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風邪から難病までさまざまな患者に対応する病院経営シミュレーション「Project Hospital」

その他

ただの風邪から複雑な難病、大ケガから感染症まで、さまざまな患者に対応して病院を経営していく「Project Hospital」の紹介記事。古いゲームですが今でも面白く遊べます。


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ゲームの概要

  • ジャンル:病院経営シミュレーション
  • リリース日:2018年10月31日
  • 開発元Oxymoron Games
  • Steamで購入可能(2,800円)
  • 日本語でのプレイ:可能
  • Wiki:なし
  • 記事執筆時点での最新バージョン:1.2.22856

さまざまな患者がやってくる病院を運営する病院経営シミュレーションです。かなり自由に病院を建設できるほか、無料DLCで医師として患者の診察を行うこともできます。いわゆるインディーゲームですが、2018年の発売直後は話題になっていたので、聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか。

当サイトでは今年の初めに本作の物語風プレイ動画を投稿していました(2話で打ち切り)が、肝心の紹介記事を書いていませんでした。既に開発は終了し、開発元のOxymoron Gamesは次の作品に取り掛かっているようですが、発売から5年たった今でも十分に面白いゲームです。

ゲームには既に存在する病院を運営して目標を達成するキャンペーンモードと、更地や病院の建物だけの状態から特に目標なしに好きなように病院を運営できるサンドボックスモードがありますが、病院をうまく経営していくという基本はどちらのモードでも変わりません。

なお、以下のゲーム画面はすべてゲームの日本語を修正するMod「Japanese Language Fixing」を導入した後のものです。ゲーム内の和訳を大幅に改善してくれるのでおすすめです。

ゲームの流れ

救急科(本作の救急科は日本で言う総合診療科や一般内科/外科のような、症状を問わずまず診てもらう科のような立ち位置)の外来にやってきた患者を診察しているシーン。外来患者はまず問診が行われます。

キャンペーン・サンドボックスいずれの場合も、やってきた患者を診察・治療して診療報酬を得るというのが基礎的なゲームの流れです。この流れを繰り返してキャンペーンの目標をクリアするなり、病院を大きくするなりといったことを行っていきます。

もちろん、患者の診察と治療は医師だけでなく検査設備や検査技師が必要になることが多いですし、治療に必要なら入院や手術を行う場合もあります。もちろん入院・手術にも病室や手術室など多くの設備が必要です。主にサンドボックスモードでは稼いだお金を設備投資や職員の雇用に使い、病院を大きくしていくことになるでしょう。

診断と治療

本作の病気の診断システムはよくできていて、ちょっとした推理ゲームのようなものとなっています。まず患者は問診でさまざまな症状を訴えます。上の患者カード中央の「現在の症状」に出ているのがそれです。この「現在の症状」に当てはまる疾患がゲーム側で自動的に絞り込まれ、上段にある「診断候補」は問診を終えた段階で早くも全身性エリテマトーデスと日光皮膚炎の2つに絞り込まれています。なお、本作では患者が抱えている疾患は必ずひとつだけという前提があります。

それぞれの疾患には可能性のある症状が設定されており、現在の症状が共通して現れるのはこの2疾患であるということがわかります。もちろんこの2つの疾患にはそれぞれ他の症状候補もあり、例えば日光皮膚炎には「紅斑」という症状候補がありますが、全身性エリテマトーデスにはありません。したがって、検査をして「紅斑」が見つかれば日光皮膚炎に診断を確定できます。「紅斑」の症状を見つけるには検査「身体診察」を行えばよいことも、上の「紅斑」のツールチップからわかります。

「身体診察」は特に検査設備がいらない検査なのでやってみたところ、運のいいことに「紅斑」を発見できました。これでこの患者の疾患は日光皮膚炎に確定です。診断候補に唯一残った日光皮膚炎をクリックして最終診断とします(なお、候補をひとつに絞り込む前に最終診断を下してしまうこともできます)。

現実の診察では性別・年齢・職業などの情報も考慮して診察が進むはずですが、本作では一応そういう情報は設定されているものの、診断には関係しません。あくまで症状からのみ疾患を推定します。

日光皮膚炎は治療「熱傷管理」を行うことで治療できます。治療は疾患の治療のほか、症状の緩和も行うことができます。症状の中には出血や呼吸不全など致命的なものもあり、そうした症状がある場合は疾患の治療と同時にそうした症状への対処も必要になります。

上の画像のように疾患が外傷性心停止など重篤なものの場合、治療には手術が必要になります。手術には高価な設備と熟練の医療スタッフが必要となりますが、そうした疾患は診療報酬も高いことがほとんどです。術後、患者は入院病棟に移され、どんなに重い病気でも2,3日で退院していきます。恐るべき回復力です……(もちろんゲーム上の都合でしょうが)。

病院の建設

プレハブ(ゲーム側であらかじめ用意された部屋)の薬局を建設したところ。壁をガラス張りにしたり、必要以上に薬棚を置く意味はゲーム的にはありませんが、見た目がよくなります。

