「Hearts of Iron IV」開発日記2019年9月25日分が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は国粋スペインの国家方針について。長め。
概要
開発日記2019年9月25日は、国粋スペインの国家方針について。今回はコンテンツデザイナーのBratyn氏によるものです。
デザインの意図
- スペイン内戦はゲーム序盤でおそらくもっとも重要なイベントだが、すぐに終わってしまうことが多い。また、トルコやブラジルなどを除けば、スペインは戦略的にもっとも面白い国家のひとつだ。というのは、内戦後には拡大するのに適した国力を持っているからだ。
- スペイン内戦は特別の配慮をするにふさわしい歴史的に重要なできごとであり、私たちの最大の国家方針プロジェクトにおいては、内戦の両陣営ごとにひとつずつ、合わせて2つのフルサイズのスペインの国家方針を作成した。この複雑さをあえて要約するとすれば、この時代の混沌とした狂気だ。これによって私たちは内戦の勝者によって異なるスペインの政治的状況をずっとよく考慮できるようになった。このツリーはこれまで固有のツリーがなかったスペインをまったく新しするものであると同時に、ゲーム中で既に表現されているスペイン内戦の見直しの意味もある。これまでの表現には以下のような問題があった。
- スペイン内戦があまりにも早く終わってしまう。
- スペイン内戦がゲームの中核となるメカニクスの制約によって単純化されすぎている。
- スペイン内戦の開始は完全にランダムで、プレイヤーはいつ発生しそうか知るすべがなく、これをコントロールする方法もない。
- 第一の点についてもう少し詳しく述べると、経験を積んだプレイヤーなら内戦を数か月で終わらせることができ、経験の少ないプレイヤーでも史実同様3年近くかかることはない。これは他の国家方針にも問題も引き起こす。というのは、スペイン内戦に介入する国家方針がある国家(例えばフランス)がその国家方針を使えない状況になり得るからだ。ある国家が内戦開始前にある国家方針を選択する場合、その国家方針が完了するまでに合計140日とることができ、それから介入の国家方針を完了させることになる。これに義勇軍の移動時間を加えると、義勇軍到着前に内戦が終わっていることは充分にあり得る。国家方針がキャンセルできるようになって問題は軽減したが、なくなったわけではない。
- 新たなスペインの国家方針のデザインの狙いは以下の4点だ。
- 人為的な方法で内戦を長期化させて国家方針でこの時代をよりよく表現できるようにし、他の国家にも介入する時間をもたらす。
- この時代のフレーバーや史実を肉付けするために時間をかけ、同時に本来のスペイン内戦から変化したストーリーを作る。
- 内戦の開始についてプレイヤーがコントロールする余地を増やし、予測できるようにする。
- スペインに内戦後に新たに発展と目標をもたらし、その後のより大きな世界の紛争に関与させる。
- 依然として開発中のため、アートの大部分は制作中であり、数値やシステムはテストプレイの結果変更される可能性があるとかなんとかかんとか……。いつもどおりのことでみなさんはもうわかっているはずだ。
国粋スペインのゲーム開始時の状況
- スペインはゲーム開始前の100年間、政治的に非常に不安定だった。ミゲル・プリモ・デ・リベラの独裁政権は1930年に倒れ、スペイン第二共和政が樹立された。34年の鉱山ストライキではフランコがその鎮圧に中心的役割を果たした。
- ゲームではこの状況をさまざまな国民精神で表現している。
- カルロス主義(Carlism):安定度を大幅に下げ、非同盟/中立主義の支持率を少しずつ上昇させる。また命令に従わないカルロス主義者を表現するため、師団の攻撃・防御値を低下させる。
- 軍の背信(Military Disloyalty):すべての師団テンプレートをロックし、変更を妨げる。またそうした師団テンプレートから編成された新たなユニットや既存のユニットは削除される。
- 政治的暴力(Political Violence):安定度を引き下げる。
- 全国ストライキ(National Strikes):安定度、建設速度、工場と造船所の生産力を低下させる。
