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「Victoria 3」開発日記#57――これまでの歩み

Vic3 開発日記

「Victoria 3」開発日記#57が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回はこれまでの開発過程について。本体発売前の開発日記です。

前回:開発日記#56――文化と宗教


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開発日記

開発日記#57は、これまでの開発過程について。

時間はかかったが、私たちは世界を作り上げた!

  • 「Victoria 3」の発売日をお知らせし、実際のゲームプレイを少しばかりお見せしたので、このゲームがどんなものか、どうやってここまで来たのかを振り返るのはいい考えだろう。今回は具体的なゲームの仕組み、プレイ体験、現在のバージョンに至るまでの過程を取り上げる。
  • 「Victoria 3」とはなにか? 私たちはこれを社会構築グランドストラテジーゲームと呼んでいる。19世紀から20世紀初頭にかけての権力闘争・革命・戦争を乗り越えるため、選択した国家の人口・経済・法律を形作ることに着目している。実際には、どのように経済を構築するか、どの政党に権力を持たせるか、どの国家と友好関係を結び、敵対するかなどについて多くの難しい決断を行うことになる。

Popと建造物

国民はこのシミュレーションの根幹であり、Victoriaの変わらない機能でもある。

  • VictoriaのすべてはPop、つまり国民に始まり、国民に終わる。Popとその生活環境によってどのような経済を運営できるかが決まる。

建造物は国家建設の主要なツールであり、国民がなににどのようにして時間を費やすべきかを決める。開発中に建造物と生産方式を利用したゲームプレイの機能がどんどん実装されていった。

  • 自国経済は商品を生産・消費する産業網(「建造物」)とPopの消費需要によって成り立っている。建造物はそれだけではなにもせず、Popによって人員が配置される必要があり、その見返りに(うまくいけば)彼らの生活条件を改善するための商品やサービスを購入するのに十分な賃金が支払われる。民間所有の建造物には所有者Popがおり、彼らは回収した利益を再投資したり、それを使って贅沢をしたりして、輸入品や自動車などの新発明への需要を高める。国家の精神として、プレイヤーはどの建造物をどこに建てるか、国家が助成するかを決める。そうした決断それぞれが国家の将来に長期的に関係する。
  • 「Victoria 2」では資本家などの特別な役割や工員ではないPopは「資源収集作業(RGO)」に従事していたが、ゲーム開始時に人口の大半が高収量の近代的な農場で働いているのは好ましくない。そこで私たちは自給自足農業を考え出し、未使用の耕作地はすべて小農民(Peasant)Popが自給自足のために利用し、ごく少量の余剰品を市場にもたらすようにした。自給自足農場は近代的な農場やプランテーションが建設されるにつれて次第に姿を消していく。小農民が土地を耕す以上に資源産業が下層階級に賃金を支払う保証はないため、この移行がいつ、どのように行われるかによっては富の格差拡大につながる可能性がある。

利益集団

利益集団は「Victoria 3」で新たに追加されたもので、プレイヤーと関わる国民の声として機能する。究極的にはPopの支持によってのみ利益集団は機能するので、Popに直接影響を与えることは利益集団にも影響する。

  • Popはその規模と富に由来する政治力を持ち、これは法律で補正される。この影響力はそのPopが支持するさまざまな利益集団に分配され、国家の政治的な方向性を決める力を与える。時間が経過すると、プレイヤーは経済が何十年にもわたってどのように発展してきたか、その結果としてどのように権力の配分が変わり、変化を求めるさまざまな政治運動が発生したかというパターンを認識するようになるだろう。
  • 「Victoria 3」の初期バージョンでは利益集団が非常に動的で、常に政党や派閥が組織されており、ある国家に突然出現したり、トリガーとなる状況によって信念を変えたりしていたし、改革・建設すべきもの・戦争に至るまで、あらゆることに意見を持っていた。そのため、プレイヤーは自国がどういう国家で、なにか行動を起こしたときにどうなるのかを把握できず、非常に混乱したものとなっていた。
  • そこで私たちはすべての国家で共通の8つの利益集団テンプレートを作成し、国家ごとにそのテンプレートのバリエーションを作った。また、利益集団が大義名分によって出現したり消滅したりするのではなく、政治運動という新たな種類の組織を作って利益集団から分離させた。さらに、利益集団が状況に応じて意見を変えるのではなく、利益集団の指導者を導入して彼らが利益集団のイデオロギーを変えることができるようにした。最後に、政党や派閥のレイヤーを完全に削除し、開発のかなり後半に民主主義国でのみ有効になるより分かりやすい政治レイヤーとして政党を再導入したが、依然として利益集団が前面に立っている。
  • (質疑応答より)利益集団は以前は外交政策にも意見を持っていた。こうしたものはすべて取り除いたが、私(注:Vic3リードデザイナーのlachek氏)はこの決断を支持する。ある利益集団がスペインとの戦争についてもともと支持・反対であり、別の利益集団はフランスとの戦争に支持・反対であり、さらに他の利益集団はなんらかの理由でルッカを重要視するというのは奇妙でゲーム的であり、プレイヤーが予測したり主導したりするのは不可能だと感じた。将来的には、政治と戦争の相互作用をもっとデザインしたいが、利益集団のイデオロギーシステムではない新たな機能が必要だろう。

