「Crusader Kings III」開発日記#104が公開されていましたので、その内容をご紹介。今回はAIについて。1.7リリース前の開発日記です。
開発日記
開発日記#104は、AIについて。
- グランドストラテジーゲームで特に難しいのはよいAIを作ることだ。プレイヤーはAIに挑戦的でいいプレイができるものであってほしいと思うが、キャラクターの行動でプレイヤーの楽しみを台無しにしてほしいとは思わない。私たちはコミュニティ内のさまざまな場所で多くの議論やスレッドを読み、改善の余地があると認識している。夏の間、私たちはAIのいくつかの側面、特に経済面(と外交面も少し)に取り組んでいた。戦争については後で説明するひとつのことを除いて注目していない。今回の開発日記で紹介したすべての変更は今後のアップデートでリリースされる予定だ。
- プレイヤーがうまくやろうと思うには、AIがプレイヤーと一緒にうまくやれることを示さなければならない。AIが素晴らしいものだったり最適なプレイができる必要はない(実際、そうしたものは没入感を壊してしまう)が、進歩し得るものでなければならない。私たちはCK3のAIがよい挑戦を提供でき、プレイヤーにもっとうまくやろうと思わせることができるくらいにうまくやれることを望んでいるし、それをチートなしでできるようにしたいと思っている。
- 私たちがやったことについて掘り下げる前に、経済に関して私たちが解決しようとした課題を説明したい。
- 経済に関して、現在はすべてのAIが同じように振る舞っている。私たちはAIが稼いだ資金をどう使うかについて、性格が影響するようにしたかった。プレイヤーはAIの性格特性に目を向けることができるようにするべきだし、それで彼らがやろうとすることがおおよそわかるようにすべきだ。
- プレイヤーは状況にかかわらず、リスクを取る価値がある最適な資金の使い方を理解している。私たちはAIにもそれを理解させ、彼らが繁栄するような、ゲームの段階に適した決断を行えるようにしたいと考えた。
- 私たちはAIが建造物を建設し、世界が時間経過で発展していくようにしたいと考えた。今のところ、建造物が長期的にもたらす価値をわかっているのはプレイヤーだけで、AIは資金のほとんどを戦争に費やしている。
- 領主の権力はその領地にある。AIもプレイヤーと同じように権力基盤を作り上げ、時間とともに育てていくべきだ。
- 外交について解決しようとした課題は以下。
- AIの領地は崩壊しやすく、再建されない。膨大な数の伯爵や公爵は近隣の王の支配を受け入れようとしない。私たちはAIがプレイヤーと同様に、外交的に拡大できるようにしたいと考えた。
- AIは外交的策略であれ秘密の評議会の行動であれ、安定化のために利用可能な手段を惜しむべきではない。
- AIは圧政(Tyranny)が適切な場合もあることを理解すべきだ。もちろん合理的な範囲でだが、ここでは性格と関係が大きな役割を果たす。今のところ、AIはどんな状況でも進んで圧政を行うことはない。
- 戦争については以下。
- 現実ではモンゴル人は存亡を左右する脅威だったが、CKではそうではない。私たちは彼らを現実のようにしたいと思っている。これを可能にする重要な変化は、軍隊を目標の近くに集めることができるようになったことだ。
経済
- CK3での成功の鍵は強力で安定した経済であり、それは建造物(と常備軍(MaA))によってもたらされる。私たちはAIの資金の使い道を変え、より領地を強化するようにした。このようにするにあたって、私たちはAIが例えばあまりに倒しやすい相手にならないように配慮した。この変化の骨格となるのが経済的原型(Economic Archetypes)のフレームワークだ。
経済的原型
- AI領主がとり得る経済的原型は4種類あり、その中で好戦的(Warlike)・用心深い(Cautious)・建設者(Builder)の3つが重要だ。この3つに当てはまらない場合は予測不能(Unpredictable)となり、上記3つの原型を半ばランダムに使用する。
好戦的
好戦的な性格の例
- 好戦的の場合は常に宣戦布告をする準備をしようとする。これは現在のAIの振る舞いにもっとも近く、他の選択肢を考える前に資金を軍事費にする。長期間平和になると軍資金を領地の発展に使うようになるが、彼らはゲーム序盤であっても戦争準備を第一にする。
- 大胆で強欲なAIは好戦的になる傾向がある。一般的にはWrathful・Impatient・Sadistic・Ambitious・Vengeful・Irritable・Zealousが含まれる。部族制の領主や気風(Ethos)「Bellicose」を持つ文化もこの原型になりやすい。イベリアの闘争(struggle)で敵対フェーズにエスカレートさせたいキャラクターも同様だ。
