「やる気はあるけど、覚えることが多すぎてやっぱりHoI4は難しい」という方向けに、段階を踏んで少しずつ内容を理解できるようにしようという解説記事の続きです。今回はその他の要素について。
最終更新時のバージョン:1.9.3
前回:基礎から学ぶHearts of Iron IV――生産について
はじめに
購入や日本語化Mod導入などから知りたいという方は、以前公開した初心者向け記事「ゼロから始めるHearts of Iron IV」をご覧ください。なお、本記事はこの記事の内容がひととおり理解されていることを前提としています。
前回は陸軍ユニットの作成を起点に、生産・建設・貿易について見てきました。今回は貿易ルートを守る手段としての海軍と空軍、軍や生産を強化する手段としての研究、最後に戦争開始の引き金となることが多い国家方針について触れて、本記事シリーズを締めたいと思います。
今回のまとめ
- 貿易で使用する海上交通路を守るのが海軍の役割
- 「打撃部隊」任務と「哨戒」任務を使うことで敵の海軍部隊を捜索・撃破できる
- 海軍(と空軍と陸軍の一部)は燃料を消費するため、ゲーム中で常に気を配る
- 空軍は海上交通路の保護や陸軍の支援を行える
- 研究によって陸海空軍や生産・建設に関する能力を向上させることができる
- その国家に一定の決まったゲーム展開もたらす国家方針ツリーによって、戦争や陣営加盟といった外交の進展や工場建設・研究開発など多岐にわたる利益を得ることができる
海軍
HoI4では海軍の勝敗が戦争の勝敗に直接結びつくことはほとんどありませんが、資源を海上を経由して輸入している場合や海外に陸軍を展開しようとする場合(味方だけでなく敵がそうである場合も同様)には重要性を帯びてきます。つまり、海上交通路の支配権を獲得するのがHoI4における海軍の役割です。
ここでは艦隊と任務部隊の関係と、差し当たって敵海軍部隊を捕捉・撃破するのに必要な「打撃部隊」任務と「哨戒」任務についてのみ簡単に取り上げます。海上貿易路を守ったり攻撃したりする任務もありますが、結局は敵の海軍部隊を撃破できれば少なくとも海からの脅威は排除できるためです。
艦隊と任務部隊
「Rengo Kantai」が艦隊、「Honbu Kantai」が任務部隊、「Nagato」「Mutsu」などが艦艇。海軍司令官を割り当てることができるのは艦隊のみ。
HoI4では、複数の艦艇をまとめたグループを任務部隊、複数の任務部隊をまとめたグループを艦隊と呼び、任務部隊ごとに任務をひとつ割り当てることができ、艦隊ごとに担当海域を割り当てます。海軍司令官は艦隊にのみ任命でき、任務部隊には司令官は設定できません。
「打撃部隊」任務と「哨戒」任務
「打撃部隊」任務は敵任務部隊の撃破、「哨戒」任務は敵任務部隊の発見・捕捉を目的とするものです。この2つの任務は同じ艦隊に所属する任務部隊にそれぞれ割り当てて使用し、哨戒任務で敵任務部隊を発見・捕捉すると、打撃部隊任務を帯びた任務部隊が母港から出撃して敵任務部隊を撃破する、という動作をします。
戦艦Nagatoを選択している状態。ここで右の艦隊・任務部隊一覧からNagatoを配備したい任務部隊(ここでは47と数字が出ているアイコン)のアイコンの上で右クリックすると、Nagatoがその任務部隊に編入される。
まず、「打撃部隊」任務を行う任務部隊には空母や戦艦などの主力艦を中心とした艦艇を、「哨戒」任務を行う任務部隊には高速で索敵能力の高い艦艇(軽巡洋艦や駆逐艦など)をそれぞれ配備します。艦艇の任務部隊への配備は、艦艇を選択して配備したい任務部隊に右クリックすればOKです。
海戦は参加している艦艇の構成によって戦闘効率が大きく変わりますが、「打撃部隊」任務を行う任務部隊は空母と主力艦(戦艦・巡洋戦艦・重巡洋艦)と直衛艦(軽巡洋艦・駆逐艦)の比率を1:1:61(空母を入れない場合は1:3)に近づけるようにします。「哨戒」任務を行う任務部隊は少数の直衛艦のみで構成します。
空母や戦艦を中心とした任務部隊に「打撃部隊」任務を割り当て、艦隊の担当海域を設定しているところ。「打撃部隊」任務の左隣は「哨戒」任務。
任務部隊が編成できたら、「打撃部隊」任務を行う任務部隊と「哨戒」任務を行う任務部隊を同じ艦隊に入れ、任務部隊に任務を割り当てた後、その艦隊の担当海域を右クリックで指定すれば、その艦隊の任務部隊の活動が始まります。
燃料
海軍は活動するのに常に燃料を消費します(空軍や陸軍の戦車部隊や自動車化部隊なども同様)。燃料は自国領土内から産出されるか輸入してきた石油資源から生産され、国内に存在する建造物「燃料サイロ」で備蓄量上限が決まります。
燃料がなくなると燃料を消費する部隊は活動できなくなり、軍事行動に多大な支障をきたすようになるため、必要なら輸入を増やしたり、消費を減らすなどの対応を行う必要があります。画面上部の燃料インターフェースでは備蓄がなくなるまでの期間(備蓄が増加している間は上限に達するまでの期間)が表示されるので、こまめに確認しておきましょう。
