「Victoria 3」開発日記#142が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回は2024年の振り返りについて。1.8リリース後の開発日記です。
開発日記
開発日記#142は、今後の計画について。
- 2024年最初のリリースは3月のアップデート1.6だったが、私(注:ゲームディレクターのWizzington氏)はこれが2024年の最低点だったと思っている。これには多くの素晴らしい改善が含まれていたが、かなり荒削りの状態でリリースされ、予想に反して大多数のユーザーにとって全体的なパフォーマンスが悪化していた。パフォーマンスの向上がアップデートの目標のひとつであると明言していただけに、正直なところ私にとっては少しばかり恥ずかしいことだった。
パフォーマンスダッシュボードではもっとも遅いイベントなどのより具体的なデータも追跡しており、最適に書かれていないトリガーが全体のパフォーマンスに影響を及ぼしたときに素早く発見できる。黄色や赤色が本質的に悪いわけではなく、複雑なイベントがより多くの計算力を使っても、妥当なレベルなら問題はない。
- このようになった理由は単純で、多くのパフォーマンス改善を行ったにもかかわらず、他の変更(主にAIの改善と移住の変更)がそれ以上にパフォーマンスを低下させたためだ。こうしたことから私たちはパフォーマンスを監視する内部ツールが不十分であるということに気づき、私たちの技術責任者は私たちが「パフォーマンスダッシュボード」と呼んでいるものの拡張と改良に相当な時間を費やした。これは現在ではパフォーマンス全体の監視だけでなく、役に立つ詳細も多くもたらしてくれる。例えばゲームのもっともパフォーマンスを必要とする部分(Popの成長や貿易量の調整など)のヒートマップと2週間の履歴を持ち、ある部分の変更によってパフォーマンスが低下した場合に即座に発見し、対応できるようになっている。これとさらなるプログラミングリソースの追加割り当てによって、1.7と1.8では新機能があるにもかかわらず大幅にパフォーマンスを向上させてリリースできた。
- 1.6のよい面としては、このアップデートは「UXアップデート」と呼ばれ、単純なプレイしやすさについての変更や編制のマップマーカーの統合や移民マップモードの追加などの重要な変更などが含まれた。もっとも重要で好評だったのは国勢調査パネルで、これによって人口の詳細を掘り下げられるようになった。
- 6月にリリースされた1.7と「Sphere of Influence」は間違いなく最高点だった! 拡張もアップデートも非常に好調で、コミュニティには非常に好意的に受け入れられた。施設所有権の見直しについては、外交重視の拡張に開発期間の多くを費やしてゲームの経済的中核を見直す必要があるのかは内部で議論があったが、これによって対外投資を付け焼刃のシステムではなく施設建設と自律的投資の自然な延長として実装できたし、時間をかけた価値があったと考えている。
- 勢力ブロックについては、当初の構想では国家間のさまざまな協定を含むより広範な機能であることを意図していたが、実際の実装ではすべてを少しずつやろうとするこのアプローチに苦しみ、かなり物足りない結果に終わった。QAとベータテスターからのフィードバックを受け、私たちはこの機能を帝国主義的なプロジェクトに絞ったものとした。この決断については勢力ブロックの開発日記でも批判や反発を受けた。コミュニティには焦点が絞られすぎていると感じている人もいたためだ。最終的には私たちは正しい判断を下したと信じている。薄く広く物足りない機能よりいくつかのことをうまくこなす機能を追加したほうがいいと思っているためだ。
- グレートゲームについては、この目標自体はかなり好評のようで、関連する国家のプレイ数が顕著に増加したが、この目標なしでプレイするとそうした国家に追加したコンテンツから外れてしまうと思われている。これは私たちのコミュニケーションのまずさによるものであり、目標が体験をどのように変えるのか、目標が有効でない場合でも国家固有のフレーバージャーナル記事から締め出されるわけではないということを、より明確に示す必要がある。
- AIはこのアップデートで特に外交面に関して大きく改善された。catalystシステムとAIがプレイヤーに対して外交姿勢を変えたときにその理由とともに通知するのは、個人的にとても満足しているもので、今後「Victoria 3」のAIをどのように改善していくかの手本となる。私は「Victoria 3」のAIが興味深い敵であると同時に興味深い味方であり、利己的でありながら大部分は理性的であり、プレイヤー自身が下す決断でなくても、なぜそのような決断を下すのかをプレイヤーが理解できるようにしたいと考えている。これはcatalystシステムが提供する透明性を必要とするアプローチであり、以前の不透明なブラックボックスとは対照的だ。もちろんここでやるべきことはまだたくさんあるし、AIの改善は「完了」するものではない。したがって、ここでの主な収穫はAIを単に賢くしたり、プレイヤーに挑戦するのがうまくなるだけでなく、より理にかなったものにしたいということだ。
- 1.8と「Pivot of Empire」については先日の開発日記に書いたが、インドのコンテンツのバランスをさらに見直し(特にジャーナル記事「Unstable Raj」は、テレメトリーではプレイヤーベース全体の完了率が意図していたよりもかなり低い)、1.9ではさらなるバランス調整が必要だという結論に至った。具体的には難易度を調整すると同時に成功した場合の報酬を改善し、ジャーナル記事に失敗してもゲームがそれほどひどい状態にならないようにしたい。
- 1.8と「Pivot of Empire」から得た教訓は、ジャーナル記事を設計する際になぜジャーナル記事なのかという点に注目する必要があるということだ。つまり、なぜそのジャーナル記事を完了したいのか、それはどのようなプレイヤーのファンタジーを満たすためなのか、どのようなプレイスタイルをサポートするためなのか、どのような報酬を提供するためなのかということであり、その理由をプレイヤーに伝えることだ。複雑で困難なジャーナル記事を完了して結果と報酬を示されたときのプレイヤーの反応が「へえ、これだけ?」であってはならない。
- 予想以上に好評だったのは、ステート・ハブの名称変更だ。私たちは既に継続的に名称変更機能を追加することを計画していたが、大量のポジティブなフィードバックを得たことでその野望はさらに強まった。
- 「Pivot of Empire」に関して拡張パスがないことについて強く否定的な反応があるが、今後も拡張パスは絶対に出る。現在そのようにしていない理由は、拡張パスは大規模拡張で終わるのではなく、大規模拡張で始まるときに私たちにとってもっともうまく機能することがわかったためだ。
- この開発日記の最後に、社内では「2024年は『Victoria 3』が本領を発揮した」と言われていることを紹介したい。発売時に問題があり、リリース後の初期にミスを犯したことは明らかだが、1.5以降、特に1.7と「Sphere of Influence」以降はプレイヤーベースの素晴らしい成長とコミュニティ感情の大幅な改善が見られた。2024年は「Victoria 3」にとって非常によい年であり、この成功に続けて深みとフレーバーを加え、社会経済シミュレーションの仕組みを深く掘り下げることで、これまで私が携わったどのゲームともまったく異なる、特別なゲームシリーズを発展させていきたいと思っている。
次回は1.9での貿易の見直しや戦線の改善などについてだそうですが、しばらく間が空いて春先になるとのこと。
次回:開発日記#143
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