用心深い
用心深い性格の例
- 用心深い原型では宣戦布告されたときの備えをしておきたいと考える。彼らは攻撃的な戦争を嫌い、ゆっくりとした積み上げを好む。自分の階級に応じて最低限の資金を貯め、建造物や常備軍に投資する際は自分の軍備、平和が続いた期間、同盟者の数、畏怖(Dread)の水準を評価する。こうした要素に応じて彼らは「安全」を感じ、前述の最小バッファーを維持しながらさらなる資金を投資する。
- 大胆でないAIは用心深くなる傾向にある。一般的にはPatient・Calm・Craven・Paranoid・Contentが含まれる。Fickle・Lunaticの特性を持つ領主は用心深くはならない。気風「Stoic」や文化的伝統「Stalwart Defenders」を持つ領主もこの原型になりやすい。
建設者
建設者の性格の例
- 建設者はすべての資金を領地に投資しようとし、他の原型より経済に関する建造物や新たなholdingsを建設する傾向にある。彼らは強力な派閥などが直接の脅威となっている場合にのみ軍資金を貯める。すべての原型の中でもっとも希少だ。
- 建設に熱心で、特に戦争に傾倒していない大胆なAIがこの原型になる。一般的にはCalm・Patient・Diligent・Generous・Stubborn・Profligate・Improvidentが含まれる。フォーカスを「Domain」にしている領主もこのカテゴリーに入る傾向がある。
予測不能
予測不能の性格の例
- 予測不能は特定のなにかに傾倒しているわけではなく、どのような戦略もとる。彼らはランダムに経済を発展させることもあるが、その度合いは大胆さによって補正される。そうでない場合は最低限(好戦的よりも高い度合い)は領地を発展させ、適切なバッファを保ち(用心深い原型より低い度合い)、通常のペースで戦争しようとする。
- 上記のいずれにも当てはまらないAIはこの原型に分類される。
経済的段階
- AIは首都開発(Capital Development)・領地開発(Domain Development)・後期開発(Late Development)の3段階に分かれている。最初の2つは「初期」段階で、ゲーム開始後100年程度で完了するはずだ。各段階でそれぞれAIの資金の使い道を変化させ、その後上記の経済的性格によって再び補正される。
初期の首都開発
- 開発すべき最重要のholdingは首都だ。AIは他の多くのことをする前に首都の空きスロットをすべて埋めようとする。この段階では原型はあまり重要ではないが、すぐに終わる。
- これはAI全体にかなり大きな影響がある。以前より早く経済を立ち上げられるようになることで、ゲーム中盤以降に彼らがずっとうまく振る舞っているのを見かけることになるだろう。現在のバージョンではゲーム終盤まで多くのプロヴィンスで建造物スロットが空いているが、今後はそうしたことは非常に少なくなる。
初期の領地開発
- 第二段階ではAIは副次的な伯爵領に第一レベルの建造物を建設することで開発しようとする。多くのAIはこの段階で常備軍を購入したり、首都を引き続き開発したりする。というのは、なにを建設するかは重み付けがなされたランダムであるためだ。
- この段階では原型が明確になる。好戦的なAIは軍資金を貯め、用心深いAIはバッファー分の資金を貯めるなどだ。
- AIの領地全体に第一レベルの建造物が建つと、後期の経済的振る舞いに移行する。
後期の経済的振る舞い
- この段階では原型が完全に発現する。建設者AIは常に自分の領地で建設を行い、用心深いAIはバッファー・同盟相手・強力な軍を求め、好戦的なAIは長年平和が続いている場合に限って投資するなどだ。
- AIが頻繁に宣戦布告しないようになっているにもかかわらず(以前はすべてのAIが常に戦争に備えていた)、世界の戦争は減らない。しかし戦争はより激しく刺激的だ。というのは、AIが一般的により強力な経済的基盤を持っているためだ。
現在のバージョン(1.6.1.2)と次のアップデート(1.7.0)の間の比較
- ここで現在のバージョンと次のアップデートを比較してみよう。サンプルサイズは200年で、現在のバージョンとの比較ではモンゴル帝国が崩壊していないこと以外に大きな差はない。
外交
