁止」や「市場開放」は他国に法律を強制する駆け引きの例だ。「君主制の廃止」についての駆け引きも同様に機能することになる。私たちは他国に強制できる法律を現在の2つ以上に増やすことはすぐには考えていないが、ロードマップには確実に入っている。
来週は戦争について。
コメント
翻訳ありがとうございます
複雑だけどかなり面白そう
これ別のタイトルに輸入してもいいんじゃないかな、Stellarisとか
すごいいい
いい…(語彙喪失)
いい感じだな
あとはAIがどこまで扱えるかってとこだ
本文にも書いてあるけど、Vic2の危機システムを全部の戦争の開戦準備に当てはめたんだね。すごい面白そう
めっちゃ楽しそう!
これはいいな。パラドゲーの革新的要素になりうる。
じっさい戦争になるかどうかってグズグズした駆け引きがあるもんだし
これは面白いと思う
めっちゃいいシステムだけど、
普仏戦争みたいに、圧勝出来ちゃったから領土も貰おう。みたいな事は出来ないのか…そこは残念。
あともう一つ懸念点があるとすれば、プレイヤーが操作する大国が弱小国相手に要求するのにもこの長い手続きが必要なら、終盤の消化試合と化した時はだいぶ面倒くさそうって点かな。
今更だけどプレイヤー側があまりにも強力なら外交工作フェーズの早期で相手が譲歩してくれるんじゃない?