コーエーテクモHDが発売している「信長の野望」や「三國志」といったシミュレーションゲームがどれくらい売れているのかを調べてみました。
本記事の概要
先日の記事で「コーエーテクモ全体の売上に対するシミュレーションゲームの比率なども掘れたらいいな」と書きましたが、ツイッターにて決算説明資料に主なタイトルの出荷本数が掲載されているという情報をいただいたため、本記事ではこの情報をまとめました。
しかしながら、必ず決算説明資料に出荷本数が掲載されるわけではないこと、あくまで発売から決算資料が作成されるまでの期間の出荷本数であること、本体とパワーアップキットの扱いなどもバラバラであることから、断片的な情報しか得られておらず、各数値の比較可能性も高くありません。
なお、2018年には「信長の野望」シリーズ累計出荷本数が1,000万本を突破したとプレスリリースが出ていました。どういう集計なのかは不明ですが、この時点でシリーズは15作、1作あたり平均67万本が売れた計算になりますが、今回集計した数字から見るとかなり大きな数字に感じられます。1
また、2020年の「三國志」シリーズとコラボした焼酎のプレスリリースでは、「三國志」シリーズについて「グローバルでシリーズ累計出荷800万本以上」との記載があります。こちらもどういう集計なのかは不明ですが、この時点では「三國志14」まで発売されていたとのことなので、1作あたり平均57万本という計算になります。
注意点として、以下でご紹介するものはあくまで各決算期の資料に掲載されていた当時の出荷本数であって、そのタイトルの合計出荷本数ではありません。しかし規模感を測る上で目安としていい数字と思われます。また、以下で記載している発売日はWikipediaの記載を元にしています。
各タイトルの出荷本数と推定販売額
太閤立志伝V・三國志X
遡れる限りでもっとも古いシミュレーションゲームの出荷本数に関する情報は、2005年3月期中間決算の説明資料に掲載されている「太閤立志伝V(2004年3月12日Win版・8月26日PS2版発売)」と「三國志X(2004年7月2日Win版発売)」の出荷本数。「戦国無双 猛将伝」や「真・三國無双3 Empires」などと比べると、先日DX版が発表された「太閤立志伝V」は8万本、「三國志X」は5万本と、商業的にはあまり奮わなかったよう見えてしまいますが、無双シリーズが異例の大ヒットを飛ばしていたとも考えられます。
「太閤立志伝V」はPS2版の発売タイミングから見て8万本のうちのほとんどはWin版と思われますので、すべてがWin版(9,800円)とすると推定販売額は約784百万円。「三國志X」はすべてWin版(11,800円)として推定販売額は590百万円となります。
信長の野望 天道・創造・革新・天下創世
2010年3月期第2四半期の資料では「信長の野望・天道(2009年9月18日Windows版発売)」の国内出荷本数が5万本とされています。少なく見えるのは発売から2010年3月期第2四半期末(2009年9月30日)までは2週間足らずしかないためでしょう。
発売時の定価は不明ですが、シリーズの他のタイトルから1万円前後と考えられ、そうすると推定販売額は500百万円。
2012年3月期第2四半期の資料では「信長の野望」直近3シリーズ(このときの直近3作は天道・革新・天下創世)の平均概算値として30万本という数値が掲載されています。
2014年3月期通期の資料では「信長の野望・創造(2013年12月12日PC版・PS3版、2014年2月22日PS4版発売)」の日本・アジアでの出荷本数が22万本と掲載されています。
発売時のPC版の定価はパッケージ版10,780円、ダウンロード版9,325円なので、ざっくり1万円とすると推定販売額は2,200百万円。
次に2015年3月期通期の決算資料では「天道」「創造」の出荷本数がそれぞれ20万本・30万本程度であることが掲載されています(図の左側のスケールがちょっと変ですが……)。これは「天道」が発売から5年半、「創造」が1年半ほど経過した時点の資料なので、どちらもタイトルの合計出荷本数に近いものと思われます(わかりやすくするためにかなり単純化されているようなので、どれほど信憑性があるか疑問と言えば疑問でもありますが……)。
三國志13
2016年3月期通期の資料では「三國志13(2016年1月28日PC版・コンシューマー版発売)」の日本・アジアでの出荷本数が18万本(日本・アジア)であることが掲載されています。
価格はPC版・PS3/PS4版・Xbox One版にそれぞれパッケージ版とダウンロード版があり、8,294~10,780円。丸めて1万円とすると推定販売額は1,800百万円。
信長の野望・大志
2018年3月期通期の資料では「信長の野望・大志(2017年11月30日PC・PS4・Switch版発売)」の日本・アジアでの出荷本数が13万本とされています。
価格はSteam版10,780円、PS4・Switch版9,680円で、丸めて1万円とすると推定販売額は1,300百万円。
なお、2019年3月期通期の資料では「信長の野望・大志 with パワーアップキット」が主なタイトルとして掲載されていますが、出荷本数の掲載はなし。
三國志14
2020年3月期通期の資料では「三國志14(2020年1月16日PC・PS4版発売)」の日本・アジアでの出荷本数が26万本とされています。
価格はSteam版10,780円、PS4版9,680円で、丸めて1万円とすると推定販売額は2,600百万円。
