船が流れ着いた島を開発していく資源管理・工場シミュレーションゲーム「産業キャプテン (Captain of Industry)」のレビュー記事。Steam自動化フェスのセール対象となっています。
ゲームの概要
- ジャンル:資源管理・工場シミュレーションゲーム
- リリース日:2022年5月31日(早期アクセス)
- 開発元:MaFi Games
- Steamで3,900円(なお、記事公開時点で開催中のSteam自動化フェスで-30%の2,730円となっています。日本時間2025年7月22日3時まで)
- 英語Wikiあり
- 記事執筆時点での最新バージョン:v0.7.7
「Factorio」や「Satisfactory」のような、いわゆる工場自動化シミュレーションと呼ばれるジャンルのゲームです。見捨てられた島に漂着した船の船長として、島の入植地を発展させていく……という導入のゲームで、炭窯を建てて作った炭で製鉄を行うような牧歌的な産業段階から、最終的にはロケットを打ち上げて宇宙進出までできるようになります。
本作は非常に歯ごたえがあり、気が付くと時間が飛んでいるというタイプのゲームです。1回のプレイに数十時間以上かかるような非常に長いゲームで、実を言うと私は本作をちゃんとクリアしないままこのレビューを書いているため、ゲーム終盤についてはわかっていませんし、通しでプレイされた方からすると的外れなことを書いているかもしれませんが、その場合はコメントにてご指摘いただけると幸いです。ただ、ゲーム中盤まででも本作の面白さは十分に感じられるはずですし、本記事ではそうした面白さをお伝えしたいと思っています。
なお、本作のように複雑なゲームは動作が不安定でバグが多いということも少なくありませんが、本作は動作が非常に安定しており、これまでプレイしてきて不具合に遭遇することはまったくありませんでした。万が一不具合に遭遇してもアップデートで素早く対応されるため、安心してゲームに時間をかけることができます。また、「産業キャプテン (Captain of Industry)」というタイトルから日本語訳の質に不安を感じますが、ゲーム中に文章を読むのはチュートリアルとツールチップくらいですし、プレイする上で支障はほぼありません。
ゲームの流れ
流れ着いた島で産業を興し、人口を増やし、研究を進めてより上位の技術をアンロックし、さらに島を開発し……ということを繰り返して入植地を発展させていくというゲームです。
ゲームを始めると、すぐにこの画面が表示されます。見捨てられた島に船が漂着したというところからゲームが始まり、最初に持っている資材を使って島の天然資源(島には油田・鉄鉱石・石炭・砂・地下水など多くの種類の天然資源が埋蔵されています)を集め、不足する物資は交易港を通じて近隣の集落から買い、食料・燃料の生産とさまざまな施設の建設を進めていくというのが序盤の展開です。
ゲーム序盤は事実上のチュートリアルとなる「目標」が与えられ、具体的にプレイヤーが何をすればいいのかについて指示があります(無視することもできます)。目標を達成することで建設部品や軽油燃料などを獲得でき、それを使ってさらに施設建設を進め……という形で初期の入植地を発展させていくことになります。
施設のほとんどは建設するのに建設部品という製品が必要になるため、島を発展させるにはこの建設部品を製造していけばよいということになります。また、本作には巨大な研究ツリーが用意されており、研究を進めることでより効率的に製品を製造できる施設やアンロックされていきます。そして、そうした活動を支える前提として電力・労働者・食料・軽油燃料・保守点検が必要です。つまり、電力・労働者・食料・軽油燃料・保守点検を確保した上で、建設部品を製造して施設を建て、かつ研究を進めていくというのが基本的なゲームの進め方です。
電力・労働者・食料・軽油燃料・保守点検
本格的に電力を供給するための施設である発電機と、それを稼働させる蒸気タービン・ボイラー・フライホイールなどの諸施設。
電力・労働者・食料は言わずもがなの内容で、施設・車両の稼働には電力や労働者が、労働者には食料が必要だというのはわかりやすいと思います。本作では労働者の通勤は考慮されませんが、住居は考慮され、労働者を増やすには住居の空きが必要です。
軽油燃料生産などを行う石油コンビナート。上部にある石油揚油機で汲み上げた原油を中央の蒸留塔(ステージI)で重質原油・中質油に分離し、タンクを挟んで下側左にある蒸留塔(ステージII)で中質油を軽油燃料と軽質原油に分離しています。左側では蒸留塔(ステージI)で生成される酸性水を脱硫したり、中央下側では軽油燃料をさらに加工してゴムを製造していたりと、石油化学にまつわる施設が集中しています。