法律と制度

プレイヤーが変更できる法律は開発中に変化し、異なる税法が1つのカテゴリーに統合され、貿易政策が経済システムから分離し、陸軍モデル法が導入された。

  • 法律や制度はPopを通じて経済と結びついており、国民を養い国庫を黒字にするために、税制の変更によって経済の軌道修正が必要になるかもしれない。
  • 法律を利益集団がどのように支持するかについての初期のモデルは、3Dの政治コンパスや「Stellaris」の志向のようなものだったが、19世紀の人々がとり得るさまざまな政治的立場を説明するのにこの方法がいかに不適切であるかにはすぐに気がついた。「植民地化」が進歩的な政策か保守的な政策かは、文脈、文化、それまで哲学者によって述べられた知的議論に完全に依存する。私たちはこのマトリックスモデルを放棄して、特定の法律に対して独自の立場を持つ何十ものイデオロギーからなるシステムを作り上げた。

開発初期を通じてあった疑問として、政府職員の賃金はいくらであるべきかというものがあった。固定額は特におかしいと思われたが、完全に設定可能にするのも同様だった。私たちは国家の「通常賃金」値を継続的に更新することに落ち着いた。これは編入されたステート全体において民間産業で支払われている賃金を加重平均したものだ。これを基準としてプレイヤーに賃金を決めさせ、賃金の多寡でボーナスやペナルティがあるようにした。

  • 競争的な国家を運営しようとするなら、プレイヤーは民間産業のみ頼ってはいられない。官僚機構を機能させ、税金を徴収し、鉄道や船を運行させ、陸海軍が充分な人員を持って警戒に当たらなければならない。こうした政府機能は建造物を通じて表現され、そこで働くPopは国庫から直接支払いを受ける。

制度はもともと官僚機構を投入できる法律のひとつに過ぎなかった。これを法律で性質を変えられるものに分離することで、まったく新しい生き生きしたものとなった。これによってプレイヤーは時間経過で自国が能力を持ち、複雑になっていくさまをより明確に確認できるようになった。

  • 開発初期に取り組まなければならなかったデザイン上の課題として、制度をどのように表現するかということがあった。すなわち具体的な建造物がある地域レベルか、より抽象的な国家レベルかという点だ。医療・教育・警察などが法律で定められているだけで存在することにならないように、公的セクターの人員もPopが担うようにしたかったが、一方ですべてのステートに病院・刑務所・職業安定所・税務署などを適切な数だけ建設させるような細かすぎる管理をプレイヤーにさせるのは避けたかった。
  • 一時の気の迷いで、Popはあるところに居住するが住民全体に恩恵をもたらす不確定な「クラウドベース」の職場で働くという建造物が地域に置かないアイディアに浮気したこともあったが、これは開発後半になると奇妙で陳腐な解決に見え始め、私たちはこれをすぐに放棄した。この時点でデザインチームよりもずっと新鮮な目を持つプログラマーに相談した結果、私たちは制度が消費する通貨(官僚機構(Bureaucracy))を生み出す建造物を設けることにした。これは素晴らしいトレードオフで、プレイヤーは自国の政権の中心をどこに置くかカスタマイズできる一方、過剰な管理をしなくても法律で定められたサービスへのアクセスが国家全体に適切に配分される。
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貿易

元の貿易システムではルート上で動く商品量はかなり自由で、両端の貿易中心地の管理が必要だった。これは細かすぎる管理が多く、複雑でプレイヤーとAIの両方が容易に悪用できるものだった。

