「Stellaris」の開発日記#230が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は水生種族の艦船とドレイクのアートについて。「Aquatics Species Pack」リリース前の開発日記です。
前回:開発日記#229――Aquatics Species Pack
開発日記
開発日記#230は、水生種族の艦船とドレイクのアートについて。
- 今回はコンセプトアーティストの視点から艦船デザインの開発過程をご紹介する。最初のアイデア出し、インスピレーション、視覚言語、それぞれの艦船クラスの外観の決定について述べる。
要約
- コンセプトアーティストの仕事は最初の漠然としたアイディアや定義に基づいてゲームの要素を視覚的に明確に解釈して提案することだ。この最初の段階での私たちの目標は、水生種族の艦船スタイルを探り、ある種の視覚言語を生み出し、それを使って既存のStellarisの世界にも合う水生種族の艦船セット全体を作ることだ。
- アートディレクターのSimon Gunnarsonはコンセプトアートチームに中心となるポイントを述べた。すなわち、艦船のスタイルは艦船を作った水生種族の知的生命体という起源を伝えなければならないが、アーティストはあまりにも文字どおりの解釈(例えば海の動物を宇宙船に変換するような)をすることを避けなければならない。また、伝統的でない有機的な形を目指す一方で、人工的に作られたものであることが明確でなければならない。
- こうしたコメントは私たちのアート実験のために非常に広いフェアウェイを残してくれるナビゲーション信号の役割を果たした。
インスピレーション
エルンスト・ヘッケルが描いた放散虫の絵(左)はタイタンの船首砲など多くの船体要素のインスピレーションとなった。現代の建築やデザインは有機的な形態の解釈の素晴らしい例だ(右)。
- 最初の一歩として、私(注:StellarisコンセプトアーティストのPavel Golovii氏)はそのテーマについてより多くの情報を得るようにしている。しっかりとした基盤をの上にいることを感じてスタートを切る助けになるためだ。
スタイルの発見
- 大きなデザインの実体から出発して、私はどのようなバランス・形状・パターンが水生種族の艦船とわかるものになるかを探す。ゲームにはすでに軟体種族が登場しており、これはいくらか水生種族のテーマと関連性がある。したがって、新たなデザインは同じ形の言語を使わずに異なるものとして読まれることが重要だ。
このスケッチシートはビューポートのようなさまざまな要素の模索と、小型・中型・大型の艦船のスケール感を得るための試みを示す。
- 大まかな形状やバランスについての考えがまとまり、テーマにうまく適合していることがわかったら、次は小さな要素を検討する必要がある。これは後に「ストーリー全体を書く」のに使われる視覚語彙を充実させるようなもので、すべての艦船クラスに向けたデザインだ。窓・エンジンその他のディテールは艦船クラス間で共有され、これによってスタイルが伝播し、スケール感もよりよいものになる。
- 最後に、色と素材の模索だ。この段階では、艦船に使用される素材のセットを考え出そうとしている。ここではコンセプトアーティストと3Dアーティストが密接に連携して作業する。素材の外観はゲームエンジンに大きく依存するため、芸術的・技術的な観点から可能性と限界を検証するのがよい。
艦船クラスのデザイン
巡洋艦のコンセプト。すべてのモジュールデザインを示す開発中のものだ。オレンジの線はモジュール間の継ぎ目を表す。コルベットのイラスト(左)はスケール感をコントロールするためのもの。
- 視覚言語が定義されたらその言語を使って「ストーリーを書く」時、すなわち艦船クラスのデザインだ。ここでは各艦船クラスを与えられたスタイルの中で独自の外観にしなければならず、より多くのルールや制限がある。
最初は調査船向けにデザインされた回転する円形の要素(中央)は、研究ステーション(左)や星系基地の科学モジュール(右)のような他の科学関連の構造物を特徴づけるものとなった。
- 艦船クラスにはそれぞれ特徴があるので、それを外観で表現することが重要だ。特にStellarisでそうすることが多いように、遠くから艦船を眺める場合には特に、バランスとシルエットは見る人が最初に読み取るものであり、このレベルでの差別化が重要になる。