さらに、2021年3月期第3四半期の資料では「三國志14 with パワーアップキット(2020年12月10日PC・PS4・Switch版発売)」の日本・アジアでの出荷本数が10万本とされています。1万円を超えるタイトルを2桁万本売っているのは小さくない売上だろうと思いますが、「ゼルダ無双」の350万本という圧倒的な売上の前ではさすがに霞んでしまいますね……。
なお、記事作成時に確認した時点で公式サイトには「三國志14シリーズ累計出荷本数50万本突破」と記載があります。
大航海時代IV with パワーアップキット HD Version
最後に、2022年3月期第1四半期の資料に「大航海時代IV with パワーアップキット HD Version(2021年5月20日PC・Switch版発売)」の日本・アジアでの出荷本数が7万本と掲載されています。
価格はPC・Switch版どちらも4,180円で、推定販売額は293百万円。オリジナル版がどれほど売れたのか不明ですが、リマスター版で7万本と「太閤立志伝V」オリジナル版リリース時の8万本に迫る出荷本数が出ているのは注目に値するでしょう。
まとめ
ここまで見てきたさまざまな情報を考慮すると、あくまで肌感覚としてはですが、近年の「信長の野望」「三國志」シリーズは各タイトル(パワーアップキット含む)で平均で多くて50万本程度、通常20~30万本程度の出荷本数と考えられます。ただし単価が発売当初は1万円前後と高いため、出荷本数に対する売上高はかなり大きめと考えるべきでしょう。
また、「太閤立志伝V」オリジナル版は発売から半年程度の期間で売上8万本と、「大航海時代IV」リマスター版と同水準(もちろん時期として15年以上ズレているので、さまざまな外部環境の変化というのはあるでしょうが)というのは意外なほど少なく感じられます。「太閤立志伝V」オリジナル版はその後廉価版やPSP版が発売されたので、累計で10万本程度は売れたのではないかと思いたい(希望的観測かもしれません)ですが、「DXが売れたら太閤立志伝VIももしかしたら……」という話はハードルとしては相当高いと考えたほうがいいのかもしれません。
実を言うと調べ始めるまではコーエーテクモのシミュレーションゲームというのはもっと売上の小さなものだと思っていましたが、新作発売間隔は長いものの、発売されると意外と売れているなという印象を受けました。
もちろん無双シリーズなどが属するアクションゲームのほうが市場として大きいのは間違いないでしょうし、コーエーテクモも企業としてはそういう市場でシェアを取りたいという方向性でやってきたのだと思いますが、日本でほぼ唯一と言っていいであろうシミュレーションゲームメーカーとしても頑張ってもらいたいところ。そしてぜひ太閤立志伝VIを作ってもらえたらと思います。
コメント
ある程度分かってはいましたが、信長の野望や三國志の売上本数はかなり少ないですね
コエテクは割高な値段設定とPK商法でよく文句を言われていますが、そうでもしないとやってられないのでしょうね(その代わり中身はもっと頑張れと思いますが)
パラドゲーはhoi4とか普通に200万本以上売れてますから、それくらい売れる見込みがないと安くできないでしょう
出荷本数ですからねぇ
実売どのくらいなのか…??
パラドでもCK3のDLCはステラリスやhoi4のよりもお高いですし 本数見込め無いタイトルはそうせざるを得ないのかなぁ
個人的にはhoi4よりもハマったゲームだけど今回高いって評判だから今後のdlcがどうなるのか気になるところ
安くなっても内容が付いてこないとねー
PKを出したり大きめの拡張を長いスパンで出すのは文句言われて安いDLCを連打するのが肯定されるのは何か不条理な気がする
4ヶ月で10ドルと1年で30ドルなら同じなのに後者だと高い/遅いと言われてしまう
ライザのアトリエは去年の時点で1,2で百万本を越えたというのに、シミュの方はこんなもんか。値段変わらんのになぁ。
市場規模が違うのか。これじゃKOEIも注力する先を考えてしまうな。
昔のタイトルは100万本以上売れてるがゆえの平均67万本でしょうね
実際何回もリニューアルされて出されていますし。
確かにおっしゃるように古いタイトルは繰り返しさまざまなプラットフォームでリリースされているみたいですし、そういうのも含めてコツコツ売れて全部まとめると1000万本というのは理にかなっていますね。
ありがとうございます。記事にも追記しました。
歴史シミュレーションなんてニッチなオタク産業だしな、世界的にも
三国志と戦国物以外のシリーズはどんどん見切りをつけてきたし、作ってくれるだけでありがたい事だよ
平成生まれだから提督の決断とかやったこと無いんだよな~
HOI4で日本プレイするの好きだから、リメイクして欲しい(売れるとは言ってない)
古いですがデータは有ります。
1998年9月時点で『三國志シリーズ』のパソコン版(1~6)は累計約110万、家庭用(1~5)は約280万です。
この数字は、明言されてませんが、おそらく売上だと思います。
出典:横山光輝『三国志 11巻』潮漫画文庫。シブサワがコラムを寄稿してます。
コーエーの歴史SLGの売上については、80~90年代中盤までが全盛期でその後は長期低落傾向でしょうね。
教えていただきありがとうございます。98年時点で既に400万本売れていたというのは、当時のパソコンやゲーム機の普及台数を考えるとものすごい売れ方ですね。