  • 国民が求めるすべての商品が現地で手に入るわけではないが、ではどの国家と貿易をしたいだろうか? それぞれの決断は経済的にも政治的にもさまざまな国民に影響する。
  • 貿易は多くのイテレーションが行われた。というのは、「Victoria 2」や他の多くの戦略ゲームとは仕組みがまったく異なるためだ。私たちは非常に早い段階で特定の商品の市場間取引をやろうとしており、私たちの需給システムは貿易の動機付けを生み出すためにうまく機能する。最初の貿易システムは使いやすいもので、貿易中心地を建設することによって貿易路を獲得し、それを使って市場間で一定量の商品を移動させるというものだった。これは理にかなっていて理解もしやすかったが、ちょうどいい量を移動させるために貿易路を細かく管理しなければならなかった。また、重要な商品の供給をすべて奪ったり市場を過度に飽和させたりすることによる外国経済の破壊があまりにも簡単だった。

新システムでは貿易路を確立した国家のみがそれを管理する貿易中心地を獲得し、商品の数量は実際に貿易で得られる利益に依存する。プレイヤーは関税や禁輸措置で貿易相手や貿易の規模を細かく調整できるが、関与の水準はずっと穏やかだ。

  • 現在ゲームに搭載されている貿易システムは貿易を管理するために貿易中心地を作成・拡大し、市場間の限界価格差に基づいてそこで働くPopにお金を稼がせるものだ。この方法では2市場間に貿易路を確立するだけでよく、その商品が一方の市場で需要が高く、他方で供給が多い場合、取引量を増やしても利益が得られなくなるまで貿易路が拡大する。これはプレイヤーが貿易で稼げるようにすると同時に、他のプレイヤー(あるいはAI)が特定の商品を輸入・輸出するのを抑止できるような関税システムを実装できたということでもある。しかし重要なこととして、私たちはなにが問題かを把握する前にまず実際に単純なシステムを作ってみる必要があった。

外交

「Victoria 3」では悪名を負う余裕があり、列強を危険にさらさない限りは思いのままに大胆で図々しい要求を行える。外交上の駆け引きを戦略的にあらかじめ計画することと不確実な結果を乗り切ることのバランスを見つけることが、外交上の駆け引きを満足のいくものにする鍵であり、それを見つけるために機能とAIの両方で多くのイテレーションを行った。

  • 経済・軍事・文化などによって決まる自国の名声は世界の国家ランキング上の位置を決める。このランキングは自国が受け取る影響力(Influence)の量を決める。影響力は他国と外交協定を結び、維持するのに使用する。協定は各国の戦略的関心が重なった場合にのみ成立し、限られた資源によって自国にとって重要な国家を選ばざるを得なくなる。関心は常に「Victoria 3」のデザイン原則の中核だったが、これも多くの見直しを経ており、その一部は来週取り上げる。
  • 国家間の要求はその地域に関心を持つすべての国家がどちらかを支持する外交上の駆け引きとして主張できる。これは交渉というよりチキンゲームだ。外交上の駆け引きは「Victoria 2: Heart of Darkness」の危機システムを発展させたもので、危機システムでは世界のどこかの「火種」が複数の列強が関与する国際的危機を引き起こすこともあった。このシステムはこの時代の世界の紛争を国際的に「取り締まる」ことの重要性を強調していた。「Victoria 3」の外交上の駆け引きでは火種から拡大するのではなく問題を引き起こした国家に不利な影響をもたらす事件が発生するし、列強以外の地域的な国家も関与したり巻き込まれることがある。

戦争を行う目的は戦争目標を達成し、できるだけ早く和平を結ぶことだ。永遠に続く戦争ほど経済にとって悪いものはない(経済の基盤が兵器製造でなければだが)。

  • 戦争が避けられなくなった場合、さらに多くの選択を迫られる。将軍や提督はさまざまな階級・技能特性・兵舎や海軍基地が支える兵力の割り当てを持ち、どの資源をどこで活用するかが戦局を左右するかもしれない。将軍や提督は自身の利益集団を支持しているため、敵に対する成果によっては戦後も続く政治的な変化をもたらし得る。
  • 資源を配分して命令を下した後は将軍や提督がその任務を全うし、プレイヤーは銃後の管理に集中させられる。戦争の結末はプレイヤーが国民の意気込みを保てるかどうかにかかっている。前線で優勢になっても、物資の不足で士気が低下した国民はできるだけ早く和平協定にサインするよう求めてくる。
  • ご想像のとおり、戦争の仕組みはデザイン目標を達成するために膨大なイテレーションがあった。小さなプロヴィンスの間でさまざまな規模の部隊を移動させ、それが重なると戦闘になるというのはパラド社グランドストラテジーのみならず、多くのストラテジーゲームに採用されている伝統的なシステムだが、「Victoria 3」にはしっくりこなかった。マネジメントや社会構築のゲームプレイと比べてテンポが悪く感じられ、列強として複数の戦争(または複数の戦線)を同時に扱うのは苦痛であり、人間が策略を使って優勢な軍を持つAIを壊滅させることができる「cheese戦術(注:cheeseはスラングで『努力やスキルのいらない、システムの穴をつくようなつまらないプレイをする』というような意味のようです)」の要素は軍を統計で互いに評価し合う外交上の駆け引きの力学に積極的に悪影響を及ぼした。
  • もちろん新システムには新たな問題がつきものだ。20人の将軍とその命令を管理しなければならないのは5つのスタックとその位置を管理するのとそれほど変わらない。軍や艦隊の正確な位置がわからない場合にプレイヤーに臨場感や戦力の概要を伝えることは、特に軍や艦隊が移動している際には難しい。私たちは先見性や戦略的思考を評価したいと思っているが、誰かが外交上の駆け引きを始めた瞬間に戦争の結果が決まってしまうのはまったく面白くない。私たちは今のやり方に満足しているが、これには多くの実験・テスト・妥協、そして特にUX作業とビジュアルの洗練が必要だった。
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革命