タイタンの初期スケッチではジンベイザメやマンタをモチーフにした。途中でタイタンは前部砲の見た目が変わったが、「マンタ」のモチーフは建設船のデザイン(左端)に使われている。
- テーマに合わせて、多くの要素のデザインに海洋生物のモチーフが使われている。難しいのは、見る人にある種の連想を与えつつも鼻につかないようにバランスをとることだ。
コロッサスのデザイン。このコンセプトシートにはVFXのスケッチと触手の構造の詳細が描かれている(右下)。
- コンセプトアーティストの仕事は「どのように機能するのか」を考えることも多い。コロッサスのデザインは触手を最大の特徴とする非常に野心的なもので、触手がどのように曲がり、伸びるのか、その仕組みを考えるのに多くの労力を費やした。仕組みを実証するために3Dモデルが作成され、アニメーションがついた。
艦船だけではない
星系基地のデザイン。ステーションの構造と、前哨地からシタデルに至る変化の様子が描かれている。放射状の対称性はこのオブジェクトの静的な性質を強調している。
採掘ステーションのコンセプト。シルエットは工場を連想させ、その産業機器を示唆する。
- このゲームの宇宙には静止した人工物である宇宙ステーションがある。デザイン面では艦船の直系の子孫というようなもので、艦船の外観の多くを受け継ぎ、同じスタイルを共有している。しかし、ステーションの開発には独特のものもある。惑星や恒星を回る静的なオブジェクトで、それをバランスや形状に反映させなければならず、中心に向かって重み付けされ、どの方向も向いていない傾向がある。また、ステーションの種類によってはさまざまな機能を持つモジュールを追加することでレイアウトが変化し、複雑になるものもある。
コンセプトが完成した後は?
- コンセプトが完成してアートディレクターに承認されると、3Dアーティストに引き継がれてモデリング、テクスチャリング、マテリアルセットアップが行われる。これは外注先のアーティストの場合もある。
- 艦船のデザイン過程について説明できることはまだたくさんあるが、これは開発日記の範疇を超えてしまう。この記事を読んで少しでも興味を持っていただければうれしいし、なにより「Aquatic species pack」の艦船デザインを楽しんでいただければ幸いだ。
水生ドラゴンのモデリング
- 私(注:パラド社3DアーティストのDavid Strömblad Lindh氏)の仕事は当初、既存のドラゴンのテクスチャーセットを作り直すことだったが、アートプロデューサーがアートとゲームデザインの分野の担当者で構成されたドラゴンを扱う小さなチームを作るという素晴らしいアイディアを出してくれた。
- 私の仕事はコンセプトアーティストと並行して小さなプリプロダクションの一部として始まった。エンジンが扱えると私たちが考えていることを進め、シェーディングやライティングに関する制約を確認するためにアイディアをテストした。
- ドラゴンの姿を考えるにあたっては、水生種族のアートスタイルとドラゴンにまつわる伝承を組み合わせた。私たちは他の銀河系から来た神々しいドラゴンを作ろうと思った。それには生息している星系の中心的存在でなければならない。
(1)ハイポリのモデルでさらなるディテールの接合部が準備されている。(2)中程度のサイズのディテールを追加したモデル。(3)ディテールを追加したハイポリからの情報をベイクしたローポリのモデル。(4)VFX用のプレースホルダーを含む最終的なテクスチャモデル。
- コンセプトが承認されたらシルエットの最終調整にさらに時間をかけ、ディテールの追加を続ける。真っ白なキャンバスから始めるのは時には困難だが、赤ちゃんのような滑らかなモデルに経年変化や風化を加えようとするときには3Dスカルプティングもそれと同じだ。
- 最終製品がどのように見えるかの感触を得ることは重要であり、そのためにはモデルをできるだけ早くゲームに投入することが大切だ。そこからモデルを継続的にエクスポートし、ゲームでの変更点を確認するのを繰り返すのは容易だ。そうすればモデルに時間をかけすぎることはないし、最終的にモデルが機能していないことに気づくようなこともない。
- 自宅で仕事をするときはチームの他のメンバーとコミュニケーションをとることがより重要になる。
- このような作業がステラリスの3Dアーティストとしての仕事を面白くしている。
来週は水生種族のポートレートのアートプロセスについて。
コメント
水槽付きの宇宙船好き
なるほど
この前ボツにした艦船モデル売れや