「Victoria 3」開発日記#93が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回はオープンベータでの軍事の改良について。1.4・1.5オープンベータリリース前の開発日記です。
前回:開発日記#92――企業
開発日記
開発日記#93は、オープンベータでの軍事の改良について。
- 開発日記#91で述べたように、私たちは8月28日(1.4アップデートリリースと同時)から晩秋の1.5最終リリースまでオープンベータを実施する。この間に3週間のスプリント計画に合わせてオープンベータブランチに少なくとも2回のアップデートを行う。
最初のアップデートの見込み
- 8月28日の最初のリリースでは新機能は初歩的な状態で、インターフェースやグラフィックにはプレースホルダーが多く、システムの詳細の欠落もある。多くの機能は悪用可能でバグが多く、バランスが取れていない。一部の機能はAIが使ったり使わなかったりする。手を入れていないゲームの中核部分は引き続き機能するはずなので、経済や政治に着目した遊び方では大きな影響を受けることはないはずだが、軍事作戦が不満足なものになったり、煩わしかったりするかもしれない。このアップデートを試してみようとするなら、新機能がそのとき素晴らしいかどうかではなく、どのような追加やバランス変更が新機能を面白くするかというフィードバックに注目してほしい。
2回目のアップデートの見込み
- 9月中旬を予定しており、この頃には新機能がより成熟し、バグ、情報の不足、グラフィックが補われ、システムの詳細が詰められてエクスプロイトを封じ、新たな最適化の問題がもたらされ、さらなる付加機能が利用できるようになっているはずだ。このベータ版を試してみる場合は前述の考慮事項に加えてバランスとUXの改善にも注目してほしい。
3回目のアップデートの見込み
- 10月中旬を予定しており、すべてが計画どおりならこの時点で1.5のすべての機能が完成する。これはすべての準備が整ったという意味ではなく、ここから最終リリースまでにバグ修正、バランス調整、フィードバックへの対応に時間をかける。このアップデートを試す場合は新機能を使ったプレイにどのような面白さがあるかに注目してほしい。
オープンベータの利用方法
- steamライブラリで「Victoria 3」を右クリックし、「プロパティ」を選択、「ベータ」をクリックし、「ベータへの参加」のドロップダウンメニューから1.5オープンベータを選択する。
軍事に関する改善
- 軍事について自己効力感・深み・ビジュアルの3つの領域で改善しようとしている。
- 自己効力感とはプレイヤーが軍事作戦を制御できると感じる度合いを指し、プレイヤーに自己効力感を与えるのと同じく自己効力感の欠如を感じさせないことも重要だ。例えば将軍より多くの戦線を管理すること、制御も予測もできない戦線の分割、将軍が突然本国に戻ってしまうことなどだ。
- 深みとは詳細さと現実らしさの両方を指し、さらなる軍事に関する特性や設定、史実から予想されるような構成や振る舞いをする軍や艦隊、戦時中のより興味深い意思決定だ。
- ビジュアルは私たちが社内で「マップ上の小さな男たち」と呼ぶもので、軍隊が活動中・移動中であることを確認でき、すべてのものを具体的な場所に配置できるものだ(これは自己効力感にも寄与する)。
共有戦線
実装はかなり複雑だが、名前どおりの直感的なプレイができる。例えばバイエルン・ヴュルテンブルク対ヘッセン・フランクフルト・バーデンの場合、現在のバージョンでは戦線が4つになる。
- 現在のバージョンの問題のひとつは、いつでも非常に多くの戦線に対処しなければならないという点だ。多くのプレイヤーから戦争を細かく管理しなければならないと指摘されており、これは第一に「Victoria 3」では手のかからないシステムを作るという設計上の目標に反している。戦線の数を減らすこと、特に多くの国家が関与する戦争でより管理しやすい数にするのは、大きな優先事項だ。
- 最初の解決策は複数の同盟国間で隣接する戦線をひとつの戦線にまとめることだ。これで開戦時の戦線数を大幅に減らせる。
ステート単位の戦線移動
これに合わせて戦線と接続しない戦闘もできるようになり、ステート全体を獲得するまで国境のプロヴィンスのみを繰り返し攻撃することはない。現在のビルドではプロヴィンスはステート内のプロヴィンスからランダムに選ばれるが、オープンベータでは既に獲得した占領地に基づいてより奥深くのプロヴィンスが選ばれるようにする予定だ。
- 2つ目の解決策はステート単位の戦線移動だ。ほとんどのプレイヤーにとっては戦争中の予期しない戦線の分割・統合がより大きな問題だが、この機能によって戦闘終了後になにが起こるかわからないという不確実性がなくなり、「一時的な」戦線の数が激減する。
- これは次のように機能する。戦闘はこれまでと同様にプロヴィンスで戦われるが、勝利したときに一定数のプロヴィンスを占領するのではなく、そのプロヴィンスが属するステートの一部を占領する。一度に占領できるのはひとつのステートのみで、ステート全体を占領して初めて戦線が実質的に移動する。
新たな戦闘結果と占領コストの詳細の例。Piratiniはステートの87%を占領できるはずだったが、バグにより10%しか占領できていない。
旗は最初のオープンベータビルドにはないが、ステートの占領状態を視覚化する手段のひとつだ。
- 戦闘が終わると勝者は戦勝スコアを獲得する。現在は一律の値だが、最終的には勝利の規模に応じた条件付きのものに変更される。戦勝スコアは勝者のステート内における占領に割り当てられる。現在のバージョンでは戦闘に勝利したときに得られるプロヴィンス数は勝利の規模、前進する将軍の能力、ランダム性による。1.5では戦闘によるステート内の占領数は戦勝スコアと「占領コスト」の比較で決まる。占領コストは以下のような要素からなる。
- ステートの人口
- 険しい地形のプロヴィンス数
- 戦域の規模に対する防衛側の戦域内に残っている動員された大隊数
- 戦勝スコアと占領コストはどちらもUIに表示され、スクリプト可能・改造可能だ。オープンベータ期間中にみなさんからのフィードバックでこの2つを調整する予定だ。
- この機能をテストしてわかったのは、新たな戦線が突然現れるのを制御するのみならず、特定の戦争目標を支配しているかを判断するのが容易になったということだ。将来的にはこれに関連した新たなシステム、例えば戦争中に占領したステートの経済的搾取などを追加したいと思っている。
- ステート単位の戦線移動は主に戦争中に出現する戦線数を制御し、予測する手段だが、将来的にはステートの占領と経済や軍隊の補給など、他のゲームシステムを関連させて拡張することも検討している。
- ひとつの戦線における複数の戦闘は最初のベータリリース時にはない(その後のアップデートで実装予定)が、私たちがこれに関して計画している実装とバランスは、同時にひとつの戦闘/戦線/ステートに限るというものだ。つまり、プレイヤーは特に長い戦線において敵より多くの将軍を置くことでのみ恩恵を得られる可能性があり、それも防衛部隊を数で上回る場合のみだ。
軍隊の編制(Military Formations)
- キャラクターはプレイヤーが操作する軍事ユニットの入れ物としては静的すぎるし、短命すぎる。司令官は多すぎると見分けがつかなくなるが、数を制限すると軍隊の調整や人の割り当てがやりにくくなり、イライラさせられる。ゲームプレイを優先して制限をしない場合は、司令官一人ひとりに命令をしなければならないという問題にもぶつかる。さらに、突然死亡したり、特別なイベントで突然解任されることもある。1.3ではこれに対処するために新司令官の野戦昇進を導入したが、キャラクター以外の入れ物に軍隊を入れればこの問題は完全に解決できる。
- 現在のシステムのもうひとつの問題は、施設のみが軍隊をカスタマイズできるという点だ。これは多様で能力のある軍隊を作る上で面倒だし、直感的でもない。
- 軍隊の編制は司令官と戦闘ユニットの入れ物を提供し、プレイヤーはいくらでも編制を作ることができる。それぞれ好きなだけ司令官を配置することもでき、編制間のユニットや司令官の移動も自由にできる。設計の意図はプレイヤーの主体性を必要とする一種の実体を提供することだ。また、後述するように司令官や施設よりも優れたカスタマイズのプラットフォームにもなり、深みを加える。編制に含まれる見た目によってマップやUIで軍を視覚的に表現する機会も増える。
戦闘ユニットの種類
さまざまな種類の歩兵にさまざまなユニット群を追加する。陸軍では歩兵・砲兵・騎兵、海軍では小型艦・主力艦・支援艦艇だ。
- 編制では特定の種類のユニットを好きに組み合わせることができる。1.5では例えば散兵5個大隊、戦列歩兵10個大隊を雇用したい場合、そのユニットに関連して建設された兵舎はその比率を保つ。これは軍隊の編制の範囲内でユニットを作ることで機能するもので、施設を直接拡張するわけではない。軍隊に関することはすべてまず軍隊の編制を通して行い、キャラクターや施設は既存のゲームシステムを機能させ続けるために軍隊の編制を支える存在となる。
- この方法で編成されたユニットは特定の場合にアップグレードできる(最初のオープンベータではできない)。戦列艦を装甲艦にアップグレードすることはできるが、装甲艦を戦艦のような異なる艦船にアップグレードすることはできない。
動員のオプション
これは最初のオープンベータリリース時点でのオプションのリストだが、最終版ではないし、バランスも調整されていない。
- 動員に関する不満はバランスを取るのが難しい点だ。将来の戦争のために採算の取れない銃や弾薬の輸入貿易ルートを維持しなければならないのは、いいように聞こえるがやりすぎに感じることもある。動員のオプションでは出征の際に与える商品をカスタマイズできるようにするもので、コストの増加と引き換えに強力な効果をもたらす。コストと効果の両方が適用されるのは 動員されているときのみで、動員のオプションを変更できるのはその編制が動員されていないときだけだ。
- 動員のオプションではこの編制にどのような行動をさせたいか切り替えることもでき、例えば強行軍(Forced March)は移動速度を高めるが士気低下量が増える(このペナルティは豪勢な補給(Luxurious Supplies)などで相殺できる)。鉄道輸送(Rail Transport)は強行軍と相互排他で、士気損失はないが鉄道技術と商品「輸送」を必要とする。
早期復員
早期復員は戦争の中で動員オプションのコストが高すぎたときに、再設定のために復員させる選択肢ももたらす。
- 早期復員は1.3.6で追加されたが、復員前の商品コストに応じた一定額のコストが国家に課されるのみという陳腐なものだった。私たちは必要なら戦争中に軍を復員させることができるようにし、復員を行うとまず軍が本国に帰還し、その後4か月の復員期間があり、その期間中に動員時の補給コストが徐々に減少する。
司令部への駐留
沿岸の司令部ならどこでも艦隊を駐留させることができる。オープンベータでは駐留させるための海軍基地が必要だ。
これによって差し迫った上陸作戦に対する防衛のために軍を移動させることもできる。
- 軍隊の編制は軍でも艦隊でも司令部に作成されるが、そこに駐留し続ける必要はない。戦闘ユニットの編成地に応じて補給コストが増えるのを厭わないなら、戦争時の同盟国や占領地なども含めた別の司令部に配置転換できる。
具体的な場所
最初のオープンベータでは移動は直線のみだ。このGIF画像では軍がMaranhão Pará戦線からMaranhão Rio Grande do Sul戦線に移動し、最終的に復員時にはリオ・デ・ジャネイロの司令部に戻っている。
オープンベータでは編制は道路・鉄道・航路を通って目的地まで移動する。この画像ではスウェーデンのÖrebroからフロリダ州のTampaまで軍が移動する経路を示している。イギリスを通過しているのは経路設定で通行権や移動時間を考慮せず、移動距離のみを考慮しているためだ。私たちが経路設定に対する作業を完了した後でも一旦上陸して陸路を通り再び海路を使うことはあり得るが、一般には回避される。
- もうひとつの私たちの不満は軍隊の具体的な場所がないことだ。オープンベータでは編制が常にマップ上に具体的な場所を持ち、リアルタイムで編制が移動するのを確認できる。
編制間の司令官とユニットの移動
異動ポップアップのゲーム内モックアップ。現在は最初のオープンベータリリースに向けて実装しようとしているところだが、9月のアップデートまで完全に機能しないかもしれない。また、司令官とユニットを2つの編制間で行き来させられるような2面の画面など、さらなる強化も検討している。
- 複数の司令官を持つ編制を作っている場合、戦線で編制を分割するのは簡単に行える。司令官の一人を右クリックして「分割」すれば、その司令官の指揮上限に比例した数のユニットとともに同じ構成の新たな編制を同じ場所に作る。「異動」ポップアップを開いて移動させたい司令官とユニットを選択し、異動先の編制を選択すれば、より正確に調整することもできる。異動先の編制が別の場所にある場合、一時的な編制が作成されて異動先に向かい、自動的に異動先に合流する。
名称とアイコンのカスタマイズ
開発中の編制表示カスタマイズ画面。パターンセクションにはアイコンのリストが、色セクションにはパレットが表示される。
- 編制作成時には主要文化・種類・同じ種類の他の編制の数に基づいて名称が選択されるが、この名称は好きなように変更できる。オープンベータの後のリリースでは編制アイコンのシンボルと色も変更できるようになる。
上陸作戦の見直し
最初のオープンベータリリース時には上陸作戦に割り当てられる編制は1種類あたり1編制のみだ。その後のアップデートで1種類につき複数の編制を割り当てられるようにする。
- 上陸作戦は編制か軍事レンズから開始できるようになった。現在のバージョンと同じく目標のステートを選択するが、そのときに参加する編制も選択する。オープンベータではこの画面に上陸ペナルティなどの成功可能性に関する情報も表示する予定だ。
- 上陸作戦を承認すると選択された編制は目標ステートの沖合にある海上ノードに移動する。上陸する軍と支援する艦隊がどちらも到着すると上陸作戦が始まる。ステートが完全に占領されると戦線が作成され、上陸作戦は完了する。上陸作戦中に支援艦隊が敵艦隊の攻撃を受ける可能性があるが、海戦に敗北すると上陸作戦は失敗し、どちらの編制も帰還する。勝利しても大きな損害を受けた場合は、艦船が補充されるまで上陸作戦に大きなペナルティがつく。オープンベータ期間中には、進行中の上陸作戦にさらに編制を追加できるようにすることも検討する予定だ。
- この変更により、上陸作戦では制海権がより重要になる。
戦線のグラフィック
このスクリーンショットでは現在制作中のアセットのプレースホルダーとして過去の戦闘グラフィックとVFXを使用している。
- グラフィックの強化のほとんどはオープンベータ中の2回のアップデートで行う予定だが、開発ビルドでは戦線のグラフィックの最初のイテレーションが行われている。
最終的な戦線グラフィックのビジュアルターゲットのコンセプトアート。編制の構成に基づいて動的に組み立てられ、戦線に沿ってプロヴィンスに配置される。
- 戦線のグラフィックは戦線にいる現在の編制を表現し、ユニットの種類・文化・技術・動員オプションに基づいてモデルが選択される。特定の編制・将軍は戦線で明確な位置があり、その近くに「彼らの」ユニットが置かれる。
- 現在はアニメーションへのアプローチとモデルへのVFXの適用を実験している。すべてのユニットが常にアニメーションしているのは適切ではなく、一定の間隔でアニメーションのオン・オフを切り替えることになるだろう。このアプローチはグラフィックのパフォーマンスも改善するはずだ。
私たちが壊したもの
- 多くの修正を行った結果、オープンベータ期間中にゲームを見直すためにいくつかの機能が切り離された。オープンベータを評価する場合、こうしたものが抜けていることを認識し、私たちがアップデートでどのように対処するつもりかを知っておいていただきたい。
徴兵
- どの軍に所属させるかを決めるのが困難になるため、徴兵がステート単位で行われることにもはや意味はない。また、製法に関連しないユニット種別もあるため、召集する必要のある徴募兵の性質についても知る必要がある。これを解決する方法は、通常のユニットを作るのと同じようにプレイヤーが特定の種類の徴募兵を編成に割り当てられるようにすることだ。これによって特定のステートには通常どおり徴兵センターができるが、自動的に召集されるわけではなく、編制で切り替える。編制が召集を始めると徴兵センターは徴兵比率の上限まで人員を補充する。編制レベルで徴兵することで、同じように早期復員も行える。
海戦
- 海戦は具体的な場所を中心とした新たなシステムに合わせて見直される予定だ。つまり、自国艦隊が行うすべての行動は抽象的な概念ではなく海上ノードを中心に行われるようになる。海上ノードで船団を襲撃する場合、近くにいる他の艦隊にしか妨害されない。上陸作戦を防ぎたいなら、艦隊を作戦地点まで向かわせる必要がある。これに関して発生する可能性のある問題について、私たちは以下のような解決策を検討している。
- 艦隊の射程距離:艦隊の能力を隣接海域でも有効にし、場合によっては妨害の有効性を低下させたり、技術やユニットの種類によって射程距離を変える。
- 限定的な戦場の霧:敵の位置や行動を見えなくし、特定の条件下でのみ明らかにする(戦艦ボードゲームスタイル)。
- UIのアラートその他の視覚的表示。
- 哨戒ルートのような艦隊の自動化。
- これはオープンベータ中に多くの作業が予想される領域であり、後日これに関する開発日記が必要になるだろう。
来週はアートパック「Dawn of Wonder」について。その後の開発日記は3週に1度の頻度になるとのこと。
2023年8月25日追記:開発日記#94は予告どおりアートパック「Dawn of Wonder」となっていますが、記事にして紹介はしませんので、内容が気になる方は直接フォーラムをご覧ください。「Dawn of Wonder」とバージョン1.4のリリース日は8月28日と予告されています。なお、1.4と同時リリース予定だった1.5オープンベータは直前に発見されたバグにより9月第1週のリリースとなることが想定されると発表されています。
コメント
長文翻訳お疲れ様です
軍事関連にはわかりにくい不満点が多かったので期待
いいね
戦線のグラフィックが塹壕か要塞が一対一で物足りなかったんよね
最終的なビジュアルでしかも無数の対立が雰囲気増大でいいぞ
ココロオドル グッド!
いまだに海軍の挙動わからないから刷新ありがたい
おぉ、ついに軍や艦隊に名前を付けられる様になるのか!
Vic2で名前を付けて植民地軍とか外洋艦隊とか配備したりするのが一番楽しかったから、こっちでもできるようになるのめっちゃ楽しみ。
あまりにも今まで抽象的すぎたし軍事に関してはゲームPray状態だったから、プレイヤーが介入できるようになる幅が増えるのは期待したい!
……まあ、EU4も結局最後はサイコロ神に祈ったり、HOI4も内部では確率計算あるから結局Prayからは逃れられないんだが