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パラド社が2021年年次報告書を発表

Paradox Interactive社

2022年4月8日、パラド社が2021年年次報告書を公表しました。パラド社は自社のゲームについて、「いわゆるプレミアムビジネスモデルに従って」いると考えているようです。


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概要

2022年4月8日、パラド社はウェブサイトで2021年年次報告書を公表しました。

パラド社の年次報告書(annual report)は当サイトで毎四半期取り上げている四半期レポート(財務情報)とは別に会社の詳しい状況を公開する書類という位置づけのようで、パラド社についての情報が多く掲載されています。四半期レポートには出ないビジネスモデルや経営戦略に関する情報も出ているので、本記事ではそうした内容について主にご紹介します。

CEOコメント

四半期レポートには毎回CEOコメントがついていますが、年次報告書にも四半期レポートのコメントとは別に新たなコメントが掲載されています。しかし内容は2021年第4四半期・通期レポートのコメントとほぼ同じで、業績が悪かったことや今後はストラテジー・マネジメントゲームの開発に経営資源を集中することなどに触れられています。

また、ツイッターでは何度か取り上げましたが、2021年にはパラド社内のハラスメント問題がメディアで報道され、パラド社は労働組合や外部の監査企業などと協力して対応したということがありました。これを受けてか、CEOコメントでも従業員の労働環境改善や能力開発・キャリア形成などの支援に取り組むということが言及されています。

パラド社のビジネスモデル

パラド社が自認しているビジネスモデルは以下のとおり。

  • パラド社は長寿命で没入感やコミュニティに大きな機会を提供する、知的にやりがいのあるゲームを制作している。主にストラテジーとマネジメントの分野のゲームで、いわゆるプレミアムビジネスモデルに従ってPCとコンソールにおいてリリースされている。ゲームは継続的に開発され、ダウンロードコンテンツを頻繁にリリースしてゲームの幅と深さを増し、プレイヤーベースと反復的な収益の増加に寄与している。
  • ゲームの重要な構成要素はゲームが基礎を置くブランドその他の無形資産だ。こうした無形資産は当社の従業員によって開発されるか、他社から取得され、これによってプレイヤーの期待を考慮した創作物の管理やゲーム開発能力がもたらされている。当社の無形資産によって、低リスクで新たなゲームを開発できる。というのは、確立され、かつ頻繁に関与があるプレイヤーベースが存在するためだ。さらに、こうした無形資産は新たな収益源やエンタテインメントの形態、新技術を模索する機会をもたらす。
  • ゲームとダウンロードコンテンツの開発は、主に社内の開発スタジオの従業員と社外のパートナースタジオが行っている。新たなゲームは数年間の開発を経て発売され、発売前にゲームのマーケティングとゲームが想定しているプレイヤーの活性化を行っている。
  • ゲームの発売後にはより短期間で発売できるダウンロードコンテンツを高頻度で開発し、コンテンツやゲームシステムに重要なフィードバックをもたらしてくれるプレイヤーと密接に対話することも多い。ゲームの販売は主にプラットフォームの所有者や販売パートナーを通じて行っている。
  • ゲーム開発、マーケティング、組織の拡大、スタジオや無形資産の取得は主に営業活動によるキャッシュフローで賄われている。これにより、当社は持続可能な方法で、良好なコントロールのもとに成長できる。
  • 長寿命で知的にやりがいのあるゲームの制作・販売のためには、さまざまな分野の創造的で熟練したスタッフが適切な前提条件のもとで協働することが必要だ。ゲーム開発は、健全性を保ち、個人が情熱を感じるコンテンツを開発・制作できる協力的な職場環境において、個人が高い主体性と責任感を持つことから恩恵を受ける創造的なプロセスだ。

パラドゲーについては「いわゆるプレミアムビジネスモデルに従って」いると書いているのが印象的で、このくだりは2020年年次報告書から出現しています。

以下は私の推測ですが、「プレミアムビジネスモデルに従っている」と記載しているのは販売価格を引き上げたCrusader Kings III(2020年9月2日発売)を念頭に置いたものと考えられ、今後もパラドゲーは高価格での販売を行っていくことを示唆しているものと思われます。次にリリース予定のパラドゲーはVictoria 3ですが、CK3と同程度以上の価格である可能性が高そうです。

経営戦略

  • 長期にわたってプレイヤーが帰ってきてくれるような新たな体験を提供するため、パラド社は今後の成長にとって重要と考えられる6つの主要な分野を優先する。
    1. 強力なコミュニティを持つ、活気のあるゲームの成長による反復的な収益
      • パラド社には長寿命のアクティブなゲームが複数ある。継続的に新コンテンツを発売し、ロイヤルティ(注:愛着)の高いプレイヤー層の拡大に重点を置いて反復的な収益を確保する。
    2. 長期的なオーガニック成長(注:買収などではなく自社の経営資源を使った成長)への投資
      • 長期的なオーガニック成長は当社のゲームのポートフォリオへの継続的な投資と開発によってもたらされる。パラド社はコアセグメントにおける自社開発ゲームプロジェクトに重点を置くことで、プロジェクトポートフォリオを継続的に拡大している。これは近いセグメントでヒットする可能性がある外部開発プロジェクトに対する小規模な投資と、機会があった際に無形資産や開発能力を取得することによって補完される。
      • パラド社は収益からゲーム開発への投資をこれまで増やしてきた。
    3. ゲームやプレイヤーに近い意思決定
      • パラド社の開発は創造性・速度・品質意識に依存している。ゲームとプレイヤーに近い、分権化された意思決定プロセスにより、当社は開発者のスキルや豊富なアイディアを活用し、求められるコンテンツを開発する。
    4. 確立されたニッチにおけるIPの所有
      • パラド社は参入障壁の高いセグメントにおけるストラテジー・マネジメントゲームのもっとも強力なフランチャイズを所有している。無形資産に対する完全な権利により、創造的な自由とその開発に関するコントロールを得ている。
    5. 頑健な財務
      • パラド社は高い利益率、強固な貸借対照表、強い営業キャッシュフローを保っている。これにより財務リスクを低減し、プロジェクトポートフォリオへの継続的な投資能力を確保し、魅力的なビジネスチャンスを活用できる。
    6. 適切な人材の確保と維持
      • パラド社は素晴らしいゲームや体験を創造し販売するために、熟練した創造的な従業員を確保し、維持する必要がある。市場ベースの福利厚生制度に加え、職場環境は協力・信頼・尊敬・情熱によって特徴付けられるものでなければならない。そのとき、パラド社の従業員は驚異的な成果をあげることができる。