軽油燃料は車両を動かすのに必要です。特に最序盤はベルトコンベアが建設できず、物流がほぼトラックによって行われる上、最序盤は発電にも必要であるため、軽油燃料の不足は致命的です。本作の最初のプレイで軽油燃料が枯渇し、どうしようもなくなってやり直しということになった方は多いのではないでしょうか(もちろん私もそうです)。
保守点検を生み出す保守点検施設に必要な製品を搬入する生産ライン。保守点検施設からは再生利用品が副産物として産出され、これは資源ごみ選別場に持ち込むと鉄屑や銅屑などになってより効率的に鉄や銅を生産できます。
保守点検というのは文字どおり機械の保守点検を抽象化した資源で、施設や車両の数が増えていくと必要量も増加していきます。最序盤はほとんど必要ありませんが、入植地を発展させていくといつの間にか不足していて、供給を十分増やすまでに施設や車両が次々と故障し、連鎖的に島の経済が破綻に向かうという場合があります。
建設部品と研究
建設部品とその材料であるコンクリートブロックの生産ライン。右側にコンクリートブロックの原料を集め、左に向かって生産する建設部品が高度になっていくように設計してあります(薄く白く表示されているのは計画だけで建設していないもの)。建設部品はI~IVの4段階があり、より高度な施設の建設にはより上位の建設部品が必要になります。
建設部品は施設の建設に必要で、この建設部品の生産量が島の経済発展速度を左右します。前節の必需品と異なり、生産しなくても島の経済が破綻することはありませんが、本作では(難易度にもよりますが)原油や地下水など枯渇の早い天然資源もあるため、あまりに経済発展が遅いとそうした資源の探索と開発に時間と資源を取られ、さらに経済発展が遅れ……ということが起こり得ます。
このように書くと追い立てられるようにどんどんゲームを進めていかなければならないのかと思ってしまいますが、実際に遊んでみると追い立てられるというほど切羽詰まったテンポを強要されるという印象ではありません。あくまでゲームがダレそうなくらい遅いと資源が尽きて新たに開発する必要が出てくるというバランスです。
本作の研究ツリー。序盤は基礎的な施設に限られますが、研究が進むと施設・産業も高度化していき、これまでの産業がより効率的になったり、新たな製品を生産できるようになる一方で、公害も激しくなります。そのため、公害を抑制したり廃棄物をよりよく処分したりするための施設なども登場します。最終的にはロケットを打ち上げて宇宙探査を行ったりもできるようですが、私はまだそこまで到達できていません。
研究ポイントを産出する研究室(左側の三角形の施設)と、研究室で使用する研究用機器の生産ライン(中央)。技術ツリーが進んで一定以上高度な研究を行うにはより上位の研究室とより上位の研究用機器が必要ですが、上位の研究室の建設と上位の研究用機器を生産する工場には上位の建設部品が必要になります。
本作では膨大な数の技術を研究していくことで徐々に産業を高度化し、入植地を発展させていくことができますが、それには研究ポイントが必要で、研究ポイントは研究室によって産出されます。研究は建設部品の生産と並んで島の経済発展速度を左右する要素で、あまりに遅いと建設部品の節で説明したように天然資源が枯渇してさらに経済発展に時間がかかることになり得ます。
研究には施設・電力・労働者の他にユニティ(入植地の人口が幸福だと生み出される資源)を必要とします。建設部品の生産と同じく、研究をしなくても島の経済は破綻しませんが、研究を進めて島を発展させるには入植地の人々の生活水準も考慮する必要があります。ただ、ユニティはそれほど産出が厳しいバランスではないので、人口を養えるだけの食料が供給できていれば必要最低限のユニティは得られるはずです。
施設と車両
鉄鉱山とその近くに建てられた製鉄・製鋼施設群。画面奥側の鉄鉱山から鉄鉱石を採掘し、画面左奥の鉱石選別施設で鉄鉱石を選別し、画面中央の溶鉱炉で溶融させ、溶融鉄・溶融鋼を画像さらに手前の成形施設に送り、そうしてようやく鉄板・鋼材となります。生産時には3Dモデルが動くため、見ていて楽しくもあります。
ここまで説明してきた要素はほぼすべて、施設が天然資源を加工して製品にすることで賄うことになります。天然資源の採取にはショベルカーなどの車両や石油揚油機のような採取施設が必要で、採取した天然資源は施設によって複数の段階の加工を行うことで製品にできます。施設同士の間や生産施設から消費地への運搬には、ベルトコンベアやトラックが必要です。こうした供給網を作り上げ、それを発展させていくというのが本作の目的であり、楽しみでもあると言えるでしょう。
プレイ感
いいところ
第一に、上に書いたとおり、必要な物資を生産する供給網を作り上げていくという作業が単純にとても楽しめています。この点が本作最大の、そして唯一の強みであるように思えます。ゲーム全体がこの面白さに特化しているという印象で、そういうことに興味がないというプレイヤーには本作は向かないでしょう。