- さらにさまざまなステート(ガリシア、バスク、カタロニア)では「自治法(Statute of Autonomy)」があり、建設スロット、徴兵可能人口、資源、そのステートの建設速度を減少・低下させる。これは国家方針で取り除いていく。
- 初期のデザインでは内戦を起こさないこともできたが、特殊なケースが多く発生すること、当時の政治的状況からかけ離れていること、ゲーム序盤の重要イベントであることから取りやめた。選ぶのは国粋派か共和派かだけだ。36年2月15日の選挙はなにも影響しないが、ここで以降どちらでプレイするかを決める。この開発日記では国粋派の国家方針を見ていく。
- 史実で人民戦線が選挙で勝利した期間には政治的暴動がエスカレートしたが、国粋派ツリーではこれを選挙結果次第で利用可能となる多くのディシジョンとミッションで表現する。
- 最初は基本的には250日のカウントするもので、この期間が終わると内戦が始まる(上の画像の1)。
- 2つ目は敵方(ここでは共和派)の方針を表現するミッションで、敵の内戦準備を表す(上の画像の2)。
- 3つ目は政治的暴動の雰囲気を利用するディシジョンで、内戦開始を繰り上げることができる。一方、敵方は反対に内戦開始を遅らせるミッションを生み出し、時間を稼ごうとする(上の画像の3)。
- 最後はすべてのスペインの中核ステートに現れるディシジョンで、駐屯部隊に対する影響力を拡大し、影響力が充分高ければ内戦勃発時にこちら側につくように要求する(上の画像の4)。
- 上記のシステムでは、内戦開始はもっとも早ければ8月上旬、プレイヤーがなにもせずにもっとも遅い場合は37年前半となり、共和派はできる限りの準備を完了する時間を得ている。
- 最初の選択の後の国粋派のツリーは単線の6つ(うち2つは相互排他)の国家方針につながる。7月29日以降すぐにプレイヤーにクーデターの準備が完了したことが通知されるが、内戦の準備が整うまで隠匿しておくには政治力が必要となる。共和派の準備が進むことも相まって、国粋派はできる限り早く、8月上旬に内戦を始めるのが最適なタイミングとなる。
- 内戦が始まると国粋派と共和派は別の国家タグになる。国粋派が駐屯部隊を掌握したステートは国粋派となり、それ以外は共和派に残る。また、駐屯部隊への影響力が最大でも最大でもないステートでは影響力に応じて国粋派の師団が出現する(最大4個師団)。さらに、国粋派には内戦勃発後7日間は「Planned Uprising」の国民精神がつき、補給なしで戦える最大期間が伸び、この間に「土地の占領(land grab)」を達成できる。(注:ミッション名か何かのような書きぶりだが詳細不明)
- その後史実では「前線の強化(frontlines solidify)」が行われ、スペイン全土に防御力が上昇し、移動速度が低下し、計画値が減少する地形補正(補正はテストで変更されるかもしれない)がかかる。これはディシジョンからステートごとに解除でき、このディシジョンは両陣営とも使用できる。
- この後ツリーは国粋派の反乱軍の性質を表現する3つのルートに分かれる。
ファランへ(ファシスト)ルート
- ファランへは33年にホセ・アントニオ・プリモ・デ・リベラ(独裁政権を作ったミゲル・プリモ・デ・リベラの息子)が始めた比較的新しい政治運動だ。
- ファランへツリーは初期のインフラ・軍需工場建設の機会があると同時に、敵領土内で第五列を蜂起させることもできる。この用語は実際にスペイン内戦で生まれたものだ。加えて、ファランへはドイツとイタリアに支援を求めることができる(彼らがファシストなら支援を受けられる)。より重要なのはプリモ・デ・リベラが処刑されないよう捕虜交換で確保することだ。しかし、彼がリーダーシップをとる前に、反乱の指導者エミリオ・モラによる臨時軍政府が設立されるだろう。
- 内戦中の最後のハードルはカルロス主義者だ。ファランへルートで内戦開始のミッションが始まると、カルロス主義者による反乱内反乱のカウントダウンも始まる。この「反乱内反乱」は第三の国家タグを作り、ナバラを中心とする北部に領土を得て、内戦に勝利するとカルロス主義者ルートを継続できる。
- 内戦勝利後はプリモ・デ・リベラのサンディカリスト国家が樹立され、海軍を再建し、旧植民地を奪還し、列強に返り咲く。
- 最後は工業力の強化に関するルートで、これまでの国民精神「内線からの復興」は複数の段階のペナルティを持つものに拡張され、このルートで解除されていく。これは枢軸国と連合国どちらから経済援助を得るか、あるいは自給自足するかとも関連する。