- AIの欠点は与えられたツールを十分に使いこなせず、散発的にしか使わず、ほうこうせいもないことだ。AIが正確に合わせて振る舞うのはいいことだが、称号剥奪など多くの場合で性格はまったく意味をなさなかった。私たちは小さなことを積み重ねて体験を大幅に改善した。
領地の統合
- AIは強力な首都と領地を持とうとするようになり、なによりもまず首都公爵領内の正当な領地統合を優先するようになった。例えば、フランス王はIsle-de-FranceとValois公爵領内のすべての伯爵領を領有しようとする。そのためにAIは、性格によって補正されるが、多少の圧政を受けてでも称号剥奪や引き込みを行おうとする。参考までに、これまでのAIは常に剥奪する理由を待ち、圧政を受けようとはしなかった。
- すべてのAIは性格に関係なく首都伯爵領と少なくとも小さな領地(3程度)を持とうとする。JustとGenerousはここでやめる。AIの合理性によるが、AIは多かれ少なかれ圧政を受ける。賢明で合理的な領主は再び圧政を受ける前に減衰を待つし、非合理的な領主は領地を統合するために高い圧政度を保つ。AIは剥奪を検討するために資金や軍事力に着目し、勝てそうにない戦争を避けようとする。もちろん関係も考慮するため、AIが友人や恋人、子供などから剥奪することはない。
首都公爵領を統合したAlba
- これは平均的なAI領主がより強力になることを意味する。上で述べた経済的な変化と合わせて、経済的に強力なAI領主が生まれる。
- また、AIは所有する伯爵領内の他の男爵領を剥奪するようにもなっており、これは寺院を領有できる氏族制領主に特に役に立つ。このため、氏族制の土地の多くで特に初期は強力な経済を持つようになり、一般により有利な地形を持つヨーロッパやインドの封建制勢力に比肩するようになる。
封臣化
- 封臣化とAIによるその使用は私たちが大きく変更した点のひとつだ。これはAIの変更だけではなく、キャラクターがプレイヤーを主君として認めるかに影響するすべての補正のバランス調整も行った。
- ここでの副次的な目標は封臣化を軍事的征服の現実的な代替物にすることであり、同時に封臣化受容度のもっとも大きな源泉を弱め、さらに相互作用的な補正を追加した。詳しくは述べないが、外交的な宮廷(Diplomatic Court)とTrue Rulerからの補正が引き下げられ、Average Powerful Vassal Opinion(-20/+20)のような補正を追加し、軍事的な強さに代わるものを奨励している。また、氏族制の領主に関する評価補正を調整し、(要求の少ない契約により)封建制の領主が封臣化について本質的に有利にならないようにした。
- AIは隣人が封臣化を受け入れるかより頻繁にチェックするようになり、隣国を外交拡大の標的とみなすと積極的に懐柔(sway)したり友人になったりしようとする。つまり、プレイヤーのみが封臣化を使えるわけではなくなり、時間をかけすぎるとAI領主がプレイヤーの近隣にいる小規模領主をを支配するようになる。
新たな封臣化の補正の例
- 実際のところ、これはつまり地域がバラバラで停滞している期間が短くなる一方、封臣にさまざまな文化(あるいは教派)が入り乱れた、より興味深い領地を作る。
聖戦
- 聖戦において防衛側と同じ教派を持つ領主は、ゲームでは防衛側に参戦するとされているにもかかわらず、決して参戦しないことが判明した。これは私たちのミスで、トリガーの一部が間違ったキャラクターを参照していたため、誰も参加しようとしなかった。現在はこれを修正し、敵に与する領主が適切に感じられるようにもしている。
- 教派の境界を守るのは重要であることをAIが意識するようになった。性格や経済状況に応じて、侵攻してくる異教徒に対して教派を同じくする領主を助けるようになった。Zealousかつ大胆なAIは真っ先に参戦し、皮肉屋で臆病な領主は参戦しない。標的の封臣は参戦しないが、近隣領主の封臣は参戦するかもしれない。一般的に宣戦布告をするときは近隣地域のみを見るだけでよいが、狂信的な領主は遠方から参戦してくるかもしれない。
- 実際には聖戦を始める前にはよく準備する必要があるが、ここで近隣領主を調べておくのはプレイヤーの助けになる。性格によって彼らがプレイヤーの標的を支援する場合でもそれほど驚かずに済むはずだ。
- ゲーム的には中東がカトリックや正教に完全に征服される可能性はかなり低くなった(ゲーム終了日まで走らせたゲームのうち90%以上がそうなっていたようだ)。宗教的な大混乱が起こることは稀になったが、そうなった場合は定着する可能性が高くなった。というのは、好都合な時期に強力な領主によって起こっただろうからだ。
領地の安定性