最初はコンテナを使った住居に土を掘り返しただけの農場からジャガイモを供給し、その横で炭窯と溶鉱炉(最初から溶鉱炉なんて高度な施設ができるんかい!という感じはありますが)を建てて鉄屑から細々と鉄板を作るところから始まり、鉄屑は途中でなくなるので鉄鉱石を掘って鉄板の原料にし、炭窯では石炭(炭窯でできるのは木炭ですが、ゲーム中では「石炭」としてまとめられています)も不足するので炭鉱で石炭を掘り、そうこうしているうちに車両の燃料が不足するので石油揚油機と蒸留器を建てて軽油燃料を作り……というように、ゲーム中では常に何かしらの産業をいじっていくことになります。やることと言えば施設を建ててそれを何らかの手段でつなぎ合わせるというだけなのですが、島全体の産業配置や細かな施設同士の接続の問題など、考えることは山ほどあり、どうすれば効率的かつ問題の少ない供給網を作れるかということに悩むのは非常に楽しい体験です。
第二に、ゲームバランスやゲーム展開も少なくとも私がプレイしたゲーム中盤まではよくできています。「ここまでゲームを進めるとだいたいこれが足りなくなる/新たにこういうものが欲しくなる」というところで、そうしたものを供給したり代替したりする施設がアンロックされるという展開がちゃんと作られています。「どう考えても無理をしないと必要なものが手に入らない!」というようなトラブルには今のところ遭遇しておらず、滑らかなゲーム展開が楽しめるという印象です。
第三に、ゲーム内容そのものについてではありませんが、本作は複雑なゲームシステムの割にバグが少なく、動作が非常に安定しています。本作は遊ぶのにかなり時間のかかるゲームで、不具合でセーブデータが使えなくなると非常にがっかりさせられるタイプのゲームだと思いますが、そうした不安なく腰を据えてしっかり遊べるゲームだと感じました。複雑なシステムのゲームは常に不具合があちこちにあり、それによってセーブデータが壊れる(そしてそれまで使ってきたプレイ時間が無駄になってしまう)ことに怯えながら遊ばなければならないものが多いですが、その点で本作は不具合対応も迅速ですし、非常に好印象です。
悪いところ
正直に言うと、明確にこれはまずいだろうと感じるようなポイントは本作には見出せません。ゲームとしての楽しみが明確で、動作が安定しており、ゲームバランスもいいというしっかりした作りのゲームだと感じます。以下で挙げる点はいずれも好みの問題やゲームの特性上どうしようもない(が、そうではなかったら……)ような点にすぎず、以下のような点があるからと言って本作に否定的な評価を下す理由にはならないと思っています。
第一に、前節でも少し触れましたが、1ゲームが非常に長いという点が挙げられます。本作はさまざまな品目の資源・製品を管理しながら産業発展を進めていくゲームなので、プレイヤーは常にゲーム中のさまざまな点に気を配る必要があり、そうなると高速でゲームを進めるわけにはいかず、どうしてもゆっくり時間を進めて各所に目配りをしながらやっていくということになるはずです。そうするとなかなかゲームが進行せず、1ゲームに平気で何十時間、長ければ100時間以上かかることにならざるを得ません。仕事や学業で忙しくて1日1時間くらいしか遊べないという場合、単純計算で1ゲーム終了まで1か月以上かかることになるわけですが、それだけ長期間ゲームに対するやる気を保てるかというのは、本作を遊ぶ上でのそれなりに高いハードルになってしまうように感じます。
第二に、本作はストーリー性がほとんどなく、そもそも人間が登場しない(労働者も数字上の存在にすぎない)というドライなゲームであるという点が挙げられます。もちろん資源管理・工場自動化ゲームを遊ぶようなプレイヤーはそうしたストーリーなど不要という方もたくさんおられるでしょうが、少しくらいそうした「潤い」がほしいという方にとっては物足りなく感じるでしょう。
実を言うと私は工場自動化ゲームの代表作である「Factorio」が合わなくて返品したことがあり、本作も合わないのではないかと思いながら遊び始めたのですが、気が付くといくつも入植地を作ってはそれを壊滅させていました。通常の難易度(キャプテン)では始めたばかりの頃はかなり難しいゲームに感じると思いますが、難易度はいつでも変えられるので、最初は難易度「船員」や「カジュアル」設定を使うなどして慣れていくのがいいのかもしれません。
なお、本作は記事公開時点で開催中のSteam自動化フェスで-30%の2,730円となっています。日本時間2025年7月22日3時まで。
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