カルロス主義(非同盟/中立主義)ルート
- カルロス主義者は特にスペイン北部で依然として多い。史実ではモラとの交渉で内戦に参加したが、既に自身の反乱準備も進めている。
- カルロス主義は国際的な同盟相手を持たず、外国からの援助は得られない。最初は北部を確保し、同時にファランへに対する反乱内反乱の準備も進めなければならない。ファランへルート同様、カルロス主義ルートでもタイマーがゼロになるとファランへの反乱が発生する。ファランへは第三の国家タグとなり、カルロス主義、共和派双方と戦争状態になる。
- これ以降はレケテス(Requetés)の熱狂を拡大する方向に進む。「The Crusade Against Democracy」から「Cultivate Fanaticism」で師団は大幅に強化される。これは工業に関する国家方針や同盟相手がこのルートでは欠けていることによる。
- このルートでは最終的に王政復古とスペイン旧領の再復を目指す。すなわちフランス(プレイヤーがアルフォンソ13世かその息子を君主に選び、フランスもレジシティミストルートを選んでいる場合はどちらも請求者が同じ人物になるため、平和的に「統合」されるかもしれない)、スペイン領ネーデルラント、イベリア連合、ジブラルタル、そして1898年の惨劇に対する雪辱とそのとき失った植民地の奪還のための復讐戦争だ。
フランコ主義(非同盟/中立主義)ルート
- 最後は軍事政権でこれが史実のルートだが、これにも大きな非史実の可能性があるし、歴史的にもより洗練されている。すなわち、国粋派は他の2つのルートにあるような「反乱内反乱」を経験しなかった。そのため、このルートではファランへとカルロス主義の対立が戦争になるまでエスカレートするのを妨げることができる。こうした状況を表現するため、フランコ主義はデフォルトでファシストではなく非同盟/中立主義とし、枢軸入りしたい場合はファシストになれるようにした。
- 他のルートと同じく、このルートでも開始するとカルロス主義の反乱タイマーがスタートする。プレイヤーは反乱を完全に妨害でき、史実ではファランへ党とカルロス主義派(Carlist Communion)の合併でそれが行われたが、こうした国家方針はその条件となっている重要な地域(トレド、北部全域など)を内戦で素早く確保できるかによる。
- 外国からの支援についてはフランコ主義はファランへルートと独伊からの支援に関する国家方針を共有し、カルロス主義ルートとレケテスの利用に関する国家方針を共有している。また固有の国家方針としてポルトガルからの支援がある。これはない戦後にイベリア協定(Iberian Pact)に発展する。これは両国がいかなる戦争でも常に同じ側につくもので、最終的には(ヴィシー)フランスとイタリアを含めて「ラテンブロック(Latin Bloc)」という固有の陣営を作れる。
- アルカサル宮を確保した後、フランコは国粋派の事実上のリーダーとなる。産業再建ルート全体はフランコ主義で利用可能だが、連合国に入ることもできる。
- アルフォンソ13世の復位かフランコの終身元首の維持(史実)かを決めた後、ソ連と戦うドイツに義勇軍を送り、タンジール(マップ上にはない)の居留地を占領し、弱体化したフランスに北アフリカを要求し、イギリスからはジブラルタルと最終的には西アフリカを得る。
内戦後の回復
- すべての要素は以前ご紹介したレジスタンスシステムに紐付いている。史実ではフランコは内戦後も地方に残るゲリラやレジスタンスと戦った。現在はまだ開発中だが、内戦開始時に持っていなかった領土についてはコアを失い、内戦後にディシジョンで再度中核化することで共和派のレジスタンスの一掃を表現するというアイディアがある。
イベリアのマップ変更
- 粒度を上げてスペインのステートごとの攻勢システムを使いやすくするため、スペインのマップを見直した。新たに7つのステートを追加し、ほかも変更を加えた。変に大きかったジブラルタルステートはずっと小さくなった。イベリアの空域は3つに分かれ、南北フランスも分割してフランス西部を追加した。
- 今回の開発日記でご紹介した内容はマップの変更以外すべてDLCの有料の内容であり、購入していないプレイヤーにとっては内戦はこれまでどおりだ。
質疑応答
Q1:民主主義に戻ることはできないの?