- AI領主は自分の領地の状態をある程度把握し、その安定性を高めようとするはずだ。まずAIが懐柔する可能性が高まり、その相手を選ぶ際には重要人物を選ぶ可能性が高まっている。例えば勢力の司祭、密偵長、怒れる有力封臣をずっと頻繁に、長期間懐柔するようになった。これは友人となる策略にも当てはまる。
1389年フランスの封建契約の例
- 腐敗した気質を持つAI領主は評議会の任務「秘密の発見(Find Secrets)」を使用する。これは以前ならAIが使わなかったものだ。彼らは露見する確率が高くない場合、封臣か宿敵を標的とする傾向がある。得られたフックは脅迫して封建契約を改善するために使用する。策略「フックの捏造(Fabricate Hook)」をアンロックした領主は契約を変更できる封臣に対してより頻繁にこれを使うようになった。つまり、AI領主と封臣の契約は世代を経るごとによりよいものになっていく傾向がある。
- 一般に、私たちはAIが特定の評議会任務を使用するのを見送った。AIは特定のこと(封臣の封臣に寵愛を授けること)を完全に避け、短期的に彼らを支援する任務(敵対的な策略が有効なときに策略を支持する、資金が非常に少ないときに軍の組織化を行うなど)により積極的に切り替えるようになった。
- 他にも、なだめたい封臣に子供の教育を任せたり、スムーズな継承のために子供に封臣の言語を学ばせたり、支配度(control)が非常に低い伯爵領が複数ある場合は執事長(Seneschal)を雇用するなど、多くのことをAIに教えた。
- こうした変更のすべてによってAI領地が安定し、まずい戦争や混乱した継承から立ち直りやすくなる。
現在のバージョンとアップデートバージョンの地域の比較
- 現在のバージョンとアップデートバージョンの地域を比較してみよう。上の画像はゲーム開始から200年経過している。
- この変更によって、どのゲームでも同じ勢力が登場するわけではないということは指摘しておく。AIがより大きくより集権的な領地を確立するようになったため、よりよく分割されるようになり、国境の乱れが改善した。
モンゴル
- モンゴルにどんな変更を加えても、これまではひとつの点で失敗してきた。すなわち、十分に大きくなると軍を目標まで行軍させるのに時間がかかりすぎ、損耗によって部隊の多くと戦勝点を失ってしまっていた。
- 私たちはAIが戦争の目標に近いところで兵を召集するようにした。これはモンゴル軍にもっとも大きな影響があるが、公爵以上のすべての領主が行う。これはつまり、モンゴル軍がモンゴル東部から進軍する必要がなくなるということだ。これだけで彼らの征服の可能性は10倍以上に高まる。
- 新たな召集の仕方に加えてモンゴルの目標選定方法も改善し、モンゴル軍がチベットの山中に向かったり、強大なビザンツ帝国と直ちに衝突する可能性は低下した。
- また、帝国の後継ハン国も見直した。The Golden Horde・Ilkhanate・Chagataiなどは長持ちしなかったが、それには多くの理由があった。適切な領地を持っていない、正当な領地がない、お金がないなどだ。彼らは依然として一定の規則性で解体されるが、ときには存続し、繁栄することさえある。というのは、彼らが征服したものに応じて初期の資源・領地・正当な領土を割り当てることで、彼らの開始時の状況を改善したためだ。
- モンゴルが史実の征服範囲を超えることはあまりないが、以下ではある程度理想的な状況(長寿のハン)でどこまで拡大し得るのかに関する例だ。
初期状態の世界
数年後(Üがモンゴルに領地を持っていたため、チベットは取られた)
新たにバラバラになったペルシャが吸収されている
ビザンツを戦略的に回避し、東欧に向かうモンゴル
東欧を制覇した後、アラビアとファーティマ朝に向かった
最終的にハンガリーが激戦の末に脱落
ハンが死に、後継ハン国が出現。彼らがどれほど存続するかはわからない
- 完全なアップデートノートと詳細はもうすぐだ。お楽しみに!
質疑応答
Q:最後の文は1.7.0がDLCなしでもうすぐリリースという意味?
A:1.7.0が具体的にいつリリースされるかについては、現時点ではなにも言えない。
コメント
フランスがすぐ分裂しなくなったの助かる
AI君主の数が二割も減ってるな
ゲームが軽くなりそう
このAIがスペック通りに動くなら本当に凄いな
CK3がかなり面白くなる
うーむ、防衛側の戦争参加がより多くなるのか?
けっこう攻める側の十字軍が各個撃破の20年戦争レベルの長期戦争になることもあるぐらいでキリスト側も勝てはするけど面倒なんよな。
もちろん大国プレイヤーが介入すれば勝てるんだけどね。
これからどうなるんだろ