「Victoria 3」の真の敵はしばしば国境の内側にいる。

  • 国民を満足させることができなければ、革命や文化による分離独立が起こるかもしれない。民衆の識字率が上がると、彼らは階級意識を持ち、政治的に活発になり、法律を変えたり自治を要求する運動を始めたり、そうしたものを支持するようになる。このような状況には古典的な「パンとサーカス」のアプローチから福祉プログラムや選挙権の拡大といった譲歩、国家親衛隊や秘密警察でやかましい利益集団を弾圧することまで、さまざまな対応がある。こうした反乱は発生前に対応することが重要だ。というのは、他国が内紛に乗じてプレイヤー国家を将来的に傀儡国とするかわりに革命を支持するかもしれないためだ。
  • 1回目でうまくいったと思ったのは、革命時にどのステートが反乱に加わるかを決めるアルゴリズムだ。その数は反乱を起こした利益集団の合計政治力に対する割合に大きく依存し、例えば8ステートの国家で政治力の25%が反乱を起こした場合、2ステートが反乱に加わる。さらに反乱はまとまって蜂起する傾向にあり、革命側の政治力の比率がもっとも高いステートが中心地として選ばれ、隣接ステートがこれに革命に従うことが多い。
  • これはフランス・アメリカ・ブラジル・ロシアといった領土の大きな国家ではうまくいったが、スウェーデンでは先進的な改革が行われると、保守的な地主が相対的に優位なゴットランド島のみが単独で蜂起した。現在のアルゴリズムはエレガントさには欠けるものの、ニュアンスをうまく表現し、社会改革のたびに上陸作戦を行う必要なくなっている。
  • 上記は「Victoria 3」のすべてのシステムの表面をなぞっただけに過ぎない。技術・植民地化・インフラ・奴隷制・識字率と資格・法律の制定・人口増加と移住・国家統一・ジャーナル記事・イベントには触れていない。こうしたものの詳細については過去の開発日記をご覧いただくか、8週間後にご自身の目で確かめてもらいたい。

質疑応答

Q:拡張やイマージョンパックがどのような内容なのか、情報が欲しい。

A:近いうちに、できれば来週にもっと詳しくお伝えするつもりだ。私たちはコミュニティに対応する余地を残したいと思っているため、将来の製品について事前に詳細な計画を立てることはしない。イマージョンパックで意図しているのは、ゲームのいくつかの要素を改良し深化させるひとつかふたつの新たな仕組みに支えられた、アートやストーリーのコンテンツの組み合わせだ。拡張は多くの補助的なコンテンツと新たなゲームプレイ上の機能を導入し、より「ゲームチェンジャー」的なものとなる。


来週は関心(Interests)システムの見直しについて。

次回:開発日記#58――関心の見直し

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コメント

  1. 長い……翻訳お疲れ様です
    こうやって改めて今までの要素を見返すと、実際のゲームプレイではどう相互作用するんだろうってワクワクするな

  2. 貿易関係むずすぎて実際に触ってみないとわけわかんないっすなあ

    何はともあれ楽しみ

  3. システムが今までのパラドゲーと一味違いそうでワクワク感やばいけど、システム構築に集中しすぎてバランス取れてるのか心配。

  4. 植民地が必要だったのは、緑の革命前なのと社会進化論の勃興で
    「飢えるか滅ぼすか」の二択しかなかったのがデカいけど
    そのへんの飢餓感をどこまでゲーム的に落とし込めるか…

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