「Victoria 3」開発日記#17が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は移民について。本体発売前の開発日記です。
開発日記
開発日記#17は、移民について。
- 今日は移民(Migration。ステート間のPopの移動)が「Victoria 3」で果たす役割とその仕組みをご紹介する。「Victoria 3」の移民には2種類ある。すなわち市場内移民(Intra-Market Migration)と大規模移民(Mass Migration)だ。はじめに市場内移民から説明する。
- 市場内移民とは同じ市場に属する2つのステート間のPopの移動だ。特定の例外(前回の開発日記でご紹介したように、奴隷は移動できないなど)を除いて、Popは基本的にいつでも市場内のステートを移動できるが、週ごとに故郷から移ることができる人数は2つのステートのインフラや市場アクセスなどの要因によって変わる。
カンザスは人口の希薄さによって既にアメリカ人入植者にとって魅力的なステートとなっているが、命令「『隣の芝生は青い』キャンペーン」によってさらに移民が優先されている。
- どのPopがどのステートからどこへ移住するかはそれぞれのステートの移住の魅力(Migration Attraction)によって決まる。移住の魅力はそのステートの生活水準の平均を元に、人口の過不足、失業率、雇用などのさまざまな要因を加味した値だ。国家が命令(Decree)「『隣の芝生は青い』キャンペーン(Greener Grass Campaign)」を通じて、権限(Authority)と引き換えに特定のステートへの移住を直接奨励することができる。
- 一般的に、Popは生活水準が低く雇用機会に恵まれないステートから生活水準が高く仕事があるステートに移動する。利用可能な土地に対して人口が少ないステートは経済的移民を特に惹きつける。
フランスの植民地政策により、植民地であるAlgiersにはフランス本国からの移民の安定した流れが毎週ある。
- 移民には差別も関係している。特定のステートで差別を受けているPopは、市場内に差別を受けない別のステート(同じ市場を複数の国家で共有していて、そのうちの1か国がよりリベラルな市民権や宗教法を持っているなど)に移住する機会があれば、より多くの人々がその機会を利用する。もちろん彼らがそこに真っ先に移住したくなる経済上の基本的な理由があればの話で、その上で選挙権があれば確かにいいことだが、ほとんどのPopにとっては食べていけるかのほうが重要だ。
- 差別には反対の効果もある。既に完全な市民権を持っているPopは、一般的によほど経済的に困窮していなければ権利を奪われるような場所に移ることを考慮しない。市場内のどこに行っても差別を受けるPopの場合は自文化の本土(Homelands)に固執する傾向がある。
本土での経済的苦難と政治的抑圧にうんざりして、ポーランド人の大集団がフランスでの新生活にいちかばちか賭けることにした。
- では、大規模移民とはなにか? 大規模移民は19世紀にアメリカ・ブラジル・オーストラリアなどに大勢の人々が移住したことをモデル化した機能だ。大規模移民は特定の文化が騒乱(Turmoil)を経験したときに発生する。騒乱とは急進化したPopが多くいることによって起こるものだ。しきい値に達するほど充分な騒乱を経験した文化は世界のどこかに移住目標(Migration Target)を決める確率が生じる。
- 移住目標は特定のステートに設定されるフラグで、その文化から大量の移民をそのステートやそのステートの近隣ステートに一定期間惹きつけるものだ。移住目標はその文化のPopの生活水準が低く識字率が高い場合に作られやすく、その文化のPopが広く飢餓状態にある場合は特に作られやすくなる。
- 移住目標となるステートの選定はそのステートの移住の魅力、その国家でその文化が法的に差別されているかどうか、移住する文化のPopが本土から目標までたどれる論理的な「経路」があるかどうか(貿易路など)などの多くの要素に基づいて行われる。移民を得ることについて、特定の「国家タグ」に固有のアドバンテージがあるわけではない。アメリカが移民を獲得する傾向にあるのは仕事や土地があり、リベラルな市民権の法律があるからであって、移住の魅力にあらかじめ組み込まれているボーナスがあるからではない。
- 移民についてのもうひとつの要素については簡単に触れるに留めておく。すなわち移民政策(Migration Policy)だ。これは移民に対する自国のスタンスを設定する法律のまとまりだ。例えば、本国から植民地への人々の移動を促進するのか、製造業経済のために他国から熟練労働者を集めるのか、あるいは自国民に対する頑強な支配を維持する手段としてすべての移住(流出・流入どちらも)を最小限にするのかだ。今回この話をしないのは、再設計の最中だからだ(以前はもっと単純だった)。これについてはまた後日ご紹介したい。
- (質疑応答より)「Victoria 3」ではPopに直接関与することはなく、すべての関与は建造物・利益集団・命令・制度などの媒体を通じて行う。同様に文化や宗教との直接的な関与もなく、例えば特定の文化のPopの移住を禁止したり奨励したりすることはできない。
- こうした関与はすべて市民権と政教関係に関する法律で取り扱われ、こうした法律によってPopが文化や宗教に応じて差別される(Discriminated)かどうかが決まる。これは特定の政策がどのように機能するかを決めるための差別されないPopと差別されるPopの線引きであり、特定の種類の人のために特定の法律を選択するのではない。時にそうしたことが起こることは否定しないが、一般的ではないし、私たちがこのゲームに求めている細かさの水準でもない。
- 過去に隣接関係に基づく移住を検討し、実験したことはあるが、最終的にはゲーム内で3つの異なる移住システムを持たないことにした。経済的移民(貧しいPopが職のある場所に移動する)は市場内移民で処理される。騒乱に基づく移民(貧困や抑圧されたPopが海外に移動する)は大規模移民で処理される。国境を越える移民や世界規模の移民の安定した流れはまったく非史実のものというわけではなく、またこの影響が非常に小さい場合はプレイヤーには関係ないことであり、一方で非常に影響が大きい場合は説明や対応が困難になる。
- 経済的移民は通常、プレイヤーが喜ぶものであり、命令である程度制御できる。一方、大規模移民はプレイヤーにシグナルを送って説明することが容易であり、法律によって制御できる。移民の他の形態の効果もモデル化にはあまり関係がなく、大きな認識できる利益もないのに多くのPop分割(とパフォーマンスの問題)が起こる。
質疑応答
Q:大規模移民によって発展途上国の基本文化/宗教が替わることはある?
A:ない。国家には固定された主要文化(1つまたは複数)があり、これは国家の定義が変わらない限り(新国家の形成など)変化しない。差別に関する法律の効果は主要文化と比較されるものであるため、主要文化を持たない大量の移民は平等な扱いを要求したり、荷物をまとめて別の場所に移動したり、一定の条件の下で自治を要求することさえある。「自治を要求する」というのは分離独立のシステムを指すが、これについては今後説明する。
Q:言語が同じだと移住しやすくなったりする?
A:私たちは大規模移民の目標の設定についてすべての要素を確定したわけではなく、言語のような文化の特性を共有していることは現在検討している要素のひとつだ。
Q:移住してきたPopの文化は時間経過で現地の文化と融合するの?
A:文化的同化(Cultural Assimilation)と改宗(Religious Conversion)は別のシステムで、今後の開発日記で述べるが、こうしたことは移住の波の後によく起こる。
Q:戦争は移民に影響するの?
A:戦争はPopに影響を及ぼす急激なメカニクスによって社会に多くの悪影響を与え得る。これについては今後の開発日記で述べるが、つまり戦争が長引くと戦争の被害を受けた国家から移民の波が起こったり、最悪の被害を受けた地域から市場の他の地域に人口が移動したりする可能性があるということだ。
Q:動的な文化もなく、文化を細かく管理する方法(ImperatorやStellarisのような)もなく、主要文化とその他しかないってこと?
A:差別に関する法律は「主要文化とその他」以外にも、2つの差別のベクトル(文化と宗教)と合わせてかなり細かく作れる。それより細かい法律で「文化の管理」を効果的に狙えるというのは、現実的ではないしゲームプレイに付与するものという点でも特に意味はない。主要文化を国家タグに固定のものとしたのは非常に意図的なことだ。「Victoria 3」は革命の時代であると同時にナショナリズムの時代でもあり、「文化=国家」、「自然な」文化的本土、汎国民的感情などの概念が重要なテーマとなっている。したがって「Victoria 3」では、国民国家が基礎的な国家のアイデンティティを維持したまま主要文化を変更するというのは理にかなっていないことであるため、文化と国家が本質的に結びついている。
今回で国内政治に関する話題は終わり、次回からは外交についての話題になるとのこと。来週は威信(Prestige)とランク(Rank)について。
コメント
>国家には固定された主要文化(1つまたは複数)があり、これは国家の定義が変わらない限り(新国家の形成など)変化しない
近代中国は新国家ってことか?
それとも「など」に含まれている何かなのか
気になるならここではなくフォーラムで聞くほうがよいかと
質問ではなく予想を書いているつもりでした
南北アメリカ大陸だからじゃなくなったのはとても嬉しい
本当にこれ! Vic2ではどれだけ疎ましく思った事か……。
外交がどうなるかまだ分からないけど、世界中で戦争煽りつつ自国は中立を保って、世界からPOPを受け入れるとかやってみたい。
だが、来る人の文化を限定できないけどね、イギリスをプレイして日本人だけを誘致したいけど、ベトナム人とか韓国人とかインド人とかばかり来たら嫌だよ。
主要文化とその他以外の区別はあまり重視してないシステムになってるみたいだし、移民プレイをする上で特定文化圏に絞る意味はないんじゃないの
これは歓迎。今思えば「アメリカ大陸だから移民バフ付けるね!」は乱暴だったわ。3は他にも様々なところできちんとシミュレートしようとしているね。あとはうまくバランスがとれるかどうか。
VIC2のことは知らないけど、アメリカ大陸に移民バフあるのってそんなに評判悪かったの?史実通りだし別に目くじら立てるようなシステムではないんじゃないかと思ったのだけど。
初代では社会保障を整備するとアメリカ大陸以外でも移民が来たのですが、2ではアメリカ大陸以外はほぼ移民が来ないというのは面白くなかったです。
初代では大阪の半数がフランス人とイタリア人になったり、小笠原諸島が完全にウイグル人だけになったりとロマンがありました。
資源みたいに土地由来のものならまだしも、土地そのものにバフがあるんやなくて制度に対してバフがかかるべきやろ。
アメリカ大陸だからという理由は未来からの俯瞰であって、当時の人はアメリカ大陸だからという理由で移住したわけやないし。
比較論でいうなら、大阪の半数がフランス人とイタリア人になったり小笠原諸島が完全にウイグル人だけになるよりは、アメリカ大陸の土地そのものにバフがあるほうがまだ史実っぽくちゃんとしてるように思えるけどね
いや、これに関してはアメリカ大陸にバフがかかる場合は根本的に自由度自体がないが、社会制度にかかる仕様であればバランス調整次第で大阪の半数がどうこうという状況は十分に防ぎうるので、社会制度にかけるほうが優れていると思う
もちろん全てをなげうって極端なプレイングをした場合は、相応に極端な状況になるのも面白いと思うけれども
制度でいうなら、旧植民地国家は移民に寛容だとか、旧大陸国家は移民を受け入れる伝統がなく不寛容だとかの制度も含めてほしいとは思う。
旧大陸国家が福祉や参政権を整えただけで移民が殺到するのは時代的に非現実的だし、アメリカ大陸の国家が移民を受け入れたのはそういう文化土壌があったからなわけで。
旧大陸ではそもそも移民関連の法律を通過させるのが難しいのではなかろうか
各国の利益団体の思想や特性の違いによって国家の特色を表すと以前の開発日記で言われてもいるし
別に非現実的なんてことは無いけれど
EU4の時代でもフランスを追われたユグノーをプロイセンが大量に受け入れたりとかあったし
それはまだ民族より宗教が優先されていた時代の話だし、ナショナリズム全盛の19世紀とはまた事情が違うでしょ
ナショナリズム全盛であることと生まれ育った地を捨てて新大陸を目指した動機とは全く論理が結びついてないよ
突然どうしたんだ?
ナショナリズム全盛だから生まれ育った地を捨てて新大陸を目指したなんて誰も言ってないけど
じゃあ新大陸以外に移民があってはならないと考える理由は何なの?
市大陸以外では移民を受け入れる伝統がなく不寛容なんて事実は存在するのかしないのかどっち?
〇「新大陸以外に移民があってはならない」とは誰も言っていなくて、あなたが勝手にそういわれているものだと勘違いしているだけ
〇この時代のヨーロッパ内移民の多くは植民地からの流入による国内移民で、アメリカ大陸国家の国外移民とは質が違うものである
〇同じ話題なら返信ボタンを使ってツリー形式にしましょう、カッカしていて冷静さを失っているように思えます
答えを先に行っておくと19世紀の時点で欧州国家に移民はわんさかいたので旧大陸国家は移民を受け入れる伝統がなく不寛容などという事実は存在しません
ナポレオン戦争の後遺症で労働力不足に苦しんでいたフランスとか特にそうで20世紀に入るころには百万人以上の移民が居ました
Vic2のアメリカ大陸バフは史実を再現していて悪くないと思ってたけど、バフが強すぎてプレイヤーがいくらやっても移民を自国に呼び込めない状況になってしまっていたので、Vic3では史実とイフを両方実現できるバランスだと嬉しいな