A1:来週ご紹介するが、民主主義は共和派の内容だ。
Q2:テンプレートをロックするのは無料の重戦車師団スパムみたいなのを防ぐため?
A2:国民精神はプレイヤーに知らせるだけで実際には別の部分でロックしている。コードの変更で師団テンプレートの複製もロックしており、安上がりに新しい編集可能なテンプレートを得られなくなった。
Q3:連合国入りはどれくらい成功するの?
A3:常に成功する。連合国入りの国家方針は内戦が終結している必要がある。
Q4:フランスやソ連にスペイン内戦関連の新たなイベントはあるの?
A4:フランスはスペイン内戦への対応を決めるメカニクスがある。不介入委員会(non-intervention committee)に入って介入しない場合は安定度にボーナスを得るが、不介入委員会は史実どおり実際にはいかなる点でも介入を制約しない。
Q5:マルチプレイで共和派と国粋派をプレイできる?
A5:内戦まで国家タグが分かれていないので、内戦が始まったら相手方にプレイヤーが入って戦える。
Q6:フィリピン侵攻後の日本に最後通牒を突きつけることはできる?
A6:ゲーム中で好きな相手に戦争目標をつけることができるので、それでやっていいのでは。
コメント
なんで主要国のイタリアとソ連より中小国が優先なんだよ
いつもなら4つの国に新NFが来るからイタリアが来る可能性は全然あると思う。あと可能性があるのはベルギーかスイスかな。
ブルガリア ギリシャあたりもワンチャン
ブルガリアはDoDの時に面白く作れないという理由でスルーされたので可能性は低い
これある意味考えうる限りで最悪のDisだろ
枢軸に参戦するも何もしてない→ソビエトが迫ってきたらすぐに寝返る→なにもしない。作りようがないねこの国。
預言者やんけ
フランコ、何笑っとるんやワレ
フランスの主要国(笑)が加速しちゃう
パラドフォーラムの喜びの書き込みを見ていると微笑ましい
正直プレイヤーとしては内戦とかって一瞬で終わらせたいんだけどまあ製作者的には長引かせたいよいね・・・
やっとスペインにNFくるのか
あまりにランダムすぎる内戦開始イベントのせいで遊びにくすぎだったから嬉しい
何時もの初期デバフ祭りか
開発者はMが多いな
少なくとも初期拡張がしたいファシストプレイヤーからすればスペインでプレイする理由はなくなってしまうなぁ・・・
内戦後の復帰がものすごく強力であるとかならいいけど、惑星hoiのことだから共和派がコミンテルンになってナシオン・フランセーズあたりにボコられる未来が見える・・・
カルリスタの最終目標合衆国に勝つことで草
やっぱり王党派は糞、はっきりわかんだね
こう言うゲームって結局再現が進むほど世界征服とか難しくなると思うけど、そういうプレイを楽しみにしてるプレイヤーにとってアプデがどう言うものなのか気になる。
反乱内反乱なんてKRのスペイン内戦みたいだあ…