一般に、空母や戦艦など「打撃部隊」任務部隊に入れるような大型艦は燃料消費が非常に大きく、「哨戒」任務部隊に入れるような駆逐艦などは消費量が少なく設定されています。そのため、空母や戦艦のいる任務部隊に「哨戒」任務を与えると、あっという間に燃料を食いつぶすことになります。空母や戦艦は「打撃部隊」任務を行う部隊に入れていざというときのみ活動するようにし、燃料を節約しましょう。
空軍
敵が艦艇によって海上交通路を脅かしてくる場合は海軍によって対応することができますが、空軍によって脅かされる場合もあります。そういった場合はこちらも空軍を用意して敵航空戦力を無力化する必要があります。逆に、こちらが空軍によって敵の海上交通路を攻撃することもできます。
また、地上でも航空優勢を確保して航空支援を行えば陸軍が効果的に戦えるようになります。「戦争に勝つ」という観点から考えると、むしろ空軍が重要なのはこちらの意味においてでしょう。
空軍は陸海軍のような部隊階層はありません。また、航空機の種類によって行える任務が変わります。航空優勢を確保する「制空」任務と敵航空機の活動を阻止する「迎撃」任務は戦闘機と重戦闘機が、地上部隊を支援する「近接航空支援」任務は近接航空支援機と戦術爆撃機が、海上の敵の輸送船や海軍部隊を攻撃する「海軍攻撃」任務は対艦攻撃機・近接航空支援機・戦術爆撃機がそれぞれ行えます。他にも任務はありますが、よく使うのはこの4つの任務でしょう。
航空隊を選択して行いたい任務を選択(複数選択可)した後、その任務を行う空域を右クリックすれば任務が始まります。航空隊が任務を行える空域はひとつだけです。
陸戦が行われているところでは「制空」・「迎撃」・「近接航空支援」任務を、敵海軍や敵の輸送路があると思われる場所では「制空」・「海軍攻撃」任務を、敵空軍に味方海軍や輸送路を攻撃されているところでは「迎撃」任務をそれぞれ割り当てていきます。
研究
ここまで陸軍、生産、海軍、空軍について説明してきましたが、戦闘能力の改善、新しい装備・兵種の開発、生産効率の改善などは、すべて研究を進めることで行うことができます。
画面左上の三角フラスコのあるボタンを押すと研究スロット画面が開くので、そこで空いている研究スロットをクリックします。そうすると研究項目画面が開き、ここで研究したいもののアイコンをクリックすると、研究が始まります。研究は一定時間経過すると完了し、研究項目のさまざまな効果を得ることができます。
基本的には状況に応じてその時に必要なものを研究していくのが結局は一番いいと思いますが、装備は研究した後に生産しないと実際の効果は発揮されないので、ボーナスを獲得する技術よりも装備研究を先にしたほうがいいでしょう。また、生産効率が高ければより早く新たな装備を前線に配備できるわけですから工業技術の優先度も高くしたほうがいいように思います。計算機技術は研究速度自体を速める効果があるので、これも優先して研究していいでしょう。
国家方針
HoI4には外交活動を行うタブが存在していますが、実際の戦争や陣営加盟は外交タブではなくこの国家方針ツリーに従って行われることがほとんどです。国家方針ツリーは外交以外にも国内政治・工場建設・研究開発などさまざまな要素に影響を与え、その国家に一定の決まったゲーム展開をもたらしています。国家方針ツリーのどのルートを選ぶかによって自国のイデオロギーを選択でき、選択したイデオロギーによってゲーム中で戦争する相手・味方となる相手がおおむね決まります。
国家方針ツリーは画面左上の国旗をクリックして開く政治画面の右上にある「国家方針を選択」というボタンをクリックすると開きます。ツリー上で選択できる国家方針を選び、決まった期間(通常は70日)が経過すると国家方針が完了し、その国家方針の効果を得ることができます。
国家方針は好きなように選んで問題ありませんが、取り立てて優先すべきものがなければ研究枠が増える国家方針を早めに取りに行ったほうがいいでしょう。
今回のまとめ
- 貿易で使用する海上交通路を守るのが海軍の役割
- 「打撃部隊」任務と「哨戒」任務を使うことで敵の海軍部隊を捜索・撃破できる
- 海軍(と空軍と陸軍の一部)は燃料を消費するため、ゲーム中で常に気を配る
- 空軍は海上交通路の保護や陸軍の支援を行える
- 研究によって陸海空軍や生産・建設に関する能力を向上させることができる
- その国家に一定の決まったゲーム展開もたらす国家方針ツリーによって、戦争や陣営加盟といった外交の進展や工場建設・研究開発など多岐にわたる利益を得ることができる
今回でHoI4の基本的な要素にはすべて触れたことと思いますし、当サイトの初心者向けではないガイド記事やWikiなどを読んだときになにを言っているかなんとなくわかるというレベルになれたのではないかと思います。
