「Victoria 3」開発日記#61が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回はデータの視覚化について。本体発売前の開発日記です。
前回:開発日記#59――AI
開発日記#60はMod制作に関する内容となっていますが、当サイトでは記事にしてご紹介しませんでした。
開発日記
開発日記#61は、データの視覚化について。
- 今回は「Victoria 3」のデータの視覚化について、UXに関する開発日記以降どのようになったか、そしてそれについて私たちが考えていることを述べる。
ポールはどれくらい怒っているのか? 視覚化されてもまだ推測している……。
- (この開発日記の最初の下書きはなぜ円グラフがまずいのかというものだったが、少し文章をトーンダウンさせるよう促されたので、円グラフは審美的にはきれいなものだが、データを伝えるにはひどいものだと結論付けておくことにする)
- ゲーム、特にパラド社のゲームにおけるデータの視覚化について語るとき、最初に思い浮かぶのは折れ線グラフかなんらかのチャートのように、データの視覚的表現をもたらすものだ。これは間違いではないが、データの視覚化は単に抽象的なデータをなんらかの形で視覚化することだけを指すのではない。定着している既知の傾向やパターンを使って、プレイヤーが持つ認知的な理解を高めることでもある。
キャパシティバーを一目見れば色によってその瞬間に必要なことがわかり、ツールチップでも色分けされた要約が表示される。
- わかりやすい例が色分けされているキャパシティだ。物事がポジティブなときは緑色、ネガティブなときは赤色となっている。人間は色に意味を持たせようとするため、いい悪いを表現するとき以外に緑と赤を使わないのがUXの一般的なルールだ。
今は赤字でも、新しい工場の建設をやめれば、経済のファンダメンタルズは問題ない……。
- 収支について、国家が赤字のときは白(中立)か赤(悪い)のどちらかで表示されるが、これにはどのような意味があるのか? 赤字はそれが不健全な経済を反映するまで赤では表示されないが、これはどういう意味か? すべての赤字が悪いわけではなく、建設のような国家への投資は特にそうだ。建設は固定的な支出ではなく一時的な支出に分類され、建設が終われば固定的な収支が黒字になると計算しているために、収支を中立的なトーンに保っている。
- これは資金が減っていてもファンダメンタルズは問題ないということを反映させるためだ。このファンダメンタルズが変化して赤になると、収支が崩れていて将来的に問題が起こるかもしれないという自国経済の大きな問題に気づくことができる。
- これは「Victoria 3」において繰り返し行ってきたことだ。私たちはその瞬間に起こっていることを静止画で見せるのではなく、データがどのように動いているのかという動的な傾向を知らせたかった。
最小化された建造物メニューと色分けされた金準備バーを見よ(通常表示でもバーは色分けされている)。
- どういうことか? 例として建造物リストを見てほしい。以前は現金準備が金色のみで、バーの動きを見て現金準備の推移を確認する必要があったが、過去のデータを使用してバーに色を付け、トレンドマーカーを追加して現金準備の増減を示し、それぞれ緑と赤に着色した。
- 経済がどのようになっているかのみならず、どこに向かっているかも一目でわかるようになり、そうした小さな変化がどれほど重要か、プレイヤーは驚くことになるかもしれない。これは生産性の高低を示す赤・白・緑の色分けと組み合わせて、さらに奥深い情報をもたらす。上の画像の砂糖産業は破綻してはいないものの、プレイヤーがなにもしなければすぐにそうなるだろう。また、兵器産業は完全に行き詰まっている。
新たな市場パネルを見よ。効果の大きさを示す修正された色と需給バランスバーが表示されている。
以前の市場パネル。使いやすいが、データの表示方法に欠点がある。
- こうしたデータの視覚化の変更の多くに、プレイヤーは気づかないだろう。というのは、うまく機能すれば自然に理解できるようになるためだ。しかしもうひとつ、市場概要タブの色を変更したことにも注目していただきたい。
- 私たちは緑と赤の収支の視覚化をやめることで、プレイヤーが市場システムをより明確に理解する手助けを行っている。これは「Victoria 3」であり、需給の不均衡は本質的に悪いものではないということを思い出してほしい。ある商品の不足を維持することは、ある産業を支えたり特定のPopの富を確保するために、意図的に行われることがある。私たちはあるものを赤と緑に色分けすると、必ずしもよいとは限らない、あるいはプレイヤーが望んでいない反応をさせることが本質的にあるということに気づいた。この場合、赤い数字が「悪い」ものであると考えてえ、その数字を緑にしようとすることがほとんどだった。
- 私たちは需給バランスバーも追加し、その数値が全体の売買量と価格スケールの範囲で意味することの影響を示す助けになっている。上の以前の市場パネルの画像で酒と砂糖の不足に関する相対的な違いがおわかりになるだろうか。均衡点からの補正値に対するさらなる視点をもたらすことで、プレイヤーが自分の行動の原因と結果や、もっとも重要な機会費用をよりよく理解できるようにした。単に価格の高さを見るなら家具や紙に目が行くだろうが、技術的には食品価格を下げると自国経済に大きな影響を与えることが示されており、それは需給バランスの値の下のバーで表現されている。青や金のバーが長いほど、その商品の需給不均衡が市場に与える影響は大きい。この影響がいいか悪いかは商品ごとに大きく異なるだろうが、それはプレイヤーが判断することだ。
- 私たちはこうしたなワークフローについて、実験とイテレーションを続けていく予定だ。リリース時にみなさんからのフィードバックを読むのを楽しみにしているし、フィードバックはアイディアの優先順位付けに役立てることになる。
質疑応答
Q:円グラフはそんなに悪いものなのに、なぜゲーム内で円グラフが使われているの?
A:選択を誤るとファンが暴動を起こすと聞いているためだ。
Q:赤と緑は色覚異常の人には適さないのでは?
A:そのとおり。私たちがキャパシティやほとんどの数値に対応した色覚異常モードを用意したのはいいことだ。
Q:スペースがあるところに小さなスパークライン(注:小さな折れ線グラフ)を追加すればいいのでは?
A:私(注:Vic3デザイナーのPDJR_Alastorn氏)は職業人生の8年間をスパークラインを機能させることに費やしたが、スパークラインを「Victoria 3」に追加したいとはまったく思っていない。熟考したわけではないが、スパークラインは線形データの円グラフのようなものだ。
次回は音響について。
2022年10月14日追記:開発日記#62は予定を変更してQAに関する内容となっていますが、記事にしてご紹介しませんので気になる方は直接フォーラムをご覧ください。
2022年10月21日追記:開発日記#63は音響に関する内容となっていますが、記事にしてご紹介しませんので気になる方は直接フォーラムをご覧ください。
コメント
パラドゲーやってると、日本の戦略ゲームが子供騙しみたいな作りになってると感じちゃうな。
個人的には日本のプレイヤー側にも問題があって、他国よりもキャラゲーやマイクロマネジメントを好むユーザーが多いせいで作る側もそういうゲームに偏りがちになるって印象があるわ。
そうか、確かに供給不足は市民の生活圧迫はするけど、製造側からしたら収入増えうるから絶対に悪いものではないのか…
むずかしいなあ
資本家は潤っても労働者に還元されないから富の不均衡が進んで共産革命が起きそう
食べ物を市場にあふれさせて国としては損はするけど、国民は食糧安くてラッキーって感じかな?
そこまで考える余裕無さそうw
資本家が儲けてもちゃんと徴税できれば国家全体としては良いのよね
昔は脱税、今はグローバル化による徴税逃れのせいでうまく回収できないだけで
徴税技術上げればちゃんと徴税できるヴィクトリア世界が優秀すぎる