経営戦略の内容はこれまでのCEOコメントなどで明かされていた内容に財務や人事を付け加えた程度で、特に目新しいものはありません。

ゲーム開発

この節で述べられているのはこれまでの繰り返しですが、Stellarisを開発しているパラド社開発スタジオ内のPDS Greenは現在、無料コンテンツの開発チーム(Stellaris開発日記でたびたび名前が出るCastodianチームと思われる)、拡張版やストーリーパックの開発チーム、新たな種族パックの開発チームの3チーム体制であると記載されています。開発日記では有料コンテンツを開発する本チームと無料アップデートや過去のコンテンツの手直しを行うCastodianチームの2チーム制のような書かれ方だったと思いますが、実際には種族パックの開発チームも存在しているようです。

市場分析

市場分析の節ではゲーム市場調査会社Newzooのレポートを引いて、世界のゲーム市場全体の状況について説明されています。なお、パラド社はこれまでアメリカとヨーロッパの市場において強いプレゼンスを持ってきたとのこと。

  • 世界のゲーム市場規模は、2021年には180.3十億ドルに達し、2024年には218.8十億ドルになる見込み。
  • 2021年時点では市場の半分強にあたる52%がモバイルプラットフォームであり、PCゲーム市場はゲーム市場全体の20%に過ぎず、さらに2020年と比較して0.8%減少。
    • これはブラウザーベースのゲームが18.2%という大幅な減少を見せたことによるもので、ダウンロードして遊ぶPCゲームについては0.9%増加。
  • コンソール市場は6.6%減少。
  • プレイヤー数は全世界でおよそ30億人であり、そのうちの55%がアジア太平洋地域。

また、販路としてのゲームプラットフォームについても分析されています。

  • 販路としてはValveのSteamが過去10年のPCゲーム市場で最大のプラットフォームだが、Epic Games Storeが売上の88%をパブリッシャーにもたらすことやFortniteによる大きなプレイヤーベースによってSteamに挑戦している。
  • サブスクリプションモデルも成長を続けると考えられ、その例がMicrosoft Game Passである。

記事で取り上げてはいませんが、この年次報告書にはCK3の開発チームであるPDS Blackのスタジオマネージャーのインタビューなども掲載されています。

パラド社が使用している調査では、PCゲームの世界における市場規模は180十億ドルの20%で36十億ドル、日本円にして4.5兆円ということになります。さらにその大部分が昨今流行っている「ELDEN RING」やFPSなどのアクションゲームと考えると、パラドゲーのようなシミュレーションゲームというのは世界で見てもおそらく1兆円に満たないごくごく限られた市場に過ぎないように思えてきます。なにか大きなヒット作が出てプレイヤー層が広がると個人的にはうれしいですが、手間も時間もかかるシミュレーションゲームは近年好まれる娯楽の傾向に逆行しているような印象もありますし、難しいのかもしれませんね……。

次年:2022年年次報告書

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コメント

  1. Victoria3が10ドル20ドル上がっても構わないからいいゲーム出してくれ(拡張版一個の値段差だし)
    これで10年近く商売するだろうしゲームの土台は少しでも良くして後の拡張版を支えて欲しい

  2. 値段高くていいからSteamでVictoria3の公式日本語対応して欲しい

    • 署名してパラドに提出したいくらい

    • Steamの言語比率で理由は知らないが日本語がかなり上がってる。
      この状況で日本語化されないなら、今後も公式翻訳は期待できないぐらい。

      英語 36.11%
      中国語 26.23%
      ロシア語 9.67%
      スペイン語 5.15%
      ブラジルポルトガル語 3.46%
      ドイツ語 3.12%
      フランス語 2.43%
      日本語 2.34%
      ポーランド語 1.81%
      韓国語 1.57%

  3. ストアページも日本語化されているし、多言語対応の一環でそのうち対応はされると思うよ
    日本人はPCでゲームする人が少ないけど、逆に言うとコアなファンが多いし、パラドのような企業にとっては割と狙い目だとは思う
    二の足踏んでるのはたぶん良質なローカライズチームがなかなか手に入らないからかな……

    • まあ一番はそこ(ローカライズチームの確保)だろうね
      「アプデしました、一週間で翻訳します」では不十分で、アプデ前に翻訳を完了しなければならない訳だから適当に翻訳会社捕まえるだけではどうにもならない

  4. Youtubeの月間開発報告は日本語字幕がつくようになったから期待してもいい…かも?

  5. パラドが金出さなくても勝手に有志が日本語化してくれるからなぁ…

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