本作の目玉として、自由な病院建設が可能という点が挙げられます。ゲームのマップは斜めからの鳥瞰図で表示され、小さなマス目に区切られています。ここに床のタイル、壁、什器、治療設備、装飾などを設置することで、病院の部屋ができていきます。非常に多くの設備や装飾が用意されており相当程度まで病院建設に凝れる一方で、一から自分で診察室や待合室などの部屋を作るのは手間でもあります。しかし、プレハブという部屋の機能ごとにあらかじめ必要な設備を配置してくれているプリセットが用意されているので、初心者やめんどくさがりでも安心です。

色がついているのは救急科に属する部屋や通路。それ以外の濃い灰色は他部署の管轄です。左下に待合室と診察室、右下に急患を受け入れる外傷センター、中央に医師待機室・ナースステーションと観察室(救急科の病室)を設定しています。

なお、ただ部屋を建設しただけでは機能せず、必ず部屋に役割を設定してやる必要があります。本作の病院は救急科・放射線科・一般外科・医事課など複数の部署に分かれており、その部署ごとにマップタイルをここは診察室、ここは通路、ここはトイレ、ここは病室……と割り当てていきます。これも手間のかかる作業ですが、プレハブを使えばこれも自動的に設定してくれます。

病院の状況

自分の病院がどれくらいうまく運営できているかは、名声と収支で確認できます。名声は患者と職員の満足度から計算され、高いと患者や報酬額が増えます。本作では消耗品費や経費はなく、経常的な支出項目となるのは主に職員の給料と建設費です。職員の給料はレベルが上がると高くなりますが、はじめから高レベルの職員を雇うと高くつき、低レベルで雇ってレベルを上げたほうが同レベルでも給料が安くなります。拡大を急ぐわけではない、あるいは利益が少ないという場合は、低レベルの職員を雇用して育てたほうがいいでしょう。

いいところと悪いところ

悪い点

悪い点としては、完成度があまり高くない点が挙げられます。プレイしていて「これはバグなのではないか?」という動作(例えば本来ものを置けない場所に設備や装飾を置けてしまう場合があるなど)に出会うことが多く、ゲームの挙動が設計どおりの動作なのかバグなのかがよくわからなくなります。また、感染症科を追加するDLC「Department of Infectious Diseases」は作りが本当にお粗末でがっかりされられます。例えば、高い伝染性の感染症患者のベッドのあるところが隔離病室に設定されて最小限の設備さえあれば、空調や空気ドアどころか病室の壁すらなくても院内感染が広がらない一方、隔離病室以外では汚染区域に設定して空調や空気ドアがあったとしても院内感染が広がるなどです。

また、説明があまりにも不足しているという点も挙げられるでしょう。例えば、病室内に本棚と椅子を置いておくと患者が本を読んで満足度が上がるというようなことは、ゲーム中では説明されません。その設備がどんな効果があるのかツールチップの説明を読んでもわからないことが多いですし、そもそも本当に効果があるのか疑わしいこともあります。

よい点

その一方で、本作はキャラクターが役割に応じて自律的に動き、たまにプレイヤーが手を加えるだけで病院がなんとなくうまく回るようになっており、そうした仕組み作りが楽しいというのが本作の大きな楽しみといえるでしょう。

また、病院建設の自由度の高さも長所です。壁・床・机・椅子などの色や、観葉植物、ポスター、デカールなど、凝り始めるとキリがないほどさまざまな点をいじり回せます。自分の望む病院の中でキャラクターたちがちょこまか動くのを見るのも一興です。

相当単純化されているとはいえ診断と治療のシステムもそれらしく、無料DLCでドクターモードという特定の医師の診察・治療を操作できるモードが追加されますが、意外な症状から特定の疾患に至ったりなど、遊んでいて楽しいものとなっています。ただ、病院にない診療科の病気は出ないので、診療科が少ないといつも同じ病気ばかり診察することになります。

その他

本記事では本作のことを「病院経営シミュレーション」と書いていますが、経営シミュレーションとしては難しくはなく、上に書いたようにレベルの低い職員を雇って育てていけばお金に困ることはそうそうありません。患者も保険会社と契約してさえいれば一定数は必ず来るので、いかに客を集めるかというような経営上の難しさもありません。サンドボックスであれば気楽に好きなように病院を運営できます。


完成度が怪しいところはあるものの、全体としては相当面白いゲームだろうと思います。私はサンドボックスモードの大きなマップで土地いっぱいに病院を建てて遊んでいますが、1日の患者数は百数十人で頭打ちなので、中庭を作ったり吹き抜けを作ったりというように、無駄な(ゲーム的に寄与しない)空間をたくさんとっても問題はなさそうです。記事執筆時点で開催中の2023年Steamウィンターセールでもセール対象ですし、年末年始に理想の病院作りに勤しむのもいいのではないでしょうか。

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