実を言うともっと長いシリーズにして繰り返し何度も少しずつ各要素を深掘りしていく構成にしたかったのですが、その間にまた大規模アップデートが来てやり直しということになりそうだったので、路線変更して要点のみを簡単におさえる記事としました。新たに始める方やギブアップから復帰しようとする方の参考になれば幸いです。
コメント
復習するつもりで拝読させていただいておりますが、今さらながら「ああ、そうだったのか」と思うこともしばしばで助かっています。
初心者向けとなっていますが、ビギナーを脱して中級クラスかなと思う自分にも有り難い企画ですので、大変かと存じますが続けてくださると幸いです。
リクエストということでもないんですが、諜報についても執筆くださればと思います。
LaR導入してしばらく経つんですが、今ひとつ諜報がピンと来ない面があります。
各種作戦や任務が実戦や政治活動に於いて、どれだけ効果が出ているのか実感がないです。
他にもひとつ疑問だったのは、諜報部門がグレードアップしても諜報員募集が全然かからない。
これってなぜですかね?
https://simulationian.com/2020/03/hoi4-v190lar-review2/
諜報についてはLaRリリース後にこういう記事を公開していました。こちらもぜひご覧ください。
暗号解読が一番わかりやすいと思いますが、暗号解読や解読情報を使用することで戦闘にボーナスがつくというのは戦闘画面のツールチップなどから確認できます。
諜報員を使った活動も、外交タブの情報録画面から、例えばイデオロギー支持工作なら相手国の支持政党の変動量がわかると思います。
アップグレードしても募集がかからないというのはどういう状況かによりますが、まずアップグレードで得られる諜報員枠はアップグレード5つで一人までだったはずです。これも獲得できないとなると、ゲームファイルが壊れているかModの影響ではないでしょうか。
とても細かく丁寧に説明されていて、驚きました!こんな記事があったのか、と。本当にありがとうございます。
リクエストですが、もし良ければ続けて頂けませんでしょうか。私もhoi4を購入したのですが、かなり複雑で、周章狼狽しています笑一時期は、放置していました。
主さまは非常に高い記述力をもっておられるようで、とても分かりやすく、ここほどの記事はありませんでした。自分都合な依頼ですが、こうやって1から全て説明してくれるのは珍しいですし、多くの人に役に立つと思います。
自分でもいろいろと調べているのですが、①海軍の編成の比率が至るところで食い違っている(1:1:6とか、1:1:3だとか)②師団の編成?大隊ですかね?をどうえうればいいのかわからない。(支援中隊とか、何言ってんだ?)③空軍の詳しい運用方法(1空域に上限はあるのか?空軍運用に特別な技術はあるのか?等)④包囲殲滅ってどうやってやるの?⑤軍の編成を決めるとき、何を前提に考えるか。⑥戦車、大砲、兵士等、どれくらいの比率で生産すべき?等、未だに疑問が幾つか残っています。また、一つ、これまた自分都合な依頼ですが、①について、船の数の具体例を挙げて頂けませんでしょうか。
ご覧いただきありがとうございます。お役に立ったようで記事を書いた甲斐がありました。
https://simulationian.com/2019/07/hoi4-navy-v171/
初心者向け記事ではありませんが、1の海軍の構成について詳しくはこちらの記事をご覧ください。なぜ1:1:
36としているかの根拠と具体的な数を挙げています。2021年2月17日追記:いまさらな修正ですが、空母+主力艦に対して3倍の直衛艦なので1:1:6が正しい比率ですね。混乱させてしまったようで申し訳ありません。
2・5・6についてはどの国家を選んだかやどういうことをやりたいかによるので、一概にこれが正解というのは言いにくい内容ですが、どう考えればいいかという記事を出していければと思います。
3については特に制約や特別な技術というのはありません(少なくとも私が承知している限りでは)が、空軍についてもなにか記事を書いていければと考えています。
https://simulationian.com/2019/06/hoi4-beginner-production/
6の生産についてはこちらの記事に考え方をまとめてありますのでご覧ください。
https://youtu.be/rt-xCYY6PdY
4についてはこちらの動画をご覧ください。丁寧に解説されていてわかりやすいと思います。
わざわざ返信有難うございます。ホントに初心者なので多少理屈ハズレなことを言うかもしれません。申し訳ありません。
アメリカでプレイしようとしているのですが、空軍で、①日本相手に、どれほどの機体数を1941、12まで用意しておくべきか、また、②それぞれの種類のうち生産不要な機体はあるか、そして③どれほどの比率でそれぞれの機体を用意するべきか、教えていただけると嬉しいです。
そして、これらを判断する目安がありましたら、できるだけわかりやすく教えてください。
あと、④一空域に機体数の限界はありますか?
⑤空軍の運用作戦で、次のうち、どちらがお勧めですか?(複数でしょうか?)
1、軍に全ての戦闘機(制空)cas、戦術爆撃機(近接航空支援)をつけてしまう
※もし1であれば、どれほどの比率でそれぞれの軍に付けるべきでしょうか。
目安があればご教示下さい。
2、陸軍が戦闘している空域と、爆撃機を飛ばす相手の空域に飛ばす
※もし2であれば、複数の空域で陸軍が戦闘している場合、師団の何を目安に航空機の比率を考えるか、具体的な数値や場合を交えてご教示下さい。また、爆撃機はどれほどの数が工場数に対して適切でしょうか。目安をご教示下さい。
⑥海軍について、戦争中は艦船は製造せず、全部の造船所を修理に使うの?(理屈ハズレかもしれません。お許し下さい。)
あと、理論家についてですが、主様でしたら誰を雇いますか?あと、技術について、陸軍、空軍ドクトリンのうち、どれがお勧めでしょうか。
あと、初心者にお勧めなmodとかございましたら、是非ご教示下さい。
また、戦争前にどの航空機技術まで到達しているのが望ましいのか、それぞれの種類の機体の場合をお願いします。連打申し訳ありません。
どこでプレイするにせよその国家でなにをやりたいかに合わせて航空機とその他の装備の生産割合を変えるので、なにを何機作る必要があるかというのはそれによって変わります。
どんなプレイでも自分が戦う空域で航空優勢をとれるくらいの戦闘機は必要でしょうから戦闘機は多めにして、あとは太平洋で日本と戦うなら海軍爆撃機を作るでしょうし、ヨーロッパでドイツと戦うなら戦術爆撃機ほどの航続距離より近接航空支援機の支援効果のほうが有効でしょうから近接航空支援機を作ると思います。
空域の機体数の限界は先の返信でも書いたように少なくとも私が承知している限りではありませんが、もしかするとあるのかもしれません。
軍に航空隊をつけるかつけないかというのはやりやすいほうでいいでしょう。飛ばす機種の比率は航空優勢が取れる程度の戦闘機があればあとは必要に応じた航空機を飛ばします。敵海軍を撃破したいなら海軍爆撃機を飛ばしますし、陸戦の支援をしたいなら近接航空支援機や戦術爆撃機を使うことになるでしょう。
海軍は修理が必要な艦船があるなら私は修理を優先しますが、常に修理が必要な艦船があるわけではないでしょうからもちろん建造も行います。
Modはトラブルがつきものですし、初心者の方はあまりあれこれ入れないほうがいいと考えています。慣れてきたら興味のあるものを少しずつ入れて遊んでいくのがいいのではないでしょうか。
私の場合は最初からどの航空機を何機作るというような具体的な生産目標をがっちり決めてしまうのではなく、
その国家でどういうプレイがしたいか
→そのためにどういう戦力が必要か
→その戦力を揃えるにはなにを生産するか
という考え方で生産物や工場の割り当てを決めています。理論家、ドクトリン、技術もすべて同様です。
“空母と主力艦(戦艦・巡洋戦艦・重巡洋艦)と直衛艦(軽巡洋艦・駆逐艦)の比率を1:1:3″は1:1:6の間違いですね
修正しました